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これからの農業は「生産・加工・販売」の一体化がカギ。現場から見る、持続的発展への取り組み

これからの農業は「生産・加工・販売」の一体化がカギ。現場から見る、持続的発展への取り組み

秋田県大潟村の株式会社みらい共創ファーム秋田はこのほど、総合商社の双日株式会社、農研機構と連携し、東北地方をタマネギの新たな産地に育てる取り組みを発表した。担い手が減り続ける農業を再生し、発展させ、持続していくことを目指す同ファームの歩みについて、農業の産業としての持続性に関する調査・研究を行う株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)の山本大介(やまもと・だいすけ)さんが、代表の涌井徹(わくい・とおる)さんに話を聞いた。

涌井徹さんプロフィール

1948年、新潟県十日町市に生まれる。21歳で大潟村に入植。大潟村あきたこまち生産者協会を創立し、無洗米や栄養機能食品なども開発する。2016年には株式会社三井住友銀行(以下、SMBC)などと株式会社みらい共創ファーム秋田を設立し、代表に着任。現在に至る。

山本大介さんプロフィール

コンサルタントとして事業戦略・組織戦略策定、新規事業開発、地域金融機関支援に従事。農業分野では官民のプロジェクト実務に15年以上携わり、新技術や新規格の産地導入に向けた経済性評価や関係者の取り組み課題について研究してきた。

今までの農業の延長線上では農業は発展できない

涌井さん:まず対談に際して、私が農業の一番の課題として感じていることを述べたいと思います。それは農業人口の減少と高齢化により、農業は国民食料の安定供給が出来なくなっているところです。

「では、どうすれば儲かる農業ができるのか」、「持続可能な農業にするには」というテーマは常に出てきますが、非常に長い間、農業はこうした人手不足の状況に置かれており、農業者の力だけでは、解決は難しい状況です。

そこで2016年、SMBCなどと共同でみらい共創ファーム秋田を設立しました。効率的で収益性の高い農業経営モデルの構築を目指し、産業としての農業の持続と成長産業化に向けて日々取り組んでいるところです。

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オンラインで対談した涌井さん(左)と山本さん

山本さん:持続性という部分では、農業は他産業と比べても特に大きな課題があるという話をよく耳にします。省力化や生産効率の向上などにより、農業を産業としてどう生まれ変わらせるかに注目が集まりますが、涌井さんが持続可能な産業に向けて最も重要だと考えることは何でしょうか。

涌井さん:農業というのは日本の産業でも唯一、販売価格が決まっていない中で生産する産業です。車を作る産業、お菓子を作る産業などはすべて、価格を決めてから生産を開始し、販売価格に応じて生産コストを調整していきます。一方、農業の場合はいくらで売れるかわからない状態でコストをかけて生産するわけです。、再生産できる農業システムの構築には、価格を決めてから生産に入るという農業システムを構築することが、私の経験上一番重要だと考えています。

「生産・加工・販売」を一貫して行うこと。農業が産業として成り立つようにするには、商品開発から販売までの仕組みづくりがカギを握ります。これから農業をやっていくには、こうした加工、販売をセットにして生産リスクをカバーする仕組みが必要。今までの延長線上での「生産・加工・販売」が分離された農業では、日本の農業は間違いなく崩壊するのではないかと考えております。

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生産コストを補う仕組み作りが必要

山本さん:「生産・加工・販売」がセットの取り組みをうまく回して行くための工夫が気になるところです。昨今の技術革新などによって「生産」の効率は上がっているように見られますが、加工や販売の面でカギとなることは何でしょう。

涌井さん:まさに生産という面では技術革新によってどんどん効率化が進んできました。一方で、日本の農村にはまだまだ古い慣習があり、経営学がベースの加工や販売といった考え方を農業に取り入れるには時間がかかるかもしれません。そこで、民間企業との協業が必要になります。

先日、双日さん、農研機構さんと連携して東北のタマネギ産地化に向けたプラットフォームを設立しましたが、すでにあるタマネギを加工し販売するのではなく、今までなかったタマネギ産地を作ることから始める取り組みで、生産のリスクを加工、販売で補う構造です。これによって、価格も自分たちで決められる、産業としての農業が構築できると考えております

作る人、加工する人、売る人が一緒になってやっていく。持続的な生産を可能にするためには、加工と販売で収入が保証できる体制を作ることが重要であると言えます。

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タマネギ生育圃場(ほじょう)

産地のリーダーが見る、農業の現在地

山本さん:こうした「生産・加工・販売」を一体化した産業化の取り組みに向けて、業界の現在地は涌井さんの目にどう映っていますか?

涌井さん:加工・販売をしていくことについては、補助金を活用することによって6次産業化を始めやすい環境になりました。

しかし、これには何億ものお金がかかりますから、今後は補助金で事業を起こす農家側にも経営的なセンスが必要となるでしょう。また、日本総研さんのように農業のことも企業のこともわかる人が間に入りながら、生産する人、加工する人、販売する人が一体となった組織を作ることが必要だと感じています。

山本さん:今、まさにそのことについては農林水産省の一部局でも問題意識が高まっています。生産者の新しい取り組みに資金を融通していくことを目的に昨年、同省と「農林水産業・食品産業に関するESG地域金融実践ガイダンス」を作成しましたが、収益が判断基準になることと、農林水産分野への理解不足もあって、なかなか地域金融機関が資金を融通できないことがあったと聞きます。金融機関側は業界への理解を深めるというのはもちろんですが、短期的な収益だけではなく、社会的な影響なども考慮しながら、収益の継続を支援していく必要があると感じています。

涌井さん:農業も企業経営ですから、利益が継続して出ないと社員を雇うこともできないので、利益を出すことは絶対条件になりますね。収量が少なければ付加価値を上げる商品を作る。収量が多ければいかに幅広く売れる商品を作るかを考える。繰り返しになりますが、「生産・加工・販売」は常に一体化していることが非常に重要であり、できたものを相場で売りましょうということではいけません。

産業としての農業を造るためには、リーダーは農業にも偏らず、加工業者にも偏らず、流通にも偏らず、国民の食糧の安定供給のために日本農業を発展させようという高い視座を持った人を、行政や自治体も応援してもらいたいと願っています。

山本さん:「生産・加工・販売」の一体化は、よく言えば一蓮托生の取り組みですが、これまで分断されてきた領域ゆえの課題もあろうと思います。それを乗り越えて、お互いに信頼を高めながら収益化を目指すみらい共創ファーム秋田の取り組みがまさに、これからの事業者や団体の指針となるでしょうし、これが広がっていくことによって、農業の持続性はもっと高まっていくと感じました。本日はありがとうございました。

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