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持続可能な農業を形にした「パープルバウム」がついに発売 開発者が裏話を語り尽くす!

持続可能な農業を形にした「パープルバウム」がついに発売 開発者が裏話を語り尽くす!

「ありそうでなかった!」と開発者が語る6次化商品、ブドウのバウムクーヘンが完成しました。味や品質には問題がないものの、着色不良や傷がついてしまったブドウを農家から買い取り、米粉100% で作ったグルテンフリーのバウムクーヘンです。味や見た目、商品名にもこだわり、同時に農業の課題解消にも貢献しようと開発された商品。思いと工夫に満ちた開発工程を、共同開発者が語りました。

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【座談会参加者】

■村上信五さん(ノウタス株式会社 パープルM事業管掌VP)
■齋藤秀一さん(株式会社ココトモファーム 代表取締役)
■齋藤ゆみさん(株式会社ココトモファーム 専務取締役)
■丸山桂佑さん(アグベル株式会社 代表取締役)
■横山拓哉(株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長)

【パープルMとは】

「ぶどうをもっと楽しく、もっとおいしく、もっと身近に、もっと無駄なく」という願いを込めた作られたノウタスのプロジェクト。村上信五さんがノウタスに兼業社員として入社し、ヴァイスプレジデントという立場でプロジェクトに参加しています。

【ココトモファームについて】

自家製米粉で作った米粉100% グルテンフリーのバウムクーヘンを製造販売。『誰ひとり取り残さない居場所を創る 』をテーマに、農業と障害者福祉 を連携することで、持続可能なビジネスモデルを実現しています。

【アグベルについて】

山梨県で60年以上続くぶどう農家。新しいビジネスモデルの設計や海外輸出、若手生産者の育成、離農や耕作放棄地を減らす取り組みなど、多岐にわたる挑戦をおこなっています。

■コラボレーションの全体図

コラボのきっかけは「共通の理念」

横山:今回のコラボは、まずマイナビ農業から、ノウタスさんとココトモファームさんそれぞれに「何かできないか?」とお話を投げかけたところから始まりました。すぐにノウタスの髙橋明久(たかはし・あきひさ)代表から「ブドウのロス品を使ってバウムクーヘンにしたらいいのでは」とお返事をもらいました。村上さんは、最初にこのお話を聞いたときの印象はいかがでしたか?

村上:まずココトモファームさんのホームページを見させてもらって、興味があるので一度お話がしたいと髙橋に話しました。

横山:特にどこに興味を持ちましたか?

村上:理念です。ココトモファームさんの理念。

齋藤:それ、一番うれしいですね。

村上:僕と髙橋がパープルMを立ち上げたときに思っていたものと通ずるものが多いなあと。あと、商品を作る以上、「量」を担保する部分も大事ですけれど、「質」が担保されていないといけない。その点、ココトモファームさんは丁寧になされていると感じました。

齋藤:ありがとうございます。

横山:齋藤さんは、この話が出てきた時の印象はいかがでしたか?

齋藤:当社でもパープルMの取り組みを見させてもらって。やっぱりパープルMの理念がすごく素敵だと思いました。本当に今、日本の農家って大変なんですよね。それをなんとかしようとするためのアイデアが斬新で。オンラインブドウ狩りとか。

村上:変ですよね。

一同:(笑)。

齋藤:既存の考え方から、一歩踏み出す挑戦がすごくかっこいいなと思って、我々の持っていることが何かのお役に立てれば いいなと思いました。

(写真左から)ココトモファーム 齋藤ゆみさん、ココトモファーム 齋藤秀一さん、ノウタス 村上信五さん、マイナビ 横山拓哉

試作のたびにおいしくなる。期待を超える仕上がりに!

