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植物工場と組んだ野菜農家、連携で解消する営農の悩みとは

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

植物工場と組んだ野菜農家、連携で解消する営農の悩みとは

発光ダイオード(LED)などで野菜を育てる植物工場とふつうの農家の経営は別物で、ときに競合するものと思われてきた。だが両者が接点を持ち、連携する方法もある。植物工場ベンチャーのプランツラボラトリー(東京都中央区)と組んだ宮城県名取市の野菜農家、西野拓(にしの・たく)さんを取材した。

個人向けからスーパー向けに販売を転換

西野さんは現在、39歳。機械メーカーの営業の仕事をやめ、2016年に農業を始めた。「一生懸命やるほど仕事が増えることにストレスを感じた」(西野さん)ためだ。雇用されずに自分で何かしたいという思いもあった。

脱サラ後の仕事に農業を選んだのは、たまたま近くの農場で農作業を体験してみて、「サラリーマンの仕事と違ってリアル」と感じたからだ。農場での研修と家庭菜園での野菜づくりを2年ほど続けた後、就農へと踏み切った。

栽培面積は約1ヘクタール。農薬や化学肥料を使わず、年間20~25種類の野菜を育てている。とくにこだわっているのが土づくり。土壌の状態を分析し、購入した有機肥料をブレンドしながら地力の向上に努めている。

西野さんが育てたコマツナ

はじめはもっと多くの種類の野菜を育て、個人向けに野菜セットを販売していた。新規就農の有機農家でよくあるパターンだ。だが栽培の段取りに失敗すると野菜がうまく育たなかったり、収穫のタイミングを逃してしまったりしがちな現実を知り、営農のあり方を見直すべきだと考えるようになった。

野菜の品質を評価し、仕入れ価格に反映させてくれるスーパーと出会ったことが転機になった。個人向けの販売を縮小する方向へとカジを切ったのだ。スーパーのほうが同じ野菜をたくさん買ってくれるので、野菜の種類を絞り込み、栽培のミスを減らして効率を高めることができるからだ。

西野さんが目標にしているのは、「食べてくれた人がおいしいと感じ、健康になる野菜をつくる」ことだ。それは必ずしも、個人の顧客と「顔の見える関係」でつながることではない。優先したい目標がはっきりしているからこそ、個人客から小売店へと迷わずに売り先を切り替えることができた。

野菜の品質を向上させ続けるうえで大切なのが、きちんと収益を確保して営農の持続可能性を高めることだ。そのことを強く意識する西野さんが、経営を安定させるためにつかんだチャンスがある。植物工場との連携だ。

目標は食べる人が健康になる野菜づくり

植物工場からあるものを提供してもらい、栽培を効率化

ここで、プランツラボラトリーの植物工場について説明しておこう。

これまで植物工場の多くは大きくて頑丈な建物の中で、外の気温の変化の影響を排除し、「1日のレタスの出荷量が1万株」などの大量生産で効率を高めることを目指してきた。いかにも「工場」という印象の栽培施設だ。

これに対し、プランツラボラトリー代表の湯川敦之(ゆかわ・あつゆき)さんが追求したのはシンプルな設備だ。断熱材ではなく、アルミシートを貼った薄い遮熱パネルを壁に使うなど、プレハブのような簡素な施設での栽培を実現。設備投資を抑えることで、収益を確保することを可能にした。

東北電力とプランツラボラトリーが仙台港の近くに設置した植物工場

他の植物工場と異なるこの仕組みを、東北電力が評価した。2022年2月には仙台港の近くに共同で工場を設置。食品スーパーのヨークベニマルの宮城県の店舗向けに、4月からグリーンリーフ(レタス)の出荷を始めた。両者のこの取り組みが、西野さんがプランツラボラトリーと連携することにつながった。

きっかけは西野さんが農場で研修していたころにさかのぼる。そこで知り合ったのが、東北電力に勤める藤川裕司(ふじかわ・ゆうじ)さんだ。趣味で農作業を楽しんでいた藤川さんはその後、植物工場の担当者になった。

3者のこうしたつながりの中から、西野さんと植物工場が連携するというアイデアが浮上した。

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