小泉進次郎農林部会長に放った一言
小田嶋さんは2020年6月にJA秋田ふるさとの組合長を退任し、農作業が中心の生活に戻った。6.5ヘクタールの水田でコメを育て、50アールの畑で葉タバコを栽培している。
筆者は長年小田嶋さんを取材してきたが、ふり返って真っ先に思い浮かべるのは「胆力の人」というイメージだ。
2016年11月2日、東京都千代田区にある自民党本部。小田嶋さんは、他の農協の組合長と一緒に農林関係議員の会合に招かれた。テーマは全国農業協同組合連合会(全農)の改革だった。
議長役を務めたのは、自民党の小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)農林部会長(当時)。小泉部会長は「全農はもっと農家の役に立つ組織に変わるべきだ」と考え、全農に改革を促していた。
その場で小田嶋さんはこう発言した。「政治家は法律や制度を作るのが仕事で、民間をいじくりまわすことは仕事ではないと(自分は)思っている」
「全農は変わるべきだ」という小泉部会長の主張に反対していたわけではない。だが改革はJAグループが自ら判断して実施すべきことであって、政治から押しつけられてやるべきことではないと考えたのだ。