働き方改革でアグリツーリズムにチャンス
イベントで最初に登壇したのは雨風太陽の代表、高橋博之(はかはし・ひろゆき)さんだ。東日本大震災をきっかけに都市と地方をつなぎたいと思うようになったことなどを語った後、アグリツーリズムについて話し始めた。
「労働時間の短縮で自由な時間を手にしたヨーロッパの都市住民は、農村や漁村に向かった。そこでさまざまな生産活動に参加し、ちゃんと農家にお金を払い、農家と交流して心身をリフレッシュし、元気になって都会に戻る」
では日本はどうか。高橋さんは「これから副業の解禁やリモートワークなどが進むことで、(都会に住んでいる人が)さまざまな形で里山に入っていく」とし、日本ではこれからアグリツーリズムが本格化すると指摘した。
続いて政治家や官僚、民間企業のスタッフ、漁協の組合長などが次々に壇上に上がり、「令和の田園都市構想」「第2のふるさとづくり」「魚を獲るだけの漁業の終焉(しゅうえん)」などをテーマにセッションを実施した。
イタリアの取り組みに地方活性化のヒント
とくに筆者が興味を持ったのが、「日本のアグリツーリズムは復活するか」というセッションだ。登壇したのは元農林水産事務次官で、農林中金総合研究所の理事長を務める皆川芳嗣(みながわ・よしつぐ)さん。皆川さんは日本ファームステイ協会理事長の立場にもある。対談の相手を務めたのは高橋さんだ。
まず高橋さんから、日本の農泊の現状に話題をふった。「ヨーロッパに倣って日本も1980年代にグリーンツーリズムにチャレンジした。今も頑張っている人もいるがなかなか広がらず、(全体としては)下火になった」
何が原因なのか。「ホストとゲストに分かれ、ホストの農家が安い値段で思い切り『おもてなし』をしてしまう。交流になっていないので、(農家が)もてなしに疲れてしまう。そこが大きな課題」。高橋さんはそう話した。
そこで皆川さんが紹介したのが、イタリア発の取り組み「アルベルゴ・ディフーゾ」だ。