再生した農地を就農者へ、返却も可能に
「外から来た人がこの地域の農業を維持してくれればいいというスタンスでやっている。産地を守るのが我々の目的だ」。信州うえだファームの常務、船田寿夫(ふなだ・ひさお)さんはそう話す。同社の経営方針を示すこの言葉が持つ意味はことのほか重い。自社の利益を優先していないのだ。
信州うえだファームは、信州うえだ農業協同組合(JA信州うえだ、上田市)が2000年に設立した。JA信州うえだは、上田市や長野県東御(とうみ)市などをエリアにしている農協だ。その子会社である信州うえだファームは荒れた農地を再生したり、放棄地の発生を防いだりするのを事業の柱にしている。
そうやって保全した農地を地主から借りて、農作物をつくって農協に出荷する。さらに就農を希望してほかの地域から来た人の研修の場としても活用している。研修期間は2年。スタッフがさまざまな作物の栽培技術を教えてくれるだけでなく、同社の生産の一端を担っているという理由で一定の給料も出す。
研修が終わると、周辺の地域で就農する。ここで大きいのは、信州うえだファームが再生した農地を新規就農者が自らの農場として活用できる点だ。その際、同社が農地の再生に要した費用の一部を支払う必要はある。ただ来たばかりの土地で自ら田畑を探したり、荒れ地を開墾したりする労力と比べれば、農地を円滑に借りることができるメリットは間違いなく大きい。
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