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農産物の「保管」に新風。長期保管と品質向上をも実現する冷蔵技術とは

窪田 新之助

ライター:

農産物の「保管」に新風。長期保管と品質向上をも実現する冷蔵技術とは

収穫した直後から鮮度が失われていく野菜や果物。保管の技術によって、それを大きく食い止めることに成功した物流業者がある。長期の保管を可能にしたその技術は、食の流通に何をもたらすのか。青果物流を専門にする株式会社福岡ソノリク(佐賀県鳥栖市)を訪ねた。

長期保管を可能にする「特許冷蔵」と「CA冷蔵」

エチレンガスを強制的に排出する換気扇

「これだけ時間が経っても、色つやがあまり変わっていないですよね」。福岡ソノリク取締役の園田裕輔(そのだ・ゆうすけ)さんが見せてくれたのは、シャインマスカットの外観の写真。収穫直後の9月に入庫した時点と、翌年の1月時点では、写真で見る限りでは大差がない。実際、売り物としての鮮度を保ったまま保管しておける期間は4カ月に及んだ。

他の品目では、ゴボウで8カ月、デコポンで7カ月、愛宕(あたご)梨で3カ月まで延ばせたという。これだけ長期間にわたって鮮度を保持できている背景には二つの保管技術がある。一つは「特許冷蔵」、もう一つは「CA冷蔵」だ。

前者は、青果物が分泌して自らの熟成や腐敗を促進する植物ホルモンのエチレンガスを、換気によって庫内から強制的に排出する。同時に加湿器で野菜や果物が乾燥するのを防ぐ。福岡ソノリクが独自に開発し、特許登録した技術だ。

後者では庫内の酸素や窒素、二酸化炭素の濃度を調整することで、冷蔵している野菜や果物の呼吸を最小限に抑えて鮮度を維持する。リンゴでは一般的に活用されている技術だが、物流業者でこの技術を持った設備を運営しているのは同社だけだという。

どちらの保管技術も鮮度保持という目的は同じであるものの、農作物によって適性が異なる。このため同社はそれぞれ専用の倉庫を設けて、別々に活用している。

出荷の調整で端境期をなくす

CA冷蔵中のジャガイモ

福岡ソノリクがこれらの保管技術を活用する目的として顧客に提案することは主に二つある。まずは出荷の調整だ。保管によって出荷できる期間を延ばすことで、国産の端境期を埋め、産地リレーによる周年供給の体制を構築することに寄与できる。あるいは大雨や台風の影響が予想される場合には、直前に貯蔵の限界まで収穫して長期保管することで、産地や農家にとっての損害を抑えることができる。

もう一つは品質の向上だ。一部の品目では長期保管によって糖度が上がるなどの効果が出ている。具体例を紹介しよう。
同社常務の酒井謙一(さかい・けんいち)さんは、鹿児島県種子島の特産のサツマイモ「安納芋」を特許冷蔵した効果を次のように語る。「農家が安納芋を収穫するのは8~11月。従来の冷蔵庫で保管しても、腐らずにもたせることができるのは1月ごろまででした。それが特許冷蔵で保管することで1年まで延びました。これにより通年での供給が可能になったんです。さらに、糖度も上がりました」

CA冷蔵では北海道産のタマネギとジャガイモを貯蔵している。保管期間はそれぞれ10カ月と9カ月に及ぶ。タマネギでは発芽抑制、ジャガイモでは糖度の向上という副次的な効果を得た。委託元であるホクレンが、福岡ソノリクで長期保管した分を独自のブランドとして九州や中四国、関西、東海地方で販売している。

福岡ソノリクの園田さん(左)と酒井さん

福岡ソノリクは、特許冷蔵とCA冷蔵の機能を備えた物流拠点を、本社がある鳥栖のほか、鹿児島県鹿児島市と岡山県倉敷市、兵庫県神戸市に持っている。さらに関東、東北地方にも同様の機能を有した物流拠点を展開する計画。
園田さんは関東への進出についてこう説明する。「北海道や九州などの産地で収穫した青果物を消費地で貯蔵することで、注文を受けてから輸送を終えるまでにかかる時間を大幅に短くできる。もちろんそれができるのは冷蔵技術によって長期保管できるから」

ドライバー不足が深刻化して、2024年からは残業規制が始まる物流業界。長期保管できる機能を備えた物流拠点への期待はこれからますます高まるに違いない。

鮮度保持期間の安定と拡大へ

一連の技術が抱える課題は、品目ごとに鮮度を保持できる期間の安定と拡大だ。現状では、農作物の内部状態はもちろんのこと、収穫した畑や栽培期間中の天候などによっても保管期間が揺れ動く。

福岡ソノリクは今後、農作物の外観や重量、水分、熟度、糖度などのデータを取りながら、品目ごとに最適な冷蔵技術を開発する方針。同時に、エチレンガスを排出する機能を持ったトラックや菌やカビの繁殖を防ぐパッケージをつくり、輸送中も鮮度や品質を損なわないようにしていく。

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