横山:これまでブドウのバウムクーヘンってあまり聞かなかったと思うんです。

村上:そうなんですよ。我ながら「あれ? これ盲点じゃないか」と思いましたね。

齋藤:本当に、全然(類似の商品が)ないんです。実際、作るのがめちゃめちゃ難しいんですよ。

齋藤(ゆ):アグベルの丸山さんからブドウを頂いてピューレにした時、「これは絶対においしくできる!」と思ったのですが、加熱すると色が変わってしまって。最初の試作では緑っぽくなってしまいました。「パープルMなのに紫じゃない…。これは大変だぞ」と。
香料や合成着色料を使えば 、簡単にブドウ色になるのですが、駄菓子っぽい味になってしまうというか。

村上:ブドウのお菓子はたくさんあって、僕もいろいろ食べました。駄菓子っぽいものは、それはそれで食べやすい。ですけど「今回僕らが求める加工のあり方って、ちょっと違うよな」と。

齋藤(ゆ):皆さんに試食をしてもらっては何回も作り直しました。結果、3倍濃縮したものを使うことが突破口になりましたね。

丸山:3倍濃縮の原料を届けることは、私たちにしても結構新しいチャレンジでした。大変でしたけれど、いい形になりました。

村上:もう最高の着地点にたどりつけた。

齋藤:グルテンフリーですしね。

村上:そこも大きかった! アレルギーをお持ちの方も楽しめるための選択肢というか、手を伸ばしやすい商品の一つになると思うので。

丸山:うちの子どもはブドウの加工品って食べないんですよ。たぶん、本当の味がよく分かっているので。でも今回のバウムクーヘンは、すごくおいしくいただきました。

アグベルの丸山さんはWEB会議で座談会に参加

横山:今回、食感が違う「ソフト」タイプと「ハード」タイプの2種類を作りましたが、皆さんはどっち派ですか? 私はソフト派です!

齋藤:ソフトはすごい進化しましたよね。最初は圧倒的にハードがおいしかったですけど、ソフトが後から追い上げてきた。

村上:僕、完全ハード派やったんですよ。でも自分の感覚って分かりませんね。周りのスタッフにも食べてもらったらみんなソフト派で(涙)。「ソフト一本に絞ろうか」という話も出ましたよね。
もう「おいしい」ことは前提で、さらに試作のたびにおいしくなる。一定のラインを超えたらプロフェッショナルに委ねなければなと思いました。それは音楽やプロモーションビデオ作りに近い気がします。でも僕はやっぱりハード派(笑)。

横山:折れない“ハード感”を感じました(笑)。

村上:というのは、やっぱり「バウムクーヘンはやわらかいもの」という世間の認知があるじゃないですか。でも「バウムクーヘン“なのに”この食感」「バウムクーヘン“なのに”ブドウを感じられる」という、二つの“なのに”がよいなと僕は思ってます。

齋藤:ぜひ、ギフトボックスで食べ比べてもらいたいです。それぞれ全然違いますもんね。

異なる食感を楽しめる2種類のバウムクーヘン。ハードバウム(写真左)、ソフトバウム(写真右)

横山:丸山さんは、どっち派でした?

丸山:僕も家族も会社もみんなハードでした。どっちも、もちろんおいしいんですけど。

村上:こういう話題で盛り上がれることも、なかなかないと思うんで、いろんなコミュニティで楽しんでいただきたいです。

齋藤:今回は、さわやかな香りやフルーティーな味わいが特徴の「ピオーネ」ですが、「巨峰」や「シャインマスカット」で作るとまた違うはずです。いろんなブドウで作れるといいと思います。

農業課題の解消に向けて

横山:丸山さん、農家の立場として今回の取り組みに対してどのように感じましたか。

丸山:日本の農業は、気候変動などもあって本当に毎年、過酷な状況になっています。農作物は、大きさや形で等級ランクがついて、ランクが低いと味に問題がなくても、大幅に価格が下がってしまう。それがこうして商品の付加価値となって世の中に出るのは、とてもうれしいことです。

