ハウス全体ではなく、培土を温めることによって予想以上の効果が
「美味しいもので笑顔をつくる!」をモットーに、兵庫県小野市でイチゴやブルーベリー、サツマイモ、カボチャなどの生産・販売に取り組んでいるのが農業法人の『株式会社わさび』です。
特にイチゴが好評で、同社が運営する『chord farm(コードファーム)175』で栽培したイチゴは「ひょうご推奨ブランド」や「小野うまいもんブランド」にも認定。品質にこだわる製菓店などへの卸売り販売の他、一般向けには自社ECサイトでの販売やイチゴ狩りも行っています。
「次世代農業への取り組み」も同社の設立趣旨のひとつです。太陽光発電と農業を組み合わせたソーラーシェアリングを取り入れたり、会社化してメンバーの個性を生かしたチームで取り組む農業を実践。そのチームを束ねているのが農園長の馬本康幸さんです。
「合計約40aのハウスで、紅ほっぺ、おいCベリー、ほしうらら、スターナイト、とちおとめ等の品種を2万株ほど栽培しています。栽培方針としては、イチゴ狩りに来園された方が常に満足いただけるよう、食べ比べできるラインナップを欠かさない【安定生産】と【イチゴの食味】には徹底的にこだわっています。今はイチゴ栽培に関する論文や資料などを片っ端から読みあさり自社の農園で試行錯誤しながらイチゴ栽培に最適な環境条件を探っています」と穏やかに話す馬本さん。
『chord farm175』では、土台となる土作りに力を注ぎ、元気な株を育てることを目指すとともに、ハウス内の温度や日射量、施用するCO2濃度も生育状況に合わせて微調整しています。
冬場は外気温がマイナス4度まで下がる兵庫県小野市でのイチゴ栽培では、12月~2月の3カ月間はハウスの暖房機がフル稼働。そこに直撃したのが「燃料価格の高騰」です。
「原油高でコストが上昇するのはもちろんなのですが、暖房をケチると生育が遅れたり、品質や収量が上がらなかったりとイチゴの生産に影響があり、観光農園では顧客満足度が低下するので死活問題です」と馬本さん。燃料費の削減に向けた取り組みの中で、「ハウスの空気ではなく、土を温める」という泉州電業株式会社の『ABIL(アビル)ヒーター線』の特徴に興味を持ち、2022年定植の栽培から導入しました。
『ABIL(アビル)ヒーター線』は、農業用の電熱線で一般的なニクロム線とは異なり、電気を「赤外線」に変換する新発熱体です。発熱効率がよいステンレス箔製で、特殊素子を含浸&コーティング。熱線は柔らかなリボン状のシリコン被膜で絶縁されているので、耐水性・耐熱性に強い特長があり、土に埋めたり水に沈めたりして使うことが可能です。
『chord farm175』では、株元付近にヒーター線を這わせ、その上に5mmほど土を被せ、マルチフィルムを張ることでジワジワ温めることにしました。取り扱いも簡単で、電気工事以外は自分たちで埋設や取り外しができる点も評価。
気になる成果は、「暖房機で使用する燃料費が、前年で300万円ほどかかっていたところ、燃料代が上がっているのに本年は約70万円に抑えることができました」と馬本さん。電気代は施設全体で合算されるため比較数字が出せないものの、省エネ効果は実感しているとのこと。
「センサーが培地の温度変化を感知して自動でON-OFFする設定にしているので、温度管理は楽でした。ハウス全体を加温する従来のやり方よりも育ちにムラがなく、収穫時期が前倒しできただけでなく、高い糖度も実現できたのには驚きましたね。比較するために設置しなかった区画と比べると生育速度は1~2週間ほど早まりました。高値の時期に出荷が増やせただけでなく、1月~3月の収穫量も前年比で2.3倍に。一定した温度で培土内の微生物も元気になり、結果としてイチゴの株も強くなったのでは…とみています。葉の表面の産毛もしっかりし、病害虫に強くなったと感じます」とニッコリ。より効果の出る温度帯を模索する実験を重ねつつ、2023年定植分でも『ABIL(アビル)ヒーター線』を活用した栽培に取り組みます。
耐久性にも優れ、CO2の排出を抑えるクリーンエネルギーで農業に貢献
『ABIL(アビル)ヒーター線』は、自動車メーカーや半導体メーカーなどに「電線」を販売する泉州電業株式会社が、大手製造業から信頼される技術力を農業分野に生かしたいと開発した製品です。
「当社はSDGsを意識した商品作りを目指しています。熱効率はもちろん、農作業の環境を考慮し、水や紫外線、薬品に耐性を持つシリコン皮膜の使いやすい形状にしているのがポイントです。1度刻みの温度設定が可能で、10mの距離でもひとつの電源で均一な温度に保てるのも、使いやすさにつながっていると思います」と話すのは、泉州電業のアグリ事業担当マネージャー中井司さんです。
泉州電業のテストデータでも『ABIL(アビル)ヒーター線』を使用することで、イチゴ1株当たりの収量を58%アップさせたり、収穫時期を前倒しさせ、市場価格が高くなる12~1月の収量を増やせた点は見逃せません。また、ボイラーとの併用でボイラーの設定温度を10度から5度に下げても同等の収量をキープすることが確認されるなど、燃料費の削減効果でも注目です。
社会全体が脱炭素を目指す中、『ABIL(アビル)ヒーター線』は農業用ハウスのボイラーの稼働を減らし、CO2削減にも貢献。多くのハウス栽培農家が頭を抱える「燃料価格の高騰問題」の救世主として、導入を検討してみてはいかがでしょうか?
<取材協力>
chord farm175 https://www.chordfarm.com
〒675-1365 兵庫県小野市広渡町652
◆お問い合わせ
泉州電業株式会社
アグリ事業部(名古屋支店)
https://abilheater.com
〒452-0822 名古屋市西区中小田井4丁目185番地の5
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