農家や田舎暮らしに必須の刈払い機
8坪(0.26アール)ほどの小さな家庭菜園から始まったわが家の農的暮らしは、今や畑が約1反(10アール)、田んぼが約3反5畝(35アール)、さらにヤギの放牧地が5畝(5アール)ほどあり、全部合わせると5反ほどになる。
私は農業をなりわいにしているわけではないが、自給用とはいえ田畑もこれだけの面積になると、鍬(くわ)やシャベル、鎌などの農具だけで管理するのは難しい。どうしたって農業機械が必要になる。そういうわけで、わが家には次のような農業機械がある。
刈払い機、家庭用耕運機(電動とエンジンが各1台)、小型油圧ショベル、トラクター、コンバイン、田植え機、など。
今の住まいに移住して、最初に入手した農業機械は、排気量25ccのエンジン式刈払い機だ。古民家が建つ300坪(約10アール)の敷地と隣接した約5畝の耕作放棄地は、移住当初、腰の高さまで草が伸びて荒れ地のような状態だったため、それを何とかしないと暮らしが始まらなかったのである。
刈払い機は大別するとプロ用と一般用があり、大きな違いはパワーと耐久性だ。プロ用は長時間の作業やハードな使用に対応した部品が使われており、そのため一般用に比べて価格も1.5~2倍くらい高い。通常、ホームセンターに並んでいるのは一般用で、プロ用は主に農機具店で取り扱われているほか、ネットでも入手できる。
私が愛用している刈払い機は一般用だが、入手してから10年以上一度の故障もなく、今も庭や畑、田んぼのあぜの草刈りにフル稼働している。
より広い面積の草を刈るならパワーと耐久性のあるプロ用がいいだろうし、斜面で使用するケースが多いなら、肩掛け式ではなく、背負い式が作業性に優れる。
1反程度の畑なら家庭用耕運機で対応可能
次にわが家に来た農業機械は、電源コード式の家庭用耕運機である。知り合いから譲ってもらったもので、メーカーの推奨面積は30坪(約1アール)まで。わが家の畑は当時その5倍の150坪あったため力不足だったが、それまで鍬やシャベルで耕していたので、小さな耕運機とはいえ大変重宝したものである。
とはいえ、スペックをはるかに超える面積の耕運には限界があり、そこそこパワーのあるエンジン式の耕運機は、どうしても欲しかった。それで、入手したのが排気量180ccのリアロータリー式耕運機である。これによってわが家の農作業は劇的に楽になった。鍬で耕していたときに比べると、土もずっと柔らかく耕すことができ、堆肥(たいひ)や肥料もまんべんなくすき込める。耕運機を使い始めてから作物がよく育つように思えるのは、きっと気のせいではないだろう。この耕運機は、管理機のように畝立てやマルチ張りなど多様な作業はできない。単純に土を耕すだけだが、それで十分である。
現在、わが家の畑は約1反あるが、この耕うん機1台で十分耕せる。その後、田んぼをやるためにトラクターを入手したが、畑では使っていない。なぜなら一気に畑全面を耕すことはないからだ。植え付けごとに、長さ約12メートルの畝を2~3本耕すだけなので、小回りが利く家庭用耕運機のほうが使いやすいのだ。1反の畑があれば、家族の野菜はほぼ自給できる。そのために必要な機械は、刈払い機と家庭用耕運機くらいなのだ。
農家の土木に活躍する油圧ショベル
荒れ地のようだったこの土地を開拓し、庭や畑、小屋などをちょっとずつ作っていく中で、いつからか油圧ショベルの購入を考えるようになった。
耕作放棄地を鍬とシャベルで開墾して、土を掘ったり運んだりすることの大変さを知ったし、間伐材の丸太や解体現場で出た石などを譲ってもらうこともあり、それらを移動するにも人力ではどうにもならない。
とはいえ、油圧ショベルは小型モデルでも新車だと軽く200万円を超える。刈払い機や家庭用耕運機のように簡単に手が出るものではない。そもそもあまりお金に余裕がない半農生活者なので、最初から新車を買うつもりはないのだが、中古のいわゆるBランクでさえ100万円前後するのだ。今の暮らしを考えると私には出せない金額である。そうなると買えるのは年式が古く、不具合があってもノークレーム、ノーリターンの最低クラスということになる。
ちなみに油圧ショベルは一般的に機体の重量やバケット(アームの先についている土などを掘削する容器)の容量で規格が説明され、ミニショベルと呼ばれるのは機体重量6トン未満、バケット容量0.25立方メートル未満のものを言う。ミニと言っても6トンはデカい。農家の土木作業によく使われるのは主に3トン以下で、わが家のような半農生活であれば1トン前後が使いやすいと思う。狭い庭でも小回りが利くし、置き場にもそれほど広いスペースを必要としないからだ。
