日本の原風景が広がる奥会津の玄関口「柳津町」とは

秋の福満虚空藏菩薩圓藏寺
【柳津町の基本情報】
・面積:175.82平方キロメートル
・人口2,976人(令和5年8月1日現在)
柳津町の歴史
会津地方の西部に位置する柳津町は、 豊かな森や山々、只見川や伊南川が織りなす景観が美しい奥会津の玄関口に位置する町です。1200年の歴史を誇る福満虚空藏菩薩圓藏寺(ふくまんこくぞうぼさつえんぞうじ)を中心に栄えた柳津町は、七日堂裸まいりや稚児行列、おこもりなどの伝統行事が古くから行われてきました。また、門前町であったことから古くは多くの宿坊軒を連ねていたことで知られる同町。現在は姿を変え、柳津温泉街として発展。訪れる人を魅了しています。
ゆらゆらと風に揺れる首(こうべ)が愛らしい張子の郷土玩具「赤べこ」は、実は柳津が伝説発祥の地。厄除けのお守りや幸福を呼ぶ縁起物として、土産物としても親しまれています。
昼夜の寒暖差が育む高品質な農産物
豪雪地帯のため、春先に雪解け水として流れ出る水資源が豊富な柳津町では、自然や水資源に恵まれた環境を生かし、米や野菜、カスミソウなどの農業が盛んに行われています。町内で栽培される米は、豊かな水ときれいな空気、昼夜の寒暖差などの影響で、甘くふっくらとした食感、強い香りが特徴です。
近隣都市へのアクセスもしやすく住みやすい環境
会津若松市までは車で30~40分ほど、郡山市や福島空港までは高速道路で約1時間30分で行くことのできる柳津町はアクセスに恵まれた立地です。
充実の子育て支援
近年、移住者が増加傾向にある柳津町。その背景にあるのが充実の子育て支援です。柳津町は、産前から高校卒業までさまざまな子育て支援制度を整備しています。
【主な制度】
制度名 | 概要 |
---|---|
妊婦一般健康診査事業 | 産前15回、産後2回の妊産婦健診が無料 新生児聴覚検査、1か月児健診の健診費用を助成 |
子ども医療費助成 | 18歳以下の子どもの医療費自己負担分を助成 |
頑張れ子育て応援金(新生児出産時) | 第1子:10万円、第2子:20万円、第3子以降:30万円を、現金と商品券で半額ずつ支給 |
頑張れ子育て応援金(小中学校入学時) | 小学校に入学した時:3万円(商品券)、中学校に入学した時:5万円(商品券)をそれぞれ支給 |
保育料軽減事業 | 国の政策である3~5才児保育料無料に併せ、町独自の取組として0~2歳児の保育料も無料 |
学校給食費無償化事業 | 町内小中学校の給食費を無償化 |
(参照):柳津町(令和6年度 柳津町の助成金及び補助金交付金等一覧表)
豊かな自然と伝統を守りながら、住みやすい環境や制度を整備している柳津町に、農業の可能性を見い出した人たちがいます。それぞれの現在地から、その魅力、やりがいなどをひも解いてみましょう。
会社員から農家へ。地域の宝「昭和かすみ草」を守り続けたい

柳津町でカスミソウ農家を営む栗村太朗さん
隣接する昭和村を中心に柳津町・三島町・金山町のJA会津よつばかすみ草部会に所属する生産者が栽培するカスミソウを「昭和かすみ草」と呼びます(※2023年7月には農林水産省の地理的表示(GI)保護制度の対象として登録)。豪雪地帯の特徴を生かし、雪室(ゆきむろ)と呼ばれる貯蔵施設で夏でも鮮度を保って全国の市場に出荷される昭和かすみ草は花が大きく、日持ちが良いのが特徴です。
会津若松市出身の栗村太朗(くりむら・たろう)さんは大学卒業後、20年以上過ごした東京から2022年にUターン。会社員からカスミソウ農家に転身しました。
「高齢の両親と暮らすことを目的にUターンを決意した私は、昔から興味があった農業で生計を立てたいと考えるようになりました。情報収集をしているうちに昭和かすみ草に出会い、柳津町が新規就農者を募集してることを知り、就農を決意しました」
と、話す栗村さんは現在、6棟のハウスで約4千株のカスミソウを栽培しています。独立までの半年間は農業研修で基礎を学んだそうです。
「非農家出身の私にとって、農業研修はすべてが新鮮。とても貴重な体験になりました。研修後は町内のベテラン農家のもとで昭和かすみ草の栽培を学び、独立に向けた準備を進めました」

初年度から目標収益をクリアすることに成功した栗村さんですが、独立当初は研修時とのギャップに苦労したと言葉を続けます。
「研修期間中は習得したことが日に日に増え、とにかく楽しかったのですが、いざ、独立をすると教わった通りにやっているのにうまくいかないことも。自然相手の農業に正解はなく、創意工夫が必要なことを身をもって実感。独立就農はいきなり社長になるようなもの。当たり前のことですがすべての裁量を持って決定する必要があります。経営面も含め、大変なこともありますが、その分やりがいは会社員時代とは比べものにならないほど大きいと感じています」
現在、家族が住む東京と柳津町の2拠点生活を送る栗村さん。地域の宝である昭和かすみ草を未来につなげることを目指し、より美しく咲かせるために、品質向上に力を注いでいます。
新規就農成功のカギは、就農までの準備

