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神社で開かれるファーマーズマーケット なぜ神社なのか? 売れ行きは?

神社で開かれるファーマーズマーケット なぜ神社なのか? 売れ行きは?

日本でも多く開催されるようになってきたファーマーズマーケットやマルシェ。いろいろな地域でさまざまな特色を持ったものが開催されています。そんな中、広島県広島市に神社で開かれるファーマーズマーケットがあります。全国でも珍しい、神社で開かれるファーマーズマーケットを開催している「Farmer’s Collection(ファーマーズコレクション)」に話を聞きました。

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ファーマーズマーケット「Farmer’s Collection」

「Farmer’s Collection」は、北海道出身の竹内正智(たけうち・まさとも)さん(冒頭写真右)が、広島県広島市で広島県の農家さんを集めて始まったファーマーズマーケット。
・生産者たちにスポットの当たる場を!
・消費者と生産者が直接会えて話せる場所を!
をコンセプトに活動しています。
主な開催場所として、
・広島PARCO(パルコ)
・コイプレイス(広島電鉄・広電西広島駅前スペース)
・空鞘稲生(そらさやいなお)神社
などがあります。

「場所を貸してくださる皆さんが農業を盛り上げたいという気持ちが重なり、実現されています」(竹内さん)

Farmer’s Collectionのロゴマーク

神社でファーマーズマーケットを開催するワケ

空鞘稲生神社とは

ファーマーズマーケットの開かれる空鞘稲生神社は、広島城や平和記念公園から程近いエリアに位置し、約490年の歴史があります。神社の中でも珍しくウェブサイトやインスタグラムにも力を入れ、神社自ら情報発信をしています。
また、ファーマーズマーケット以外にもカフェの出店、ピラティスやヨガといったイベントも開催されており、地域交流の多い神社です。

空鞘稲生神社の入り口

空鞘稲生神社でファーマーズマーケットを開いたきっかけ

きっかけは、竹内さんのところに共通の知り合いである農家を通して、空鞘稲生神社の神主さんから「農家さんを応援したい」「人が集まる場所を使って地域貢献、地域活性化をしたい」という相談がきたことでした。
竹内さんは食品メーカーの営業職をしていた経験から、農家と消費者の農産物に対する価格の認識に差があると感じていました。生産者と消費者がつながれる場所を作ることができないかと考えていたところ、神主さんとの思いが一致し、開催が実現しました。

空鞘稲生神社のファーマーズマーケットの様子

神社ならではの効果も。売れ行きは好調

道沿いで行われるような通りすがりに寄ってみるファーマーズマーケットとは違い、ここには「この神社で新鮮な野菜を買いたい」という明確な理由を持ったお客さんが来ます。必然的にお客さんと参加する農家との会話が生まれ、販売につながることが多いそうです。
更に、神社で行われる祭り用の機材を使っているので、見栄えの統一感により雰囲気が生まれている点もお客さんが集まる理由の一つになっています
また、ファーマーズマーケットが始まる前には、生産者と野菜のおはらいをして、その野菜を「神やさい」と呼んでいる点も、お客さんから好評なのだそうです

朝のおはらい

おはらい後の神やさい

段々と減っているファーマーズマーケットの客足、続ける意味は

現状、日本各地でファーマーズマーケットの数が増えつつあります。日本全体だけでなく、広島市内だけを見ても多くのファーマーズマーケットが開催されるようになりました。
その数が増えるに伴い、消費者の目も肥えてきました。お客さんが開催当初に比べ段々と減り、飽きられていると感じることもあるようです。

竹内さんいわく、「ファーマーズマーケットは続けることに意味があり、続けることで農家さんと消費者が一体となり、より良い場所を作り出すことができる」とのこと。
そのとき限りの開催では農家さんと消費者との信頼関係も構築することができません。
また、続けることのできないファーマーズマーケットを開いても、主催者と農家さんとの信頼関係もできず、来たくなるような空間を一緒に作り上げていくこともできないのです。

インタビュー時の竹内さん

今後のファーマーズマーケットについて

これからのファーマーズマーケットと自身の活動について、竹内さんは次のように語ります。
「30代の農家を中心に、新たな販路開拓や、既存の方法にとらわれない新たな方法での農業の価値の創出など、さまざまな取り組みが見受けられるようになっています。野菜を販売する手段が増えているからこそ、ファーマーズマーケットを開催する側が『野菜を販売するだけでなく、先に何を見据えて取り組むか』という明確な目的を持って作り上げていかないといけない。そんな今だからこそ、皆さんと一丸となって新たな農業の形を切り開いていきたいと思い、活動をしています」

Farmer’s Collectionが考える新たな農業の形とは

・新しい販路、売り方
規格外野菜の販売、量り売りなど、小売店基準ではない販売方法への挑戦
・生産者と消費者がともに学べる空間作り
生産者は消費者の意見に耳を傾け、消費者は生産者から食べ方や栽培方法を聞くなど、お互いに学び価値ある空間を作る
・農家のスター化、新規就農者が後に続く道を
生産者にスポットを当て、目指したくなる「かっこいい農家」へのサポート
(消費者の認知度を高めることで、SNSやメディアでの露出を増やすなど)

竹内さんは、これらをファーマーズマーケットを通して実現していこうとしています。

農業界で日々新しい考え方や行動が増えつつある今、ファーマーズマーケットも同じように変わらなくてはならないときを迎えていると思います。
今までは、ファーマーズマーケットといった目新しいイベントに関心が持たれていましたが、その数が増え、差別化をしていかなければいけない現状にあるようです。生産者と消費者が触れ合う場所として、更なる盛り上がりを見せてくれたらなと感じました。

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