■つるちゃんこと鶴竣之祐さんのプロフィール
1986年、兼業農家の息子として福岡県に生まれる。高校時代には1年半のオーストラリア留学を経験。大学卒業後、実家は継がず福岡市内で独立就農する。2014年、地元若手農業者と共に農業ポッドキャスト「ノウカノタネ」の配信を開始。2020年にはYouTubeチャンネル「科学的に楽しく自給自足ch」も配信開始。2022年より農メディア事業、営農事業、AI開発事業を統合してノウカノタネ株式会社を設立。ミッションは「農業の民主化」。
2021年 Spotify NEXT クリエーター賞(Spotify社)受賞
2022年 第51回日本農業賞 食の架け橋の部 奨励賞(NHK、JA全中、JA都道府県中央会)受賞
AIの農業への実際の活用
西田(筆者)
つるちゃん
西田(筆者)
最近ではパソコンのCPUやGPUといったマシンの性能が上がって分析スピードが上がり、またそれによってAIの学習も進んで、可能になってきました。
人間もまず町医者に行き、精密検査が必要な時は大病院に行く。そのように普段は農家がそれぞれ判断するけど、何かあった時には数値で分かる検査をする。それを気軽にできる時代が来るかもしれません。
つるちゃん
西田(筆者)
そしてこれも前回話したように、AIに比べて農業機械などのロボティクスは発展に時間がかかるので、圃場(ほじょう)で直接活躍するにはまだ時間はかかるかと。でもそのロボティクスが追いついてきたら大規模化が一気に加速すると思います。
日本は一つ一つの圃場が小さいことがネックになってますが、自動運転の法整備が進めば、AIトラクターを圃場から圃場へ自走させるのも難しいことではありません。そうなってきたら1人の農家で1000ヘクタール栽培するのも可能になるかもしれません。
つるちゃん
西田(筆者)
ネオ自然栽培2.0
西田(筆者)
雑草の識別自体はあと1年ぐらいでかなり精度が高いものができると思っています。ドローン開発などのハード面は個人では難しいので、ある程度までいったら企業と共同開発することになると思いますが。
つるちゃん
西田(筆者)
一方で、自分がやりたかったのは、先祖が代々やってきた条件の悪い中山間地の農地を守ることだったんだと。AIを活用すればそれが実現できると気づいて。それで借りてた農地を返納して、実家の中山間地域で農業をやろうと決意しました。そこで新規事業の融資を受けようとしたら、銀行から無理と言われました。確かに経済効率から見るとその通りだろうなと。
そんな中山間地域で農業をやる時に一番大きなネックを考えたら、それは除草ではなかろうかと思いました。でも、除草するにはどうすればいいんだろうと。そんな時にAIを活用すれば解決できるのではと思い付き、今に至ります。
つるちゃん
西田(筆者)
農業などのエッセンシャルワーク以外の業種を見てみると、先進国では全体的に何の価値も生まない空虚な労働が増えすぎているように感じます。今は自身の労働の空虚さに無自覚でいられても、今後のAI技術の発展によって、自分の仕事が実質的に何の価値も生んでいないことを強制的に自覚させられる人が増えると私は考えています。
その時に人は、実体として分かりやすく価値を生む活動を求めると思っていて、農はその選択肢の一つになりえるのではないかな?と。ただ今のままの農業では大変すぎるので、家庭菜園がものすごく楽になるソリューションを用意して、誰でも農に簡単にアクセスできる状態をつくる。それが「農業の民主化」というミッションの意味になります。
つるちゃん
西田(筆者)
AI時代の農家の役割
西田(筆者)
最初に話した植物の健康状態を診断する技術も、病気になった植物のデータがないと判断できないのですが、そのためにわざわざ病気にするのは大変だし時間もかかります。ですが、病気になった作物が農家から集まれば研究が一気に進みます。
つるちゃん
西田(筆者)
日本農業の大産地でもノウハウをクローズするというところがありますが、そうこうしているうちに海外から一気にその上を行くものが入ってくるかもしれない。クローズしているところに情報はめぐってこない時代です。
※ プログラムを誰でも自由に使用、改変、再配布などができるよう無償で一般公開すること。
つるちゃん
西田(筆者)
AIはこれからもどんどん進化していきますが、それを活用できるかどうかは人が意識の変革をできるかどうかだと思います。
つるちゃん
西田(筆者)
私は現在54歳。AI農業の波がきても、まだ普及に時間はかかるだろうし現役のうちは使うことなく逃げ切れると思ってました。でもつるちゃんから話を聞いて、今は「現役のうちに間に合ってくれてありがとう」と思えるようになりました。
自分が培ってきた栽培技術、加工技術、販売技術などをAIに残すことで広く後世の役に立てるかもしれない。新しい知恵の残し方が出てきた。そう考えるとワクワクしてきます。