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食で地域を盛り上げる、農家と飲食店をつなぐ「大人の本気の遊び」

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

食で地域を盛り上げる、農家と飲食店をつなぐ「大人の本気の遊び」

自治体や市民、地元のさまざまな団体が連携し、飲食店と農家をつないで「農のある町」を盛り上げる――。そんな取り組みが東京都の多摩地域にある国分寺市で続けられている。名前は「こくベジプロジェクト」。発起人の1人である奥田大介(おくだ・だいすけ)さんにインタビューした。

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観光振興の一環としてスタート

こくベジプロジェクトは、国分寺市が地方創生事業として2015年度に始めた。観光振興の一環として、地元の食と農をつないで地域を盛り上げるのが目的だ。

国分寺市の農畜産物を市内の飲食店が使い、メニューに取り入れるのが活動の柱。農畜産物を「こくベジ」の名前でブランド化し、飲食店は専用のタペストリーを店に掲げる。現在、100軒近くの飲食店が参加している。

運営しているのは、こくベジプロジェクト推進連絡会。農協や商工会、観光協会、市民の有志で構成し、市が事務局を務めている。奥田さんは市民メンバーの1人。市と農協、商工会が運営費の一部を負担している。

もともと奥田さんたちは、市内を歩きながら町の魅力を再発見するイベント「ぶんぶんウォーク」を運営していた。史跡やギャラリーを回ったり、ワークショップを開いたりするのがその内容だ。地元の食材で飲食店が特別メニューをつくるという、こくベジの原型のような企画もその中にあった。

一方、国分寺市には奈良時代に建立された武蔵国分寺跡などの観光スポットがあるものの、食事は他の町でする観光客が多い点が課題になっていた。そこで食に焦点を当てて町を活性化するため、ぶんぶんウォークで実績のある奥田さんたちに声をかけ、こくベジプロジェクトをスタートさせた。

こくベジののぼり

飲食店が地元の農畜産物を直売所などで購入し、メニューに取り入れればプロジェクトの対象になるほか、奥田さんたちが農家から飲食店まで野菜の配達を請け負うこともある。「こくベジ便」というサービスで、毎週火曜日と金曜日に実施している。30~40軒の飲食店と10~15軒の生産者がサービスを利用している。

この延長で、こくベジ便を利用している農家の野菜を消費者が買いたいと思ったとき、飲食店で受け取れるサービスも2020年から開始した。飲食店で食べて気に入った野菜を、客がその場で購入するなどの効果も期待している。

取り組みの内容をPRすることも、活動の柱になっている。プロジェクトが始まった当初は事業を受託した企業が参加店を紹介する情報誌をつくり、関連の動画を制作して立川、吉祥寺、新宿の各駅などで流した。

いまは奥田さんたちが「そろそろタケノコの季節です」といった情報を、希望する飲食店や市民にメールで発信している。名刺サイズのPRカードや、地元の農業や飲食店を紹介する冊子を制作したりすることも計画している。年に2回開くマルシェにも、地元の食材を広く知ってもらう狙いがある。

マルシェの準備の様子

交付金で野菜を安売りするのはNG

プロジェクトは開始からすでに7年が過ぎた。新型コロナの影響が薄らいだ2023年は、活動をより盛り上げるためのチャンスの年になる。ではなぜ取り組みは一過性のもので終わらず、ここまで続いてきたのだろうか。

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