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相続で畑が減り続ける都市農業、難題への対処法とその先にある懸念

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

相続で畑が減り続ける都市農業、難題への対処法とその先にある懸念

都市部やその近郊の農業にはさまざまなハードルがある。農地が狭いことに加え、とくに難題なのが相続が発生したときだ。宅地の資産価値が地方より格段に高いのがその理由。どう対応して営農を続けているのだろうか。

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農地を売って相続税を手当て

相続に際して起きる問題を理解するため、都心から電車で1時間弱の住宅地で代々農業を営むAさんを取材した。Aさんは現在60代半ばの専業農家。野菜の販売代金の管理を含め、家計をずっと取り仕切っていた父親が2020年に亡くなり、相続が発生した。

相続した農地は1ヘクタール強。市街化区域の生産緑地に指定されており、農業を続けている限り、相続税の納付猶予を受けることができる。Aさんは農業にやりがいを感じており、いままで通り続けたいと思っていた。

問題は家族が暮らしている土地の相続税だ。こちらは農地ではなくて宅地なので、相続税が納付猶予の対象にならない。その金額を試算してみると、2億円に達していた。これをどう払うかが課題になった。

打てる手は1つしかなかった。相続に際して農地の一部を転用し、売却することだ。生産緑地に指定された田畑は原則として転用できないが、「農業の主たる従事者」が死亡したときは、指定を解除することができる。

唯一の手段だったが、その結果、相続税の金額が跳ね上がった。生産緑地の指定を解除した農地は、相続税の納付猶予を受けることができないからだ。Aさんは「どれだけ農地を売ったらいいのか複雑な計算をした」。

1ヘクタール強の農地のうち、半分近くを売る必要があるというのが結論だった。数億円の売却益を得て、そのまま相続税に充てた。もともと2億円だった相続税を払うために、結果的に倍以上の税負担が発生していた。

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