設備投資資金の4分の3を公的支援
まず国の予算がどうやって決まるのかを整理しておこう。
各省庁は次年度の予算の策定に向け、毎年8月末までをメドにその原案を財務省に提示する。これを概算要求という。その後、与党の意見も踏まえながら各省庁と財務省が調整し、年末までに政府の予算案を決める。
政府案は国会に提出され、与野党の間でその是非を論議する。2022年度予算は、1月17日に招集された通常国会で話し合う。政策にはさまざまなタイプがあるが、財源を必要とするものは原則として国会での審議が必要になる。
制度の内容は、以上のプロセスの中で修正されることもある。新規就農者が農業機械を購入したり、ハウスを建てたりする際に必要な資金を支援するための制度も、農水省の概算要求と年末の政府案との間ですでに変わった。決定的な違いは、就農者の一部自己負担が前提になったことだ。
もともと農水省が考えていた案は、日本政策金融公庫が設備資金を融資し、国と都道府県が半分ずつ肩代わりするのが制度の柱だった。融資額は最大で1000万円で、返済期間は10年。10年たたないうちに離農すれば、その時点で公的支援は停止になり、残りは就農者が返済義務を負う。
これに対し、農水省と財務省の調整を経て決まった政府案は国の支援を2分の1、都道府県の支援を4分の1とし、残りは就農者の自己負担にすることにした。支援の対象にする融資額は農水省案通り、最大で1000万円なので、制度をフルに活用した場合、就農者の負担は250万円になる。
就農者が設備資金を借りる先は日本政策金融公庫だけでなく、民間の金融機関にも広げる。返済期間は10年に限定せず、自由に設定できる。国と都道府県が4分の3を一括で肩代わりし、残りを就農者が返済期間に応じて返す。一定の期間内に離農すれば、公的資金で肩代わりした分を返すルールも設ける。
自治体の負担への難色で制度が見直しに、他の政策にも波及
農水省の概算要求と、政府案との間には二つの大きな違いがある。結論から言えば、いずれもポジティブな見直しだと思う。
一つは、民間金融機関の融資も支援対象にした点だ。金融機関はたんにお金を借りる先ではない。資金の使い道について助言を受けたり、販路の開拓について相談したりする相手でもある。公的な支援をきっかけに民間金融機関との接点をつくれる意義は大きい。