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つるちゃんに聞く! AI、ChatGPTがもたらす農業の未来(前編)【ゼロからはじめる独立農家#56】

西田 栄喜

ライター:

連載企画:ゼロからはじめる独立農家

つるちゃんに聞く! AI、ChatGPTがもたらす農業の未来(前編)【ゼロからはじめる独立農家#56】

ChatGPT(チャットジーピーティー)などの高度な言語処理技術を用いた人工知能が登場し、AI時代が本格的に到来か、と言われています。そんな中、AIが農業にどのような影響を与えるかについては漠然としている人が多いのではないでしょうか。以前からAIに興味を持ち活用しているノウカノタネのつるちゃんにいろいろ聞いてみました。

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■つるちゃんこと鶴竣之祐(つる・しゅんのすけ)さんのプロフィール
1986年、兼業農家の息子として福岡県に生まれる。高校時代には1年半のオーストラリア留学を経験。大学卒業後、実家は継がず福岡市内で独立就農する。2014年、地元若手農業者と共に農業ポッドキャスト「ノウカノタネ」の配信を開始。2020年にはYouTubeチャンネル「科学的に楽しく自給自足ch」も配信開始。2022年より農メディア事業、営農事業、AI開発事業を統合してノウカノタネ株式会社を設立。ミッションは「農業の民主化」。
2021年 Spotify NEXT クリエーター賞(Spotify社)受賞
2022年 第51回日本農業賞 食の架け橋の部 奨励賞(NHK、JA全中、JA都道府県中央会)受賞

ノウカノタネ株式会社

ポッドキャスト「ノウカノタネ」

ChatGPTとは何?

西田(筆者)

つるちゃんといえば、以前からAIに注目していて、ポッドキャストやYouTubeでも早くから情報発信していましたね。AIに全く疎い私でもすごく変化していくんだろうなと感じています。そこでAIが農業に与える影響について、2回にわたって聞いていきたいと思います。

さっそくですが、2022年11月に公開され世界に大きなインパクトを与えているChatGPTについて教えてください。
ChatGPTは、入力した質問に対してまるで人間のように自然な対話形式でAIが答えるチャットサービスです。Googleが2017年に発表した「Transformer(トランスフォーマー)」をベースにしています。大量のデータを機械に学習させることで、機械が人間のようにふるまうことができるようになりました。

ChatGPTは文章を生成する能力が高く、問題を作成する能力もあり、プログラミングのコードを書いてくれたりもします。

つるちゃん

ポッドキャスト ノウカノタネ

ポッドキャスト「ノウカノタネ」ではデジタルとアナログの違いからAIまで詳しく話しています

西田(筆者)

聞いただけですごそうですが、すごすぎて敬遠してる人も多いかも。ChatGPTの使い方のコツとかあるのでしょうか?
答えのあるもの、調べて分かるものはあまり意味がないですね。
ChatGPTは質問者の意図を解釈して文章を返してくれます。自分の経営状態を打ち込んで、これからどうすればいいかなど聞くといくつか提案してくれます。

つるちゃん

西田(筆者)

複雑な質問にも答えてくれるんですね。質問の仕方も重要と言えるかと。
無料と有料のサービスがありますが、どんな違いがあるのでしょう。
現在、無料で使えるのが、GPT-3.5を使ったChatGPTで、有料版のChatGPT Plus(月額20ドル)ではGPT-4を利用できます。個人的感想ですが、GPT-3.5は偏差値50、GPT-4は偏差値75くらいかなと。

つるちゃん

西田(筆者)

偏差値75とはすごいですね。それをどう農業に活用できるのか聞きたいと思います。

AI、ChatGPTで農業はどう変わる

西田(筆者)

スマート農業ということでデジタル化も進んでいる農業ですが、AIやChatGPTで農業はどう変わっていくのか、つるちゃんの考えを教えてください。
人が一生に得られる知識とAIが蓄積できる知識ではAIの方が圧倒的に多いので、知識や知恵も人に教わるよりAIに聞くことになります。もちろんAIも学習することが必要なのでまだ時間はかかりますが、そんなに遠くはないと思います。いずれにしてもこれからはAIに聞く質問力が大切になってくるでしょうね。

つるちゃん

西田(筆者)

