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酪農家になるには?仕事内容や年収、就農のステップまで徹底解説

酪農家になるには?仕事内容や年収、就農のステップまで徹底解説

大自然の中で牛を飼い、おいしい牛乳の元となる生乳や乳製品などを生産する酪農家の仕事。本稿では酪農家になる方法や仕事内容、やりがいやメリット、気になる年収などを解説します。

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酪農家とは

酪農家とは、乳牛を飼育して乳を搾り、生乳や乳製品を生産する農家のことです。生乳として出荷するだけでなく、チーズやヨーグルトなどへの加工、販売までを自ら行う酪農家もいます。日本では牛が一般的ですが、山羊を飼育する場合もあります。

酪農家と畜産農家の違い

どちらも牛を飼うものというイメージがある「酪農」と「畜産」ですが、両者には違いがあります。
「畜産」は農業の一分野で、牛や豚、鶏、羊などの家畜を飼育し、肉や卵、乳などを生産します。毛や皮、骨などをあわせて利用する場合もあります。その畜産の一分野にあたるのが「酪農」です。主に乳牛を飼育し、搾乳して生乳や乳製品などを生産する農業を意味します。
畜産の方が広い事業領域を指すため「畜産農家」が酪農を営んでいる場合もありますが、「酪農家」は生乳や乳製品の生産に特化した農家であると言えます。

酪農家の仕事内容

搾乳

酪農家の仕事として最もイメージしやすいのが搾乳ではないでしょうか。搾乳は1日に2回行います。搾乳の前には殺菌と病気予防のため、牛の乳首を必ず消毒します。ごく小規模な酪農家を除いて搾乳は機械化されており、重労働の手作業は不要になっていることがほとんどです。

エサやり・哺育

エサやりも毎日欠かすことのできない作業です。大人の牛は1日あたり15キログラムほどの干草を食べ、60〜80リットルの水を飲みます。また、子牛には45℃ほどに温めた生乳などを与える哺乳を行います。

乳牛の体調管理

乳牛の体調管理はとても大切な仕事です。エサやりや搾乳の際などに、何か変わった様子はないか牛たちを観察します。必要に応じて獣医師に連携することもあります。

乳牛の人工授精・出産

乳牛の繁殖は酪農の継続に欠かせません。発情の兆候を見逃さず、適切なタイミングで人工授精を行う必要があります。家畜人工授精師の資格があれば、飼育している牛に自ら種つけもできます。およそ9ヶ月半ほどの妊娠期間を経て出産となります。出産への立ち合いも行います。

牛舎の清掃・わらの入れ替え

牛たちが快適に、清潔に過ごせるように牛舎の清掃やわらの入れ替えを行います。睡眠の質を高めることで、搾乳の量や質が良くなるとも言われています。

牧草の栽培、飼料づくり

牛たちのエサとなる牧草を栽培したり、飼料を入手したりします。飼料にはデンプン質が豊富なデントコーンと呼ばれるトウモロコシや小麦、大麦などが多く用いられますが、価格の高騰が多くの酪農家を悩ませている現状があります。

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乳製品生産

搾乳した後に生乳として出荷するだけでなく、乳製品への加工まで自ら行う場合もあります。チーズやヨーグルト、アイスクリームなどに加工し、さらに販売まで行う6次産業化に取り組む酪農家もいます。

酪農家の一日のスケジュール

一般的な酪農家における一日のスケジュールは、このようになっています。

5:00~7:30 起床・1度目の搾乳・掃き掃除・汚れたわらの交換
7:30~9:00 朝食・休憩
9:00~11:00 エサやり・体調チェック・掃除・獣医師への対応・子牛の哺育
11:00~13:00 昼食・休憩
13:00~18:30 搾乳した生乳の出荷・2度目の搾乳・清掃・寝わらの準備
18:30 帰宅

日によって作業内容は異なりますが、エサやりや搾乳など、牛の世話は毎日必ずしなければなりません。搾乳は朝晩の1日2回、エサやりは1日1回または2回行います。

また、季節によってはエサとなるトウモロコシや牧草などを栽培する畑仕事が加わる場合もあります。その他に牛の出産があれば、時間帯を問わず対応します。

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酪農家のやりがい・魅力

牛を中心とした生活を送る酪農家は、忙しく体力も必要な毎日を送ります。しかし酪農家ならではの楽しみややりがい、メリットも多いものです。

動物と触れあえる

動物が好きな人にとっては、牛たちと毎日触れあえることが最大のメリットかもしれません。かわいい牛たちのためと思えば、早起きして重い牧草も運べる!という酪農家も多いのです。

大自然のなかで生活できる

一般的に広い土地と冷涼な気候が必要な酪農は、高原など自然豊かな環境で営まれます。大自然の中で暮らしたい人にとっては最高の環境です。

洞察力が身に付く

毎日の作業において牛たちの健康状態などを観察し、ちょっとした変化に気づく必要があります。ルーティンワークの中でも生き物を相手にしながらさまざまな施策を行う酪農では、洞察力が身につきます。

