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サラリーマンの傍ら、独学でイチゴ栽培を研究。5年の時を経て、ついにイチゴ農家として始動

サラリーマンの傍ら、独学でイチゴ栽培を研究。5年の時を経て、ついにイチゴ農家として始動

昨年12月に観光農園とイチゴ直売所をオープンした徳島県吉野川市の「あんいちご園」。園主の岡田裕輔(おかだ・ゆうすけ)さんはサラリーマンとして働きながら、5年以上に渡って独学でイチゴ栽培の経験を積んできた。これまでの歩みや、イチゴ農家として独立を決めた背景について話を聞いた。

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本業の傍ら、300万円掛けて実証ハウスを建設

吉野川流域の肥沃(ひよく)な土壌を生かし、野菜を中心に果樹や花きなどの栽培が盛んな徳島県吉野川市。岡田さんはJA全農徳島に勤務していた2017年、祖父母がナスを露地栽培していたこの土地に、1棟のハウスを建ててイチゴの試験栽培を始めた。これが「あんいちご園」の始まりだった。

「もともと祖父母がナス栽培をしていた影響で、小さい頃から農業に興味があり、いつかは自分で農業をしてみたいという思いがありました」という岡田さん。イチゴ栽培に興味を持ったきっかけは、子供がもらってきたイチゴの苗をプランターで植えた経験にある。「子供とイチゴを育ててみて、成長する過程が面白いと感じたんです。また、これを仕事として考えた時、ハウス栽培では売り上げが安定しやすい点も魅力的でした」

岡田さんは「イチゴ栽培に興味を持った当初は、すぐにでも農家になろうと思ったのですが、妻と両親から諭され、まずは小規模で試験栽培をしながら経験を積むことにしました」と、当時を振り返り笑みをこぼす。

そこで、2017年に施工費約300万円を掛けて畑の一角に高設栽培システムを設けた「実証ハウス」を建てた岡田さん。本業では購買事業を手掛ける部署で園芸資材の販売に従事する傍ら、退勤後や休日を利用して独学でイチゴ栽培の研究にいそしんだ。栽培する品種は「紅ほっぺ」一本に絞り、近隣農家の助言も受けながら地道に経験を積んだ。

貸し切り制の観光農園が好評

約5年がたった22年12月に、満を持してイチゴ農家として独立することとなった岡田さん。就農を決めた背景には、今なお続く農業資材の高騰があったと振り返る。
「サラリーマン時代は園芸資材を販売する仕事をしてましたので、その高騰ぶりは間近で感じていましたし、今後も値段が上がるだろうと見通していました。このままずっと就農する機会を待っていたら、手が届かなくなってしまうかもしれない。そうなって後悔する前にやってみよう」と一念発起。実証ハウスの借金を返し終わった同年春に14年間勤めたJA全農徳島を退職し、新たに資金を借り入れて16アールの畑に5棟のハウスを建設。イチゴ農家として本格始動した。

真新しいハウスの中を見せてもらうと、高設ベンチから初の収穫シーズンを迎えた大粒の「紅ほっぺ」が顔をのぞかせる。ハウス内は、最新の環境制御装置によって温度や湿度、二酸化炭素濃度などが綿密に管理されており、岡田さんは「人の感覚に頼らず、適切な栽培環境を整えてイチゴを育てるのがこだわり」と胸を張る。

あんいちご園では、計5棟あるハウスのうち1棟を観光農園として開放している。ハウスの規模は決して大きくないが、ゆっくりとイチゴ狩りを体験してもらえるよう1日4組限定での貸し切り制を敷いている。こうした運営がハマり、着実に県内外のイチゴファンのハートをつかんでいる。中には「首都圏ではありえない安価。人混みを避けられるのもうれしい」と、遠方からわざわざ出向いてくれる利用客もいるそうだ。

もう一つの収益の柱がイチゴの産地直売。今冬、ハウスの向かいに直売所をオープンした。あんいちご園では、ここで1日当たり50~60パックのイチゴを売り上げており、イチゴ狩り客が「おいしかったので、お土産に買っていく」とイチゴを買い求める構図が出来上がっているという。農園のイチゴを使った手作りジャムも好評だ。

「自分が農園のすべてを決めるプレッシャーがある一方で、しがらみなく自由な働き方を実現できている。それこそが農業の面白さ」と総括する岡田さん。

観光農園は5月下旬まで開放予定(10:00~12:00、13:00~15:00)。完全予約制(予約は同農園ホームページへ)。

<取材協力>
あんいちご園
〒776-0020 徳島県吉野川市鴨島町西麻植字大東34TEL: 070-9017-7665
https://anichigoen.com/

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