食料自給率とは
食料自給率とは、国内に供給される食料のうち、国内で生産された食料が占める割合です。日本の食料と農業の実情を把握する指標の一つになります。
食料国産率・飼料自給率との違い
食料国産率とは、畜産物に用いられる指標です。飼料が国産か輸入かにかかわらず、国内に供給される畜産物のうち、国内で生産された畜産物が占める割合のことです。国内の生産状況を把握するために、2020年に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」で新たに設置されました。
これに対し食料自給率(総合食料自給率)には、飼料自給率が反映されます。飼料自給率とは、畜産に使われる飼料のうち、国内生産の飼料が占める割合のことです。食料自給率は、国内に供給される国産畜産物のうち、国産飼料で育てられた畜産物が占める割合になります。輸入飼料で育てられた畜産物はカウントされません。
食料自給率の算出方法
食料自給率の示し方には、品目別自給率と総合食料自給率があります。品目別自給率は、各品目の自給率を重量ベースで算出したものです。一方の総合食料自給率は、食料全体を共通の単位を用いて算出したもので、熱量で換算したカロリーベース、金額で換算した生産額ベースの2通りがあります。
品目別自給率
品目ごとの生産量や輸入量の「重さ」を用いて算出した指標です。
カロリーベース総合食料自給率
基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標です。
生産額ベース総合食料自給率
経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(国内消費仕向額)に対する国内生産の割合を示す指標です。
日本の食料自給率の現状
日本の食料自給率は、長期的に低下が続いていますが、2000年代に入ってからはほぼ横ばいで推移しています。
2021年度の総合食料自給率は、カロリーベースで前年度より1ポイント高い38%です。飼料自給率を反映しない食料国産率でも、前年度から1ポイント高い47%となりました。小麦、大豆が作付面積、単収ともに増加したこと、米の外食需要が回復したことなどにより上昇したとみられています。なお、飼料自給率は前年度と同じ25%でした。
生産額ベースでは、前年度より4ポイント低い63%です。国際的な穀物価格や海上運賃の上昇などによる、畜産物の飼料輸入額や油脂類・でん粉などの原料輸入額の増加、肉類や魚介類の輸入単価の上昇、米や野菜の国産単価の低下などが影響したとみられています。また、生産額ベースの食料国産率も前年度より2ポイント低い69%となりました。
日本の総合食料自給率は、諸外国と比べて、カロリーベース、生産額ベースともに低い水準にあります。重量ベースの品目別自給率では、穀類、豆類、油脂類の低さが顕著です。日本の穀物自給率は、2019年の試算では179の国と地域の中で127番目。ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含む先進38カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)で32番目です。
日本の食料自給率が低い背景
日本の食料自給率が低下している背景には、主に2つの要因があると考えられます。
日本の食卓の変化
1965年の総合食料自給率はカロリーベースで73%、生産額ベースで86%でした。2021年にはカロリーベースで38%、生産額ベースで63%まで下がっています。その要因として日本人の食生活の変化が挙げられます。
国民1人当たりの1年の品目別消費量を、1965年と近年で比較すると、米の消費量は半分以下になっています。一方で、牛肉と豚肉は約4倍、鶏肉は7倍、牛乳・乳製品は2.5倍、油脂類は倍以上に増加しています。このように、自給率が高い米の消費量が減り、自給率の低い畜産物や油脂の消費が増えていることが、総合食料自給率の低下につながる大きな要因となっています。
カロリーベース換算のネック
日本の総合食料自給率は、特にカロリーベースで38%と低くなっています。重量あたりのカロリーが高い米の消費量が減っていることに加え、畜産物の飼料や油脂類は輸入に多くを依存していることが、カロリーベースを押し下げる要因になっています。
日本が掲げる今後の食料自給率の目標
政府は2030年度までに、カロリーベース総合食料自給率を45%、生産額ベース総合食料自給率を75%に高める目標を掲げています。併せて飼料自給率と食料国産率にも目標を設定し、これらの向上をはかりながら、食料自給率の目標値の達成を目指しています。
基準年度(2018年度) | 目標年度(2030年度) | |
カロリーベース 総合食料自給率 |
37% | 45% |
生産額ベース 総合食料自給率 |
66% | 75% |
食料自給率を上げるために農家ができること
食料自給率を向上させるためには、生産、流通、消費にかかわるすべての国民が課題を共有し、一体となって国産農作物の消費拡大に取り組むことが求められています。その中には、食料を生産・供給する農家にも、できることが多くあります。
地産地消を進める
国産の食料を安定供給するためには、消費者と食・農とのつながりを深めることが必要です。旬の農作物を産地で消費者に提供することで、その土地の風土や環境に合ったものを、少ない流通コストで消費者に供給することができます。農村の振興や地域農業の持続的な発展にもつながります。
食品産業と連携して国産野菜の利用を進める
加工食品において国産原料を使用する動きが拡大しています。2022年4⽉から、国内で作られたすべての加⼯⾷品を対象に原材料の原産地表⽰が義務化されたことが、輸入原料から国産原料への切り替えを後押ししています。農業者は食品メーカーなどの食品産業と連携することで、国産農産物の供給量を増やすことができます。
地域の実情に応じた担い手を育成する
今後、高齢者のリタイアが増加すると見込まれていることから、担い手の育成・確保が急務となっています。農業経営者には、法人化、経営基盤の強化、経営継承、新規就農と定着の促進などの取り組みが必要とされています。認定農業者制度を利用して経営基盤を強化することも、引いては地域の担い手育成につながります。
集落営農をはじめる
集落営農とは、集落を単位として、農業生産の全部または一部を共同で行う組織・取り組みです。地域ぐるみで農作業の共同化や機械の共同利用を行うことにより、経営の効率化を目指すことができます。農業、農村を維持するうえで有用な形態として、集落営農の数は全国的に増加し、集落営農全体に占める法人の割合も増えています。
販路を拡大する
消費者および、小売・流通・仲卸・外食などの実需者に対する販売力の強化も食料の国産率を高めるために有効な取り組みです。消費者や実需者のニーズに対応した生産や販売が重要となってきます。例えば食品安全や生産履歴付帯、有機・減農薬栽培、直接販売・交流などに取り組み、販路を拡大することでも食料自給率の向上に貢献できます。
農の力で食料自給率アップ
世界的な食料需要の増加、地球温暖化による自然環境の異変、国際情勢や為替・関税による輸入リスクなどが顕在化しています。食料の安定供給が難しくなる中、求められているのが国内の生産力の向上です。国内で消費する食料を国内でできるだけ多く作るために、農業・農村の力が不可欠です。日本の農業はまさに転換期。農業人材の活躍が期待されています。