政権交代でコメ政策が激変
農政はときに不連続な形で変わることがある。過去20年余りのコメ政策や農協改革を振り返ってみると、そのことを確認できる。
今世紀に入ってまず注目を集めたのが、農林水産省が2002年にまとめた「米政策大綱」だ。政策支援を一定以上の規模の担い手農家に絞ることを提起。行政に代わり、農協を軸に生産調整を進める仕組みに移行する方針を示した。
自民党政権はこの内容を少しずつ実行に移していった。2007年度に「品目横断的経営安定対策」で都府県で4ヘクタール、北海道で10ヘクタール以上の認定農業者に支援を集中するルールを導入したのはその一つ。担い手政策の純化を進めた。
だがその直後に激震が走る。稲作農家に広く補助金を出す「戸別所得補償制度」を掲げた民主党が、同年の参院選で歴史的な大勝をとげたのだ。その勢いのまま2009年の衆院選でも勝利し、単独過半数の議席を獲得した。
政権の座に着いた民主党はただちに戸別所得補償制度を導入した。10アール当たり1万5000円の補助金を、生産調整に協力した稲作農家に出すのが制度の柱。だが民主党はわずか3年で政権から転落した。
政権に返り咲いた自民党は、野党時代に戸別所得補償を「補助金のばらまき」と批判していた手前もあり、廃止を決定。代わりに飼料用米の補助金を大幅に拡充することで、稲作農家の支持を取りつけようと努めた。
官邸主導か農水省中心かも影響
ここまで二度の政権交代をきっかけにした農政の変化を見てきた。だが2012年に復帰してからいまも続く自民党政権のもとでも、農政は大きく変化した。官邸と農水省のどちらが主導するかで焦点が変わる。