両親を「格好いい」と思って就農
伊藤農園ではマスクメロンとナス、トウモロコシをハウスで栽培している。メロンは自宅の直売所で販売しており、「値段は格安」(伊藤さん)。「おいしいものをすべての人に食べてもらいたい」という両親の考えからだ。百貨店でも販売しているが、こちらは数倍の値段で売れている。
就農したのは2020年。それまでは消防士の仕事をしていた。実家を継ぐことにしたのは、顧客からの1本の電話がきっかけだ。「伊藤農園のつくったものはみんなおいしいから、何でも売ってほしい」。そんな話を聞いて、伊藤さんは「両親がすごく格好良く見えるようになった」という。

伊藤農園のナス(写真提供:伊藤雅敏)
伊藤さんには3人の子どもがいて、消防士の仕事は収入が安定していた。一方、農業は台風などで一度に大きな損害が出ることもある。「自分が継がないと、この家はどうなるのか」と就農に気持ちが傾くこともあったが、生活のことを考えると、決心がつかなかった。そんな中、顧客の一言が背中を押した。
意を決し、両親に「継がせてほしい」と伝えた。父親はまず、「甘いもんじゃないぞ」と一言。さらに「うちはマスクメロンとナスがメインだ。そこで天下をとるまでは、新しい野菜をつくるな」と念を押した。主力の品目でしっかりと技術を身につけるまで、他の農産物に手を広げないよう戒めた。

伊藤雅敏さん
秀品率が飛躍的に向上
では就農から4年目のいま、伊藤さんの栽培技術はどこまで高まったのだろうか。秀品率を通してそのことを確かめてみよう。
伊藤農園では、「一木一果(いちぼくいっか)」と呼ばれる栽培方法でメロンを育てている。