国産小麦の時代到来!挑戦の先に広がる麦作の可能性
大手コンビニエンスストアチェーンとタイアップし、フランスパン作りなどに適しているといわれる準強力小麦品種「さちかおり」を提供しているのは、佐賀市と久留米市の間に位置し、筑後川の両岸に約23町の広大な水田を管理する農事組合法人さかぐちです。
県やJAさがと協働で進めてきた事業により、同組合で生産された「さちかおり」を用いて開発されたパンが九州7県の約2,300店舗で販売されるという大きな話題を集めたのは、2022年10月のことでした。
しかしながら、同組合が「さちかおり」を生産しはじめたのは、ここ数年というから驚きです。
佐賀県東部の坂口地区で農業を営む20戸の農家が集まり、農事組合法人さかぐちを立ち上げたのは2015年。佐賀県内では3番目、みやき町では初の農事組合法人として設立されました。
以来、「収量アップ」「収入アップ」「大雨被害抑制」をテーマに、JAの営農指導員とともに麦作に関するさまざまな取り組みを進めてきたといいます。
「当初は、赤かび病が発生しにくいといわれている「サチホゴールデン」や「シロガネコムギ」などを生産していましたが、これからは国産のパン用小麦が求められる時代になるという営農指導員のアドバイスをきっかけに、2020年頃から小麦「さちかおり」や大麦「はるか二条」の栽培をスタートしました。従来の小麦「シロガネコムギ」、大麦「サチホゴールデン」などに比べて草丈が低いため、倒れにくいなどのメリットも大きな魅力でしたね」と代表理事の江島昭正さん。
栽培スタートと同時に、以前の品種に比べると赤かび病のリスクが高まることから、消毒のための防除を1回から2回に増加。JAの営農指導員の薦めもあり、北興化学工業(株)から発売されている『ワークアップフロアブル』を採用することにしました。
「万が一、赤かび病が発生し、その麦を人が食べてしまったら健康を害する恐れがあります。ライスセンターで赤かび病が見つかれば、産地全体の出荷を止めてしまうことにもなるため、赤かび病を出さないことが私たちの大前提です。そこで、既に高い実績を持つ『ワークアップフロアブル』の採用を決めました」。
最大産地北海道でも使用されている※その安心感。たまねぎにも使える汎用性
[※北海道で使用されている薬剤はワークアップフロアブルと同じ有効成分「メトコナゾール」を含むリベロ水和剤(北海道限定)]
赤かび病が発病しやすいのは、降雨量の多いシーズン。出穂期になり雨に打たれると抗菌力が低下することから、かびが繁殖しやすい状態となり、特に殻の中に実が入っていない穂から発病することが多くあります。
以前から高温多湿な九州で麦作が難しいといわれてきたのも、赤かび病が発生しやすい条件が揃っているから。
そこで、同組合では、『ワークアップフロアブル』の高い防除効果に着目。乗用管理機で穂先にしっかり噴射できる液剤タイプのため、2回行う防除作業についても大きな負担となることなく、スムーズに導入することができました。
①麦類で無人航空機による散布が可能(フロアブル)
②麦類の赤かび病、網斑病に優れた効果を発揮
③赤かび病菌が産生する毒素、デオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)の低減効果に優れている
麦類の主要病害(赤かび病、網斑病など)に優れた効果を示す『ワークアップフロアブル』は、浸達性・浸透移行性があり、降雨の影響を受けにくく耐雨性に強いといわれています。
また、たまねぎの生産量でも国内トップクラスの実績を持つ佐賀県で、たまねぎの病害防除にも使用できることも『ワークアップフロアブル』を選んだ理由の1つです。
■コムギ赤かび病
■オオムギ網斑病
■タマネギ灰色かび病
「私たちが管理する麦畑の近くには、別法人のたまねぎの圃場があります。周辺に気を配りながら散布していますが、麦類で赤かび病や網斑病の両方に登録があり、さらに、たまねぎにも登録があるのは『ワークアップフロアブル』だけ。たまねぎの収穫量が多い佐賀県で安心して使用できます」と江島さん。
たまねぎの灰色かび病や灰色腐敗病に対し、収穫前日まで使用できるのも『ワークアップフロアブル』の特長です。
さらに、麦類で3回まで使用できるのも大きなメリット。JAさがの生島さんは、「浸達性・浸透移行性の高さから、散布して薬液が乾いてしまえば、降雨があっても比較的効果の持続が期待できます。万が一散布直後に大雨が降っても、3回まで使用できるので、有事の際にも安心です」と話します。
販売元の北興化学工業(株)では、麦の収穫量第1位の北海道でも『ワークアップフロアブル』と同じ有効成分『メトコナゾール』を含む『リベロ水和剤』(北海道限定)を販売しており、麦類やたまねぎの病害防除で使用されています。
全国の麦の主要産地で使用されていることからも信頼性の高さがうかがえます。
経営改善や法人化の最先端を行く JAとともに地区の発展を目指す農事組合法人さかぐち
農事組合法人さかぐちでは現在、麦類では「さちかおり」や「はるか二条」、豆類では大豆の「フクユタカ」、米では「さがびより」や「ヒヨクモチ」、飼料米の「ミズホチカラ」を生産しています。
「以前は、水稲や大豆の生産を主にしていましたが、大雨や台風の影響を受けるようになり、厳しい年もありました。その対策として、大雨や台風被害が少ない時期に収穫できる麦作に注力することで、収量や収入アップを実現。米や大豆に関しては収量が減り、収入が低下した部分もありますが、反対に麦の収入を高めることで大きくカバーすることができました」と江島さんは話します。
また、農事組合法人として乗用管理機や薬剤を一括購入するとともに、合理的な農業経営を図ることで経費を抑制。法人化により情報や農機具の共有を図り、生産の効率化や品質を担保できる仕組みが構築され、法人で得た収益を組合員にしっかり還元できることも同組合の強みです。
年に1度の総会では、決算報告から次年度の運営計画まで話し合うほか、作目毎にランク付けし、優秀な成績を収めた組合員には、表彰及び豪華賞品を贈呈するなど、個人のモチベーションを高める取り組みも行われています。
そのほかにも土づくりや排水対策などの基本技術を全員で学び、若手の成長を支援。
品種毎の団地化や組合員の栽培技術の向上に努めるなど、農事組合法人さかぐちのきめ細かな取り組みは高く評価され、令和3年度全国麦作共励会表彰における集団の部で「全国米麦改良協会会長賞」を受賞しました。そのほかにも複数の賞を獲得し、業界の注目を集めています。
「自然に勝つことはできませんが、施策を講じて収量が上がれば、収入も上がります。農業の機械化を進めるにも、個人では厳しい時代。肥料をはじめとする生産資材の高騰化など、さまざまな課題がある中、能率を高めて収穫量を上げることが法人のいちばんの目的です」と江島さん。
世界的な小麦価格の高騰などを背景に、国産小麦の需要は右肩上がりという追い風を受け、さらなる地区の発展を目指したいと話していました。
取材協力
JAさが
農事組合法人さかぐち
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ワークアップ普及会
株式会社クレハ [事務局] 北興化学工業株式会社
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