握らないおにぎり「おにぎらず」

「お米屋さんのサンドイッチ」で売っているサンドイッチ(画像提供:福糧)
福糧はこれまで、本社がある1100坪(約3600平方メートル)ほどの敷地でおにぎりの食べ比べができるカフェ「FUKU CAFE(フクカフェ)」と、米穀店「ふく福米(ふくふくまい)」を運営。カフェで提供される4つの品種のおにぎりを味わった客が、気に入った品種のコメを米穀店で購入するという好循環を生み出してきた。さらに、5月に開いた新店舗「お米屋さんのサンドイッチ」は、両店舗と併設させて集客増を図ろうとしている。
「お米屋さんのサンドイッチ」で売っているサンドイッチは、一般に「おにぎらず」と呼ばれる商品。大きめののりにごはんを敷き詰め、肉や揚げ物、野菜などの具材を挟み込む、沖縄ではよく見かける握らないおにぎりだ。
楢原さんは「数年前から子どもをかかえた主婦の間で人気になっていた」と話す。このため、取り扱うコンビニエンスストアや専門店が各地で出てきた。
楢原さんによると、「お米屋さんのサンドイッチ」がそれら既存の店と異なるのは、作り置きでないこと。「ハム野菜サンド」「えびアボカドサンド」など基本となる10種類のメニューをそろえながら、具材の野菜やソースの種類や量については、その場で客の好みを聞いて調理する。また、コメを扱う業者らしく、具材を挟み込むごはんには、白米と雑穀米の2種類を用意している。

客の好みを聞きながら、その場で調理する
人気カフェの拡張を諦めた理由
お米の食べ比べができるFUKU CAFEは、入店まで30分や1時間待ちになるほど盛況だったが、なぜ「お米屋さんのサンドイッチ」も開くに至ったのか。理由は、カフェの入店までの待ち時間が長く、これにより多くの客を逃がしてしまっていたからだ。その人数について、楢原さんは「土日や祝日だと毎日100人くらい」と推計する。
このため、当初はFUKU CAFEを拡張することを検討した。ただ、すぐに無理だと思ってあきらめた。それは次のような理由からだ。
FUKU CAFEでは、提供する定食に必ず4つの品種のおにぎりを付けている。しかも定食を頼めば、時間制限がなく、いくらでもおかわりができるようにしている。理由は、食べ比べをしながら、コメについて好きなだけ語り合ってもらいたいから。それだけに一般の飲食店と比べて炊飯する回数が多く、それに手間と時間が取られる。「うちのスタイルをまねようとした飲食店もありましたが、すぐに撤退しました。それくらい非効率なんです」(楢原さん)
景観の良さもあって、1日の来客数は100人超え

田園地帯が見渡せる2階のイートインスペース(画像提供:福糧)
そうして始めた「お米屋さんのサンドイッチ」では、テイクアウトにも対応することで、時間がないなかでも気軽にコメの料理を食べてもらえるようにした。
同店をオープンさせたのは5月半ば。筆者が取材で訪れたのはそれから1週間近くが経ったころだったが、毎日の来客数は当初期待していた100人を超えているという。
店の魅力の一つに景観の良さがある。出来たてを食べられる2階のイートインスペースでは、窓枠を大きく取っており、その向こうには田んぼが広がっている。辺りは二毛作地帯で、取材時には麦が実っていた。
店内の座席はすべて窓の方を向いている。しかも座席の前後で微妙な高低差をつくることで、後ろに座っていても前の客の頭が邪魔することなく、景色を楽しめるようになっている。楢原さんは「田んぼの向こうにJRの線路が見えるでしょ。あそこを新幹線とSL人吉が並走することがあるので、ぜひ見に来てほしい」と語る。
ほかの地域でも「ライスビレッジ」を計画
福糧は、「FUKU CAFE」「ふく福米」「お米屋さんのサンドイッチ」を運営する1100坪ほどの一画を「TOSU RICE VILLAGE(とすライスビレッジ)」と呼んでいる。来客数は年々増加しており、2021年には6万5000人にまで伸びた。2022年に「お米屋さんのサンドイッチ」が加わったことで、楢原さんは「もう1万人は増えると思う」と期待する。
いま計画しているのは、地方都市の近くに第2、第3の「ライスビレッジ」を展開すること。さらに、「FUKU CAFE」と「お米屋さんのサンドイッチ」を単独で出店することも検討している。
コロナ禍でコメが売れないという話をよく聞くが、それは言い訳なのかもしれない。楢原さんは「売り方次第でコメにはまだまだ可能性がある」と話している。