齋藤:当社は農業と障害者福祉を連携した「誰ひとり取り残さない居場所創り」をビジョン に掲げています。そこで大事なのは仕事を通して「自分が役に立っている」「自分が必要とされている」という気持ちになれること。それがあって、人は初めて自分の居場所を感じられるんです 。そのために当社は一生懸命、お客様との接点や社会とつながる場をつくっています。今回のバウムクーヘンは、そういう意味でも本当に皆のやりがいになるんですよ。

村上:そういった好循環の一つとして携われているのは、めちゃめちゃうれしいです。僕も、ますますやりがいを感じます。

ネーミング裏話

横山:パープルMでは、商品名をラジオ番組「おとなりの農家さん」(文化放送) で、リスナーから募っていましたよね。

村上:ここにいる皆さんとオンライン会議を何度もやりながら、本当に皆さんがクオリティを追求されていることに感謝しかなかった。それに負けないくらいのネーミングやパッケージにするために、我々に何ができるかをすごく考えました。ラジオではリスナーからの反響も大きくて、たくさんアイデアをいただきました。商品名に入れた「月」というキーワードはリスナーからのものです。

横山:確かに「月」というキーワードからアイデアが広がりましたよね。

村上:そうです、そうです。

齋藤:最初は「月夜」で、それが「月明かり」になって。最終的には、ひらがなにして、「パープルバウム ハード 月あかりの田園」と「パープルバウム ソフト 朝やけの田園」の二つに。米粉が作られる田園に、朝やけのようなぶどうの優しい紫色が広がる情景、月あかりのようなぶどうの深い紫色が広がる情景という世界観のイメージが広がりました。

商品を通じて農業のことをもっと知ってもらえれば

横山:最後に今回のコラボを通じて、皆さんが今後、農業の課題に対して取り組んでいきたいことなどを聞かせてください。

丸山:先ほども話したとおり、今、生産の現場は非常に過酷です。その中で新たな販路の出口ができることで、私たちも今よりもっと自信を持って生産に注力できると思います。やはり生で食べるのは旬が限られますので、加工品によって裾野も広がる。今回の取り組みはそのようなシナジーがあったと思っています。今後もいいものを作りながら、いろいろな方と伴走して、農業界をけん引できたらなと思っています。

齋藤:まずこの商品を知ってもらうことが大事だと思っています。パープルバウムは、原料もネーミングも開発のストーリーも全部含めて、農家さんの思いがこもった商品。これが広まることで「農業のことをもっと知ろう」というきっかけになったらと思います。

横山:マイナビ農業としても、今回の取り組みは非常にありがたいものでした。マイナビ農業はウェブサイトから始まり、「もっと生産者さんの役に立ちたい」という強い思いでこれまでも動いてきました。その中で、持続可能な農業、農福連携、グルテンフリーなど……。今回、いろいろなパズルのピースが組み合わさり「パープルバウム」という形になりました。多くの方のご支援あっての結果であり、マイナビ農業だからできた一つの大きな企画だと信じています。この取り組みはもちろん、今後の新しい取り組みも含めて、もっと農家がハッピーになれることをマイナビ農業として広げていきたいです。

村上:この取り組みが「いいことをしてるでしょ?」的なものでなく、農業の中で特別ではない一つの形になってほしいと思っています。課題って、一つ解決すれば、また新しいものが出てくる。丸山さんのおっしゃった通り、農業は気候という人知の及ばないものにも対処していかなければならない。そのときに、マイナビ農業さんのように新しい取り組みも含めて、アイデアを出して、対処の選択肢を増やしていく。僕はパープルMを立ち上げて約1年になりましたが、ぜひ長く広くこのプロジェクトを続けていきたいと思っています。

(編集協力:三坂輝プロダクション)

商品の予約・発売情報


「ぶどうの日」である2024年8月23日(金)より2024年9月22日(日)の期間で、ココトモファームのオンラインショップにて先行予約の受け付けを開始いたします。
2024年9月23日(月・祝)よりココトモファームの一部店頭※1 でも発売いたします。
※1 詳細については、ココトモファームのSNSや店頭ポスターにてお知らせいたします。

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