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アライグマにはメロンパン? 面白いほど捕れた、アライグマ捕獲の体験談

深江 園子

ライター:

アライグマにはメロンパン? 面白いほど捕れた、アライグマ捕獲の体験談

ここ10年ほどで全国に広がった特定外来生物アライグマの食害。特に北海道ではその捕獲数や目撃数がここ数年で急激に増加しています。札幌から車で90分ほどの海沿いの町、厚真(あつま)町のハスカップ農家、山口農園も被害に悩まされていました。そこで2020年に、仕掛けにひと工夫すると3カ月で32頭、去年は3カ月で10頭の捕獲に成功! その体験談を聞きました。

アライグマは北海道のほぼ全域に生息する

2020年度の北海道内捕獲数は過去最高の2万5806頭(画像提供:北海道)

北海道でのアライグマによる被害作物はスイートコーン、トマト、スイカ、メロン、イチゴ、水稲など多くの作物に及びます。北海道庁の調べによれば、2020年度のアライグマによる農業被害額は1億4200万円。これは2015年度の約1.6倍で、ここ数年増え続けています。対策として、たとえば高さ80センチ・電線3段程度の電気柵でも作物に近づくことは防げます。しかしアライグマの繁殖力は強く、春の出産1回で4頭ほど生まれるため頭数も被害も増加しているのが現状です。

そんな中、厚真町でハスカップ農家を経営する山口善紀(やまぐち・よしのり)さんは、ある方法でアライグマの捕獲を始め、被害を防いでいるとのこと。その方法とはいったいどんなものなのでしょうか?

■山口善紀さんプロフィール

厚真町にある「ハスカップファーム山口農園」の5代目。会社勤務を経て2005年に農園を継ぎ、ハスカップ主体に転換。母が選抜増殖してきた2品種を2009年に登録し、産地化を願って町内に苗木を頒布するなど、「日本一のハスカップ産地」作りに尽力。観光農園、加工品の製造販売、カフェ運営を行い、ハスカップの自然栽培にも挑戦中。2018年北海道胆振(いぶり)東部地震で被災した畑を復興しながら、一貫して厚真町を「ハスカップのまち」として発信し続けている。

山口農園のカフェ「あつま ゆのみ茶屋」(札幌市)で人気の、ハスカップサンデーとハスカップスムージー。「ゆのみ」はハスカップの地方名

箱わなの効果がアップ! 「メロンパン固定法」

山口さんが園内で捕らえたアライグマ。手が器用で爪が鋭く力も強いので捕獲後も細心の注意が必要だ

──山口さんの畑でアライグマの被害が出始めたのは、いつからですか。

6年ほど前からです。対策として電気柵を設置し、被害はある程度まで減りました。でも、個体数が減らないことには根本的解決にならないので、駆除のためにワイヤー製の箱わなを使い始めました。これが、年に2~3頭しか捕まえられなかったんです。

──他の動物がかかってしまうことはないのですか?

タヌキ、キツネ、ネコがごくまれにかかります。今まで数回しかないのですが、野生動物の場合は山へ連れて行って放しています。

──餌は何を使っていましたか?

人によっておすすめの餌は違うようですし、同じ餌でだんだんかからなくなるという話も耳にしますが、うちの例として聞いてください。まず、箱わなの餌でよく聞くゆでトウモロコシを試すと、うちではキツネなど他の動物がかかりやすかった。同じくよく聞くキャラメル味のコーンスナックやマシュマロを試したら、匂いにひかれて寄ってきたけれど、雨や湿気で溶けてしまうのでちょっと面倒。それに、アライグマは餌をじかに仕掛けても、うまく取って逃げるんですよ。

──アライグマはそんなことができるんですね!?

尾が長いので、箱わなに入っても尾のせいで扉が閉まり切らない。それで、箱の中の餌を食べ終わったら器用に後ずさりして逃げていたんです。力も強く、中型の箱わなの止め金部分をこじ開けて逃げられたこともあります。今は入り口が30×30センチ、長さ80センチの、より頑丈な大型のわなを使っています。

──餌と、その仕掛け方にコツがあるんですね。

はい。ちなみに、僕は3個100円くらいの小さめのメロンパンを冷凍庫に買い置きして使います(笑)。あとは動画の手順でポリ袋に入れて口を結び、金属棒で突き刺して固定するのですが、十分長さのある棒を使って地面に深く突き刺さないと、外から手を入れて取られてしまいます。

袋に入れたメロンパンを鉄の棒で地面にしっかり固定!

──仕掛けるのに適した場所はありますか?

かかりやすいのはアライグマが畑へ行く通り道。ふんをためる場所が見つけられれば、その近くもかかりやすいです。注意したいのは、箱わなの周り50センチ以内くらいには防草シートやロープなどを置かないこと。彼らは手で引き寄せる力が驚くほど強くて、置いてあったマルチングシートをわなの中から引き寄せて、箱の中にぐるぐるに巻き取ったことがありました。次にわなを使う時にとても厄介だし、感染症の危険性もあって野生動物が触れたものには触らない方がいいので、とにかく引き込まれそうなものは近くに置かないことですね。

※ 捕獲の方法の詳細は、こちらの動画も参考にしてください。

動物の被害が出てからではもう遅い

「1年目32頭、2年目10頭、今年は2カ月で4頭。この方法を続けて食害がほぼなくなりました」と山口さん

──防除にはタイミングが肝心とのことですが。

気をつけたいのは、出産後のタイミングを逃さないことですね。子連れで行動する時期、ここでは5月なんですが、同じ付近に複数のわなを仕掛けると親子両方かかることも結構ありました。

──駆除に成功した後、何か気づいたことがあれば教えてください。

これは新規就農したイチゴ農家さんの例ですが、研修用の農場でイチゴを相当やられてしまった経験から、独立直後に畑の周りに電気柵を張っています。2年間被害がないそうなので、やはり(アライグマが)作物の味を覚える前の対策が有効だとよくわかりました。
あとは捕獲後の取り扱いにはくれぐれも注意することですね。爪が鋭くて手先がとても器用なので、手を伸ばせる距離に近づかないこと。土日など、すぐ役場に持ち込めない時は逃げられないように、人間に接触する危険のない日陰に置いておいてください。

ハスカップファーム山口農園の観光農園(画像提供:山口善紀)

北海道だけでなく日本各地で農家を困らせているアライグマ。最近ではその生息域を住宅街まで広げ、さまざまな被害をもたらしています。アライグマ自体に罪はないとはいえ、農作物を守るために、対策は必須です。
なお、害獣の駆除は法律の定めに従って行う必要があります。駆除や捕獲に関しては地域の自治体などで情報を手に入れ、確認をして行いましょう。

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