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就農前のスマート農業導入で失敗回避、珍品種栽培成功と思わぬ副産物

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

就農前のスマート農業導入で失敗回避、珍品種栽培成功と思わぬ副産物

営農の規模がある程度大きくなると、ドローンやセンサーなどスマート農業を取り入れてみたいと思う人もいるのではないか。でも栽培を円滑に軌道に乗せるには、就農前に導入してみるのも1つの選択肢だ。2017年にキノコの栽培を始めた中田靖人(なかた・やすひと)さんに話を聞いた。

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珍しいキノコで他の農家と差別化

中田さんの栽培ハウスは愛知県新城(しんしろ)市の山あいの地域にある。実家はもともと農業や林業を営んでおり、耕作されなくなった60アール超の農地を所有していた。中田さんはその農地をいつか活用してみたいと以前から思っていた。そこで2015年に福祉関係の仕事をやめ、2年間の研修を経て実家で就農した。60歳のときのことだ。

小遣い稼ぎのレベルで、農業をやろうと思ったわけではない。ただ農地のある場所は日当たりが悪く、野菜を本格的に育てるのに向いていない。獣害も深刻で、露地栽培はリスクがあった。そこできちんと利益を出せると見込んで選んだのが、暗いハウスの中でも育てることのできるキノコだった。

ではどんなキノコを育てるか。まず栽培してみたのは、シイタケを改良して開発された品種で、形がマツタケに似ている「松きのこ」だ。業者から菌床を仕入れて生産を始めた。地元ではほとんど知られていないキノコだったため、道の駅でホットプレートで自ら焼き、試食してもらって売り込んだ。

画像1)中田靖人

中田靖人さん

新たに2021年から挑戦し始めたのが、珍しい白いキクラゲだ。本来なら黒褐色のアラゲキクラゲの突然変異種で、地元では松きのこと同様にほとんど普及していない。栽培を始める際、中田さんはやはりその点に注目した。既存の農家が出荷する大量のキノコの間で埋没してしまうのを避けるためだ。

食べ方の提案でも特色を出した。中田さんが運営する「鳳来寺山麓きのこ園」のサイトを開けると、かき氷のシロップで染めたキクラゲや、わらび餅のように黒蜜ときな粉をまぶしたキクラゲの写真が並ぶ。珍しいキノコのため、どう食べたらいいのか消費者が迷わないようにするためだ。

シロップで染めた白いキクラゲ

シロップで染めた白いキクラゲ

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