そういうわけで私が入手したのは30~40年前のクラシックマシン。0.5トンクラスである。こんな古いポンコツでも価格は30万円もした。中古農機具店やネットオークションの相場は30万~50万円なので、ほぼ底値と言えるだろう。これはつまり、動かなくならない限り、手放すときは買ったときとほぼ同じ価格で売れるということでもある。
このミニショベルはわが家の開拓に大活躍した。畑を広げるために約5畝のササやぶを開墾したのだが、竹類は地上部を刈り取っただけではすぐに再生してしまうため、根を掘り上げなくてはいけない。これは油圧ショベルがないとできない仕事だ。排水の溝切りや水道工事、土留めの石積み、整地、小屋の基礎工事、さらにゴボウやナガイモの収穫にも役立つ。人力では投げ出したくなるような肉体労働を難なくこなしてくれる。このミニショベルがなければ、わが家の開拓は今の半分も進んでいなかったと思う。
もちろん、ポンコツなりの不具合も多々発生した。入手して早々にラジエーターから水漏れしていることに気づいて交換。車輪のベアリングもいかれてガタガタ。クローラーがすぐに外れてしまうので、これも交換。シリンダーのオイルシールの劣化による油漏れやエンジンの噴射ポンプからの燃料漏れも古いモデルでは避けて通れない。
こうしたトラブルは部品を手に入れて、できる限り自分で直す。安価なポンコツ車は遅かれ早かれ何かしらの問題が出る。そもそも消耗品はすり減っているし、気密性を高めるためのシールやパッキンは劣化してオイル漏れしている場合がほとんどだ。そういうリスクを受け入れられなければ、中古でもちょっとお金を出してAランク、もしくはBランクを入手したほうがいいだろう。
半農生活的トラクターの選び方
その後、田んぼをやるようになって、必要になったのがトラクターとコンバインと田植え機だ。求めたのはもちろん中古である。
トラクター選びで最初に考えたいのは馬力である。私のように田畑が1町歩(1ヘクタール)にも満たない半農生活者や小さな農家であれば、25馬力程度あれば十分だろう。私にとっては価格が安いことも重要で、ネットオークションや近くの中古農機具店で底値を調べるとだいたい馬力×1万円くらいであるのがわかった。当然、この価格で手に入るのは先述したミニショベルと同じクラシックマシンということになる。で、近所の中古農機具店で買ったのが15馬力のトラクター。価格は底値を下回る12万円である。
トラクターはアタッチメントを交換することで、さまざまな作業に対応できるのが特徴だが、そのリンク機構には主に2点リンクと3点リンクという2つのタイプがある。主流は3点リンクで、2点リンクは古いモデルや15馬力以下の小型モデルに採用されている。2点リンクはアタッチメントが限られるので、いろいろな作業に使うのであれば迷わず3点リンクを選ぶべきだが(3点リンクにもいくつか種類がある)、私のトラクターは2点リンクである。それも安かった理由だと思うが、耕運以外に使う予定はないので今のところ問題はない。ちなみに田んぼの代かきはハロー(代かき専用のアタッチメント)ではなく、トラクターで丸太を引いて、その重さで地ならししている。
当然、このトラクターも古いなりにいたるところにオイルのにじみが見られるし、ロータリーの爪も摩耗して減っている。ただ、使うのは年に数回の田んぼの耕運だけなので、今のところ直したり、部品を交換したりするほどではなくそのままにしている。
ひとつ大きな不具合が出たのはウオーターポンプ(エンジンの冷却水を循環させるための部品)の故障とラジエーターホースの破損だ。それに気づかず作業をしてしまったのだ。結果、オーバーヒートさせてしまい、ヘッド抜けという重症的症状に。ヘッド抜けとは、オーバーヒートなどが原因でエンジンのヘッドガスケットという部品が破損してしまうことだ。修理費がそれなりにかかってしまい、エンジンへの後遺症も心配される事案である。
こうしたトラブルは、部品さえ手に入れば大抵はなんとかなるのだが、古い農機具の場合はすでに部品がないこともある。そういう場合、ネットオークションで探すか、町工場などにオーダーして対応する部品を作ってもらわなくてはけない。今回のトラクターの故障でも、メーカーに部品を注文すると「最後の1つでしたよ」と言われ、ヒヤリとすると同時にホッとしたものである。
コンバインと田植え機も古いモデルだが、これらは今のところ大きなトラブルはない。
そういうわけで、わが家の農機具はとことんポンコツなのだが、機械いじりは嫌いではない。古い機械を自分で直しながら使っていくのも半農生活の楽しみなのだ。