単価は1キロ2万円!?
ブドウマニアの筆者は、日本国内はもとより、海外のブドウについても定期的に情報収集しています。そこで先日、このようなニュースを目にしました。
| ブドウの木から、愛を込めて――メリッサの限定新商品「レッドハートKグレープ」が、ホリデーシーズンに合わせてアメリカで初登場(引用:The Grape Reporter) |
韓国産のマイハートが昨冬初めてアメリカに上陸し、クリスマスシーズンに1ポンド(約454グラム)あたり55ドルから60ドルという超高値で売られていたというニュースです。
1ドル=158.5円として、例えば600グラムの大きさであれば1万1520円~1万2568円になります。1キロに直すとだいたい2万円前後になりますね。 日本で販売されているブドウではなかなか見ない価格帯です。

レッドハートKグレープの写真 ※引用:The Grape Reporter
このニュースによると、このブドウを取り扱っているのはアメリカのメリッサ社。1984年に創業された、アメリカの大手青果販売業者です。メリッサ社が専売で扱うレッドハートKグレープは、アメリカのブドウシーズンが終わりに近づくクリスマスシーズンに高級フルーツギフトとして出しているようです。この戦略は、箱詰めのフルーツが文化的に重要な意味を持ち続ける、アジアの贈答習慣を反映しているといえそうです。
海外へのこういう売り込み方は韓国が得意とするところで、日本も見習わなければいけないなぁと感じます。
マイハートの食味
マイハートは志村葡萄研究所がシャインマスカット×ウインクの交配で生み出した品種。超高級ブドウとして人気の「富士の輝」の兄弟品種です。

マイハートの房
種なしで、皮はやや厚いですが、そこまで気になりません。シャインマスカットを皮ごと食べる人なら、問題なく皮ごと食べられます。
食感がよく、ややムチッとした食感で歯ごたえがあります。甘みがしっかり乗るので、どなたでもおいしく食べられるブドウだと思います。
一番の魅力は特徴的な粒の形で、縦に切るとハートの形をしています。
農家に聞くマイハートの評価
昨年、山梨県果樹園芸会で「シャインマスカットの次にくるブドウ」というタイトルで講演をさせていただいた際に、いくつかの品種とともにこの「マイハート」を挙げたところ、講演後に知り合いの農家さんに「いやぁ、マイハートはないよね」と言われたことがありました。
この品種ほど、農家と消費者の評価が乖離している品種はないのでは……というのが個人的な感想です。
では、農家はなぜこのマイハートを評価しないのか。何人かの農家さんに話を聞いたところ、問題として挙げられたのは
- 晩生品種で、山梨県でも収穫できるのは10月以降。他の品種と時期が合わない
- 短梢栽培では花がつきづらく、他品種と比べて収量が低い
- 摘心の管理が大変
- 粒張りがしない
- シャインマスカットより耐病性が弱い
- 着色不良
といったところでした。「同じ手間をかけるのなら、より大粒で、高値で売れる富士の輝を作る」といった意見も聞かれました。
個人的なマイハートの評価
ただ、個人的にはこの品種は売り方次第で大きく化けると思っています。
日持ちする品種で、晩生だからこそ、クリスマスにも売れるし、ケーキ、パフェにも使えます。場合によっては粒売りもできるでしょう。特徴的な形によって付加価値がつけられるし、富士の輝より粒が小さいので、房単価が抑えられ、小売店では売りやすいはず。個人的にはかなり評価の高い品種です。

日本の売り場で並ぶマイハート
じつは日本でも、筆者が住む千葉県のイオンでは10月末~11月にまとまった量を仕入れて、売り場を作って販売していることもあります。イオンの仕入れは全国で行うものと、県単位で行うものが別だという話も聞いているので、他県でも仕入れているのかはわかりませんが……。
個人的には、富士の輝よりもマイハートのほうが有望ではないかと思っています。理由としては、
- 富士の輝は今後さらに量が増えて、価格維持が難しい可能性があること
- 「富士の輝クラスの価格帯のブドウを買える人たち」という客層が限られていること
の2点です。
富士の輝はいま大人気で、苗木も大量に売れていると聞いていますが、例えば数年後、出回る量が10倍になったとして、それだけの客層がいるのかはかなり疑問視しています。
実際、あの金額のブドウをシーズン1回でも買える人は、東京でもごく少数だと思います。超ジャンボブドウとして海外に輸出できるならともかく、これから植えて国内で売るとなると、かなり厳しい戦いになるのではないかと考えます。
反面、パフェやかき氷などは高価格化しており、映えるスイーツという「コト消費」の要素もあって、客層はどんどん拡大しており、一定の支持を得ています。果物業界で働く友人も「5000円の果物は売れないけど、5000円のパフェは売れるんだよね」とこぼしていました。
もちろん、このブームが永遠に続くかと言われるとわからないんですが、千疋屋総本店や新宿高野、横浜水信などの高級果専店が、現在スイーツに大きな力を入れていることを考えると、高級くだものブームが来る可能性よりは、くだものスイーツブームが続く可能性のほうが高そうにも思えます。
パフェやかき氷に映えるマイハートの評価は個人的にはかなり高く、売りやすい品種ではないかと考えています。
ロシアでも注目!?
韓国やアメリカで注目されているマイハートですが、じつはその他の国でも注目されています。ロシアのヤ・イ・ポタペンコ記念全ロシア葡萄栽培・ワイン醸造研究所でブドウの育種を担当しており、苗木商としても活動しているスヴェトラーナ・クラソヒナ博士は、マイハートに関する評価をYouTubeに上げています。
参考
YouTube:クラソヒナ博士のブドウ品種「マイハート」
苗木ショップ:ブドウ品種「マイハート」
非常に寒く、耐病性に重点を置いたブドウ育種が行われているロシアでは、耐寒性や耐病性に関しては弱いほうという評価のようですが、動画を見る限りでは独特の形や味、粒の大きさ、そして市場性については高く評価されているように見えます。
少なくとも、彼女のサイトでは苗木が販売されているので、自分で苗木を売る程度には評価していると考えられます。悪いものを売って、クレームが来るのでは、自分の研究者としての評価にも傷が付くでしょうから。
また、ロシアの他の苗木屋のサイトもいくつか見ていますが、日本生まれの品種としては「シャインマスカット」、「ゴールドフィンガー」、「マニキュアフィンガー」と並んで、比較的よく見かける品種です。比較的新しいマイハートがこれらの品種とともにロシアで販売されていることには、注目度の高さを感じずにはいられません。
まとめ
日本生まれの品種がまたしても韓国で大きく売り上げている、というのはシャインマスカットと同じ構図です。少しショッキングではありますが、自分が評価している品種が海外でも人気になっているというのは、少し嬉しくもあります。
海外の情報に触れていると感じることですが、日本はどうも売り方が下手というか、いまいちアピールに欠ける印象が強いです。結果として、アメリカのクリスマス商戦という、大きなチャンスを韓国に奪われてしまった感は否めません。

マイハートの粒
マイハートの一番の特徴は、かわいらしいハート形ですが、それだけでアメリカでこれだけの値段がつくとは思えません。日持ちや味に関してもある程度の評価を得たからこそ、これだけの高値で販売されたはず。栽培者はもちろん、中卸や小売店が力を合わせれば、もっと販路開拓の可能性がある品種ではないかと思います。
このマイハートが日本でどのような位置づけの品種になるのか、個人的に注目していきたいと思っています。








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