昭和かすみ草の魅力を伝えることで、東日本大震災の福島第一原子力発電所事故によって傷ついた福島県の復興に尽力したいと語る栗村さん。新規就農を成功させるためには、準備が最も重要とアドバイスを送ります。
「まず、一番大切なのはお金です。国の就農開始資金や経営開始資金など、国の交付金制度もありますが、研修期間中は無収入になるので、ある程度の貯蓄は必要不可欠。また、ほ場や住まいなどもこの間に決める必要があります。柳津町は新規就農に向けたアドバイスやサポートが手厚いので、なんでも相談できる安心感があります。ひとりで悩まず、どんな些細なことも相談することで、不安を払拭することができるでしょう」
と、エールを送る栗村さんは規模を1万株まで増やし、管理から出荷まで自分でしっかり回せるようにすることを目標に掲げています。
「柳津町、そして近隣市町村のカスミソウ農家のみなさんと共に、昭和かすみ草の魅力を伝えることが私たち新規就農者の使命だと思っています。その仲間が増えることが、1番の楽しみです」
夫婦で目指す6次産業化と地域農業の発展

AT field合同会社を夫婦で営む田﨑敦さんと愛さん
約25ヘクタールの広大なほ場で水稲栽培を手掛ける田﨑敦(たさき・あつし)さんは、柳津町の出身。約10年間、東京でサービス業に従事したのち、家業の農業を継ぐためにUターン就農をしました。

現在は米のほか、ソバ、小麦を栽培する田﨑さんは令和6年9月に家業を法人化。「AT field合同会社」の代表を務めています。
「実家に戻るときは農家を継ぐときと考えていました。30歳という節目に新規就農しましたが、帰省した2年後に父が他界。現在は妻と2人で会社を経営しています」
会津坂下町出身の妻・田﨑・愛(たさき・あい)さんはドイツでパン職人として働いた経歴の持ち主。法人化した背景には事業としてパンの製造・販売を行いたい想いがありました。

地元で採れたおいしい素材で作る体にやさしいパンを製造
「農業とパンの製造は基本的に分業化となっているのが当社の特徴です。販売するパンやお菓子のこだわりは、できるだけ福島産、東北産の小麦にこだわること。自家製小麦のほか、野菜や果物も地元の農家さんが作ったものを取り入れています」
と、話す愛さんは、自宅に隣接する車庫を改装し、工房兼店舗の運営責任者として活躍。ドイツ仕込みで作る国産小麦のパンの酵母は、敦さんが作る米を使った天然酵母を使用。

農業の6次産業化に取り組んでいます。
「農作業は収穫時にパートさんを雇う以外は基本的に1人でやっています。確かに忙しさはありますが、雇われることで感じるストレスは一切なく、それがやりがいにつながっています。やることすべてが自己責任の農業は、休もうと思えば休めるし、日々の管理も自分で決めることができますが、やりきったときの達成感こそが、農業の醍醐味と感じる日々です」
と、農業の魅力を語る敦さんの目標は、会社として地域に頼られる存在になること。共に会社を盛り立て、ゆくゆくは継承する仲間を雇いたいと考えているそうです。

自宅の敷地内にある車庫を改装した工房兼店舗「シャコ・デ・パン」
自然の中で子どもがのびのび育つ柳津町

東京・ドイツとそれぞれの都会暮らしを体験してきた田﨑夫妻ですが、柳津町での暮らしに不満はまったくないと話してくださいました。
「産前から高校卒業までの一貫した子育て支援体制がある柳津町は、子育てに関する不安は一切ありません。医療費や給食の無償化を東京の友人に伝えると、うらやましいと言われます(笑)また、自然を満喫しながらも、買い物など普段の生活に支障がないのも柳津の良いところ。経済的な不安が少なく、子どもをのびのびと育てられることにとても満足しています」(愛さん)
現在、2人のお子さんを育てる田﨑夫妻。今後は経営のさらなる安定と、自家製小麦を使った6次産業化への強化が目標です。
「法人化1年の昨年は、1年を通して休みがなかったので、家のことは妻に任せきりでした。法人化したからには会社としてやるべきことをしっかりやることが使命。その1つが雇用だと思っています。やがては事業を継承できるような若手を育てていくことも今後の楽しみです」
と、笑顔で話す敦さん。取材に訪れた1月下旬。奥会津らしい冬景色の中で見た夫妻のあたたかな笑顔からは、充実した日々をうかがうことができました。
利便性と自然環境のバランスに優れた柳津で農業を始めよう!
農業で人と人をつなぎ、町のさらなる発展を目指す柳津町では現在、新規就農者を募集しています。町内で就農・移住を希望する方は、柳津町役場の各担当者が相談に応じ、各種交付金の手続きや研修先とのマッチングなど、各機関が連携したサポートを実施しています。
「柳津町は子育て支援が充実しています。近隣市町村へのアクセスもしやすく、自然とのバランスが取れた暮らしやすい町です。興味のある方はぜひ一度、柳津町にお越しください。町民一同、皆さんの挑戦をサポートします」
と、メッセージを送る柳津町役場地域振興課農林振興係の秋津栞(あきつ・しおり)さん。冬場に積もった雪が春先に雪解け水として流れ出し、豊富な水資源として豊かな米や野菜を育む柳津町なら、自分らしい農業ライフ・生き方がきっと見つかることでしょう。
お問い合わせ
―福島県柳津町 赤べこ伝説発祥の地―
柳津町役場 地域振興課 農林振興係
〒969-7201 福島県河沼郡柳津町大字柳津字下平乙234
TEL:0241-42-2116