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さいたまヨーロッパ野菜研究会のノウハウを伝授。確信した「農業の伸びしろ」

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

さいたまヨーロッパ野菜研究会のノウハウを伝授。確信した「農業の伸びしろ」

農家とシェフ、食品卸などが集まり、西洋野菜の生産と販売に取り組む「さいたまヨーロッパ野菜研究会(ヨロ研)」。全国的にも有名なこの活動を応援してきたのが、市の外郭団体の職員の福田裕子(ふくだ・ゆうこ)さんだ。その福田さんが独立し、2023年4月から食と農の分野でコンサルティングの仕事を始めた。

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西洋野菜やキクラゲ、トウガラシの栽培を応援で実績

福田さんは出版業界で働いた後、さいたま市の外郭団体のさいたま市産業創造財団で2006年から働き始めた。中小企業診断士の資格を持っており、飲食店をはじめさまざまな分野で起業の支援を担当してきた。

農業に関わるようになったのは、イタリア料理店からの相談がきっかけだ。「地元でイタリア野菜をつくってほしい」。そう頼まれた福田さんは農家を含む関係者がチームをつくり、お互いに連携して西洋野菜を振興することを思いついた。そのアイデアが実を結び、2013年に発足したのがヨロ研だ。

とくに力を入れたのが、農家の栽培計画と卸会社などの仕入れ計画の調整だ。新しい流通の仕組みなだけに、事前にうまく擦り合わせておかないと、両者にズレが生じる恐れがあった。そこで関係者が集まる会合を定期的に開いて調整することで、栽培と仕入れの量がかみ合うように工夫した。

卸会社の販売努力もあって売り先が増え、ヨロ研の存在は6次産業化の成功事例として広く知られるようになった。その立役者として福田さんも注目を浴び、農業分野でさまざまな相談を受けるようになった。

ヨロ研

ヨロ研のメンバーが育てた西洋野菜

さいたま市のタクシー会社の日栄(にちえい)交通が2020年に始めたキクラゲの栽培はそのひとつ。新型コロナで売り上げが減った同社は、新たな収益源としてキクラゲに着目した。相談を受けた福田さんは小学校の管理栄養士を紹介して給食用の販売を後押しし、加工品をつくる際はデザイナーを紹介した。

さいたま市で世界各地のトウガラシを育てる農業法人、十色(といろ)も福田さんが支援した。2021年設立の同社はもともといろいろな作物を栽培していたが、トウガラシを前面に出すよう提案。激辛の食べ物が好きな人やシェフを巻き込んでSNSでコミュニティーを立ち上げ、十色の応援部隊にした。

こうして実績を重ねるうち、自治体から講演に呼ばれたり、西洋野菜の売り方で悩んでいる他の地域から相談を受けたりするようになった。職場ではIT関連のスタートアップなども担当していたが、農業を含む食品分野に絞ってコンサルの仕事を個人でやってみたくなり、3月末に退職した。

キクラゲ

日栄交通のキクラゲ

需要をつかんで地元で販路開拓

コンサルの仕事で対象にしようとしているのは、農家や飲食店、食品加工会社などだ。ではどうやって彼らを後押ししようとしているのか。それを理解するため、福田さんが農業に関して感じていることを確認してみよう。

福田さんが農家に関わり始めたとき、まず思ったのは「さいたま市の農業は10~20年後にはなくなってしまうのではないか」ということだ。需要をきちんと考えて作物を栽培しているとは思えなかったからだ。

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