3%の支援金を受け取るより大事な対策
横田農場は栽培面積が164ヘクタールと、日本の稲作の中で有数のスケールを誇る。しかも水田の集約はなお進行中。田植え機とコンバインが1台ずつで、大面積をこなす効率経営でも知られている。さまざまなコメの品種を育てることで、作業が一時期に集中するのを防いでいるためだ。
筆者が最初に横田さんに取材したのは2014年。横田農場はこの間、単純に規模を大きくしてきたのではなく、経営の質を高めるために毎年さまざまな工夫を重ねてきた。筆者はその話を聞くたび、危機的状況にあると言われることの多い稲作の未来に、多くの可能性を感じることができた。
2021年も、収穫が終わったタイミングで農場を訪ねた。テーマは米価の下落だ。今回の落ち込みは、努力で対応できる範囲を超えているのではないだろうか。横田さんはこの問いに「そんなことはないと思う」と答えた。

横田修一さん。天皇杯を受賞した翌年の2014年に撮影
大丈夫と考える根拠について説明に入る前に、横田さんは一つのエピソードを紹介してくれた。ある自治体がコメ農家を守るため、10アール当たり3000円の支援を決めた。この話を聞いたとき、次のように思ったという。
「支援を素晴らしいとほめる声もあった。でも10アール当たりの売り上げが10万円として、3000円ならたった3%。もらえるにこしたことはないだろうが、それより3%コストを減らしたほうがいいのではないだろうか」
3000円は今回の下落を理由にした支援金であり、ずっと支給され続けるものではない。これに対しコスト削減による経営体力の向上は、効果が翌年以降も続く。もし3%経費を減らせないほど効率化が限界に達しているなら話は別だが、現実はそうではない。これが横田さんの訴えたい点だ。

広大な横田農場の田んぼ
農水省の統計より3割少ない生産コスト
どうやってコストを削減しているのか。横田農場の2020年産のデータを農林水産省の統計と比べながら、その点について説明してくれた。