「知識ではなく知恵という経験則だけが年を重ねることの有利さ」と言っている身としてはショックですね。自然界は不確定要素が多いので、経験則からくる肌感や知恵が必要だと思います。でもChatGPTの活用で知識という膨大な情報も扱えるようになれば、経験則の部分もクリアできますね。
ただAIを農業現場に取り入れるのには課題があって、AIが状況を判断できても実際に稼働する機器の開発、いわゆるロボティクスのスピードが追いついていません。建設業や工業のような仕事には導入されても、不確定要素が多い農業への導入は難しい。中でも収穫作業は最後まで残るのではないかと思っています。

また技術的にできたとしてもコストが合わないものは開発も普及も進みません。

つるちゃん

講演風景

いろいろなところから講演依頼もあり注目されているつるちゃん

西田(筆者)

コストの問題は確かにありますね。単価の安い農産物のために高価すぎる機械を使うと、どんなに生産が優秀であってもペイできませんね。
農業でAIの導入が最初に進むのは環境制御だと思います。数値化されたものには強いですから。温度やCO2量、光や湿度から瞬時に最適解を割り出す。全自動化するにはコストもかかりますが、AIが判断したことを人が行うという世界はすぐ来ますね。

それに対応して改良、改善していくのが現場の力になってきます。実は世界中のAI科学者から日本人、日本の農家は注目されています。

Googleがオープンソースとして公開している機械学習用ソフトウェア「TensorFlow(テンソルフロー)」を使って静岡の農家がキュウリの選別機を開発したことが世界的なニュースになりました。「家族経営の小規模農家がAIを低価格で実用化している」「日本人の農家はアメージング(すごい)」などと注目を集めていましたね。

つるちゃん

AIでキュウリの選別機を開発した農家の記事はコチラ
キュウリ生産者が開発、人工知能(AI)を取り入れた自動選別装置
キュウリ生産者が開発、人工知能(AI)を取り入れた自動選別装置
キュウリの生産では多くの農作業が未だ自動化されておらず、特に大量のキュウリを選別しなければならない出荷作業は、生産者に大きな労働負担を強いています。共選場に自動選別機が導入されている産地なら、生産者は選別作業から解放さ…

西田(筆者)

そんなことがあったのですね。日本人の特性として、AIを受け入れる力があるということでしょうか。
日本では漫画やアニメでロボットに人格があって友達になるという作品も昔から多くありました。これは八百万(やおよろず)の神ということで無機質なものも尊重する文化があったからだと思います。

0から1を生み出すのは難しくても、あるものをハックして活用していく。この気質がこれからの時代に生かされていくかもしれません。

つるちゃん

西田(筆者)

人格を持ったロボット、確かに日本人にはなじみがありますね。AIにも同様に友達のように接していく。そう考えるとAIをより身近に感じることができますね。

農仙人が答えるのじゃ

西田(筆者)

実はChatGPTを全く使ったことがなかった私が初めて使ったのが、つるちゃんがChatGPTをベースに開発した「農仙人」でした。

質問したことに長文でシッカリした答えが返ってきて驚きました。つるちゃんは元々プログラミングができたのでしょうか?
私自身ずっと文系で理系は中学卒レベル。最近勉強しはじめました。プログラミング自体は支援ツールもあるのですが、根本的なことが分からないといけないということで、今は数学の勉強をしています。

つるちゃん

農仙人

つるちゃんが作った農仙人(現在サービスは休止中)

西田(筆者)

そうだったんですか。それはすごいですね。農仙人は実際どうやって作られたのでしょうか。
日本の農業の知見を集めた農業の百科事典ともいわれる「農業技術大系」や農業関係の論文などを数値化して読み込ませて1週間で作りました。こういった取り組みは珍しかったのか、ChatGPTを開発したOpenAI社の技術者からDMがありました。

つるちゃん

西田(筆者)

1週間でできたとは信じられないのですが、それも今の時代だからこそなのでしょうね。つるちゃんの努力もあったのだと思いますが、学ぶ気になればできるものなのだと勇気をもらいました。

ChatGPTの使用に関しては、自治体や大学などでも使用OKか禁止か分かれていますね。私もほとんど使っていないので未知のものに対する不安はありましたが、つるちゃんの話を聞いて怖がらず使っていくのがいいかと思いました。

次回は、現在つるちゃんが取り組んでいる、中山間地で誰もが農に取り組めるようにするためのシステム開発などについて、より具体的に聞いていきたいと思います。

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