ロープワークは「基礎教養」だった!?
筆者は新規就農して6年目になります。長らく東京でサラリーマンをしていたうえに、ゴリゴリのインドア派だったため、靴紐や新聞を束ねるほかに「結ぶ」という作業をしたことがありませんでした。
田舎に引っ越してすぐに造園屋で働き始めた初日には「軽トラに荷物積んどいて!」と言われました。当然のようにできなくて、ものすごく驚かれたのを覚えています。ずっと田舎に住んでいる人にとって、ロープワークは「読み書きソロバン」のように、誰もが当然知っているはずの基礎教養だったのです。
仕事だけではありません。消防団の活動や、集落のみんなで自治活動をするときにも結び方を知らなければ、引け目を感じてしまいます。
そこで今回は、田舎で暮らしを初めて間もない人向けに、よく使う4種類の結び方を紹介します。
輪っかの大きさ自由自在 もやい結び

もやい結びは、ロープの先端に輪っかをつくる結び方。輪っかの大きさは自由自在
もやい結びは、ロープの先端に、どんなに強く引っ張っても大きさが変わらない輪っかをつくるための結び方です。なおかつ、結び目に負荷がかかってもほどけやすいのが特徴です。
テントやタープを設営する時に使うので、キャンプなどのアウトドアが好きな人には、お馴染みの結び方なのかもしれません。輪っかを杭などにかけるなどして、モノを繋ぎとめる時に便利です。果菜類の誘引にも使えますし、使い方は色々あります。
私の場合、ロープを軽トラの荷積み用に使うことが多いため、購入したてのロープは、まず両端にもやい結びで輪をつくり、軽トラのフックにかけられるようにしています。
もやい結びの結び方
これで、完成です。そんなに難しい結び方ではないので、「輪っか、下、下、上」と呟きながら練習するとすぐに覚えられると思います。
軽トラ乗りに必須 南京縛り

南京縛りは、大きい荷物を強く荷台に固定するための結び方
南京縛りは、強い力で荷物を固定する方法です。上の写真では脚立を積んでいますが、出荷用コンテナやイナワラなどを高く積み重ねて運ぶとき、管理機などの重たくて不安定な機械を積む時など、さまざまな場面で必要になる、軽トラ乗りには必須のロープワークです。
使う機会が多く、少し複雑なため、結び方はやや詳しめに紹介します。
南京縛りの結び方

脚立の形をとく考えれば、こんな積み方もできる。これだけでも後ろにずり落ちない
大きいものを積む時は、南京縛りをしっかりやるとともに、積荷の形をよく観察して、絶対に落ちない方法を編み出すことが大事です。
モノを強く引っ張れて、簡単 ねじ結び

伐採の時など、木を引っ張る時に使う「ねじ結び」
樹木の伐採などで、倒れる方向をコントロールしたい場合によく使うのが「ねじ結び」です。大きな木の場合は少し心許ないですが、あまり重くない木を伐倒する際には、すぐに結びて解けるので、便利な方法です。
ねじ結びの結び方
支柱を束ねるのに便利 巻き結び

イボ竹などの支柱を「巻き結び」で束ねる
巻き結びは、その名のとおり、ロープを巻きつけながら結ぶ方法です。これまで、イボ竹などの支柱類は片蝶々結びなどで束ねていましたが、最近は巻き結びにしています。
この結び方の良いところは、結び目が緩んでも、締め直しが簡単なところ。
たとえば、10本ずつ束ねたイボ竹から数本だけ抜き取ると、ふつうの結び方では抜き取った支柱分の隙間ができてしまいますが、巻き結びなら簡単に締め直すことができます。この他にも、キュウリネットを設営する際など、幅広く使える結び方です。
巻き結びの結び方
ロープワークは体で覚える
今回は、できるだけ手も写り込むように写真で解説しました。私自身、本などを見て練習しましたが、手の使い方とともに、実際に作業をしながら体に染み込ませるのが一番早く覚えられたので、そうしました。複雑にみえる南京縛りですが、日常的に使うようになると、目を瞑ってもできるようになります。
どの結び方にも、ロープワークについての基本的な技術が詰まっています。なぜ結び目が解けないか、なぜ硬く結んでも解けやすくなるかなどなど。ロープを使うにつれて体で理解できるようになり、自分なりの応用もできるようになって、だんだんと楽しくなりました。ここで紹介した結び方のほかにも、もっと上手な結び方や、手順があるはずです。ぜひ、練習してみてください。