愛情や手間をかけるほど成果を得られやすい

牛の世話には手間や時間がかかりますが、その分成果を得られやすいのも酪農のメリットのひとつです。エサをしっかり食べているか、ストレスはないかなど牛の様子を日々観察し、細やかな世話をすれば牛たちの健康を守ることにつながります。

酪農家の年収

酪農家を目指す場合、年収がどれくらいなのかは気になるところでしょう。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」に基づく統計では、酪農従事者を含む畜産作業員の年収は、全国平均で344.1万円となっています。

生乳を出荷するだけでなく、自ら乳製品への加工、販売まで行う6次産業化に取り組み、収入増を目指す酪農家もいます。また、アグリツーリズムが注目される中で、乳搾りや牛の世話といった体験型観光を提供して新たな収入の確保を目指す方法もあります。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト 酪農従事者

酪農家が持っていると便利な資格

酪農家になるために絶対に必要な資格といったものは特にありません。ただし、持っていると酪農を行う上で役に立つ資格はいくつか存在します。

自動車運転免許

あらゆる農業に従事する上で欠かせないとも言える自動車運転免許は、酪農でも役立ちます。いわゆる普通免許の他に、トラクター等を運転できる「大型特殊自動車免許」や農機具や牧草などを積んだ車を引っ張ることができる「けん引免許」を取得していると、牧草栽培などの時にも便利です。

家畜人工授精師

家畜人工授精師は、家畜の人工授精を円滑に行うための国家資格です。
農林水産大臣が指定する大学、または各都道府県が家畜の種類別に行う家畜人工授精に関する講習会、家畜人工授精及び家畜体内受精卵移植に関する講習会の過程を終了した上で修業試験に合格した後に、知事の免許を受ける必要があります。

日本農業技術検定

農業の知識や技術について出題される日本農業技術検定は、全国農業会議所が実施する民間の検定試験です。1級から3級まであり、2級と1級では学科試験に加えて実技試験も実施されます。
新たに酪農運営会社への就職を考えている場合は、日本農業技術検定に合格しておくことで知識や技能を身につけている目安になり、優先採用される可能性もあります。

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農業にも一定の知識や技能の目安になる検定試験があります。日本農業技術検定はその代表的なものと言えるでしょう。新規就農や農業法人への就職を目指す、多くの学生や社会人が試験を受けています。農業大学校に在学中にも受験できます…

酪農家に向いている人の特徴


・動物の世話が好き
・体力に自信がある
・生活リズムを臨機応変に変えられる
・自己管理ができる
・計画性がある
・観察力がある
・粘り強い

酪農家は毎日牛の世話をするので、基本的に動物を飼うのが好きな人に向いています。
体を動かす仕事も多いため、体力も必要です。また、タイミングを問わず発生する牛の出産や病気などに対応するために、生活リズムを臨機応変に変えられる人も向いています。
繊細な生き物である牛の健康を守るため、毎日早起きをして同じ時間にエサをやり、搾乳や清掃を行う必要があります。自分が疲れていて休みたい、と思う時でも牛の世話は休めません。自己管理ができ、計画性を持って仕事に取り組めることも酪農家に必要な資質と言えるでしょう。
また、牛たちのちょっとした変化に気づける観察力や、思い通りにならない時にも諦めない粘り強さも大切です。

酪農家になる方法

酪農家になるために特別な資格は不要ですが、知識や経験がなくては酪農家の仕事は務まりません。一人前の酪農家になるためには、大まかに3つのステップがあります。

1. まずは基礎を学ぶ

酪農を営むためには、様々な専門知識が必要です。まず農業大学校や研修施設などで酪農について広く学び、基礎知識を身につけます。

2. 酪農家のもとで実習を行う

基本的な知識を学んだ上で、酪農家のもとで実際に乳牛の世話をして実習を行います。
「酪農ヘルパー」として経験を積み、技術を磨く方法もあります。乳牛の世話は365日休みなく行うため、休みたい酪農家さんに代わって作業を引き受けたり、留守を預かったりするのが酪農ヘルパーの仕事です。現在は全国に約270の酪農ヘルパー利用組合があります。

3. 就農する

基礎を学び、実習を経験した後にいよいよ酪農家として就農します。就農にあたっては自ら新規で酪農業を営む、すでに営農している酪農家に就職する、酪農を運営している企業に就職する、の3つのパターンがあります。

酪農家を目指す道

資材価格の高騰や少子化による給食需要の低下など、酪農を取り巻く現状には厳しい面もありますが、酪農は日本人の暮らしに欠かせない重要な産業のひとつです。
日々牛たちとふれあい、大自然の中で営む酪農は、苦労があってもやりがいも大きいと話す酪農家もいます。興味があるという人は、ぜひ酪農家を目指してみませんか。

酪農にご興味のある方必見の特集はこちら

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