大量生産と大量消費、大量廃棄の現代社会
小野さんは現在49歳。農園には田んぼや畑に加え、木製のブランコなどの遊具がある。田植えや収穫など食育に関わるイベントを開いているほか、学校に行かない子どもたちのためのフリースペースの役割も果たしている。
もともとテレビ番組の製作会社でディレクターをしていたが、環境問題への関心を深め、農業の世界に転じた。まず居酒屋チェーンの運営する農場などで働いた後、2013年にはたけんぼをオープンした。
小野さんは日本の農業をどう思っているのか。そう聞くと、まず居酒屋の農場で働いていたときのことを話してくれた。「お客さんが居酒屋でたくさん食べて飲んで、しかもたくさん残す。この仕組みをガシガシ回して、それで利益を出していた」。残った食品は廃棄の対象になる。
「野菜を作るのはすごく大変。でもその野菜がサラダなどの形で提供された後、大量にゴミになっている」。農場で野菜を育てながら、小野さんはそんなことを感じていたという。「大量生産と大量消費、大量廃棄がセットになっている。そんな世の中に生きてるということを認識することができた」
このことは、農業全般についても感じているという。「新しい野菜の品種や栽培技術、機械のおかげで生産性が上がって、生産量も増える。なのに人口は減っている」。その結果、野菜が余って値段が下がり、収益性が低下する。
「農業だけの専業で稼げる人は確かにすごいが、それができるのは一部の人」