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【図解】苗木屋がこっそり教える、科学的に正しい剪定「応用編」。一生モノの果樹を仕立てる“2大樹形”と剪定の基本手順

【図解】苗木屋がこっそり教える、科学的に正しい剪定「応用編」。一生モノの果樹を仕立てる“2大樹形”と剪定の基本手順

前回「科学的に正しい剪定のやり方」と題して、剪定の重要性から切り方、剪定によってできた傷の治り方などを解説した。正しい位置で枝を切ることができれば、「カルス」と呼ばれる癒合組織が適切に巻き、剪定傷がふさがる速度が早いだけでなく、枯れ枝を減らし、炭疽病をはじめとする病害虫被害を減らすことが可能である。また、剪定は樹形を作る上でも必須の作業である。樹形をうまく作ることができれば、作業性の向上はもちろん、光合成も効率的に行われ、果樹の活力も高まり、開花・結実もうまくいくだろう。小事は大事なり。今回は「正しい剪定方法」の手順とその必要性について深堀りしていくとともに、これを応用した理想的な樹形の作り方に関しても詳しく解説していく。

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まずは丁寧な剪定を。適切な剪定の手順

【前回記事】
【図解】科学的に正しい剪定のやり方を苗木屋が伝授。ここから切るのはNG!熟練者でも陥る「もったいない剪定」とは?
【図解】科学的に正しい剪定のやり方を苗木屋が伝授。ここから切るのはNG!熟練者でも陥る「もったいない剪定」とは?
果樹栽培の現場では、肥培管理やかん水、土作り、摘果といった技術が年々洗練され、果実の品質も確実に向上してきた。一方で、全国各地の園地を回る仕事をしている筆者が疑問視するのが「剪定」である。経験年数の長短に関わらず、剪定…

図1 矢印でさした枝を切り落とす場合、どのような手順で切るのが良いか?

まずは基本的な枝の切り方について復習しよう。もちろん、剪定の最適な手順は、切り取られる枝のサイズによって異なる。今回は、図1に示すようなノコギリが必要な少々太い枝の剪定を考える。片手で切り落としたい枝を支えながら作業をする必要があるような枝である。

さて、あなたがこの枝を切るのであれば、どのような手順で切るだろうか。切る時間は長くかかっても良いので、とにかく丁寧に切ることを考えてほしい。

まずは王道「三度切り」を!

図2 適切な剪定手順と最終的な剪定切断面.「A」①,②,③の順に切る.「B」枝を取り除く際,下面の樹皮が裂けないように,切断面が工夫されている.「C」目的の位置での剪定は,カルスの巻きが早いように,ブランチバークリッジとブランチカラーを残す

図2 適切な剪定手順と最終的な剪定切断面。「A」①、②、③の順に切る。「B」枝を取り除く際、下面の樹皮が裂けないように、切断面が工夫されている。「C」目的の位置での剪定は、カルスの巻きが早いように、ブランチバークリッジとブランチカラーを残す

図2に適切な剪定手順と剪定による切断面を示す。図2「A」に示すように、三度刃を入れる。まずは、切りたい目標の位置③のラインよりも枝先側の下面から①の位置で、ノコギリがきつく挟まらない程度まで数mmほど切り傷を入れる。この操作をすることによって、①よりもさらに枝先側で②で枝を切った際に、枝の重さで下面側の樹皮がめくれて、切りたい枝の基部まで傷口がふさがることを防いでいる。

「B」では、実際に②まで切った様子を表す。このように切ると、下側が大きくえぐれず、誤って傷口を広げてしまう心配もない。「C」では、枝の基部のブランチバークリッジ(幹と枝の間にできるシワ)とブランチカラー(幹と枝の間にできる膨らんだ部分)を残して切断している。これが最終的な間引き剪定の位置である。ブランチバークリッジとブランチカラーごと切りとる「フラッシュカット」と呼ばれる剪定が推奨されることもあるが、筆者はこの部分を残している。

ただ、このブランチバークリッジやブランチカラーを残そうという意識で切るよりは、このようなシワや膨らみを参考に、切断面を決める道しるべとすると良い。図3に、枝の間引き剪定をする際の、ブランチバークリッジとブランチカラーの位置を参考にした適切な剪定位置を示す。このように参考にすることで、切る位置に迷いがなくなり、ちゅうちょなく切れるはずである。

図3 ブランチバークリッジとブランチカラーを目安に切断位置を判断する

【今さら聞けない】なぜ剪定が必要なのか?

無剪定の自然樹形でも3~5年は立派に果実をつけるケースが多いため、剪定の重要性を考えることは後回しになることも多いが、ただし、木が一度大きくなってしまうと、その構造を変えることは容易ではない。剪定作業は木が小さいうちの方がはるかに簡単であり、その間は修正が効く。植え付け後から、最終的な樹形を考えて、定期的に剪定が必要になる。

無剪定にはデメリットがいっぱい

剪定をしない場合、大きく下記のデメリットが挙げられる。

・木が大きくなり、作業性が悪くなる
・樹冠周縁部に小枝が集中し日当たりが悪くなる
・樹冠内部が空洞化し、生産性が落ちる

図4 無剪定だと,右側の木のようになることも多い

図4 無剪定だと、右側の木のようになることも多い

剪定をせず放っておくと、最悪の場合、図4のように木が大きくなり内側の枝が枯れてしまい、一気に扱いづらい木になってしまう。弊園地でも、3~5年手をつけてないものがそうなっているものもある。ただ、剪定もやみくもに切っていては、悪手になる場合もある。そのため、以下に注意して切っていくとよい。

 

 
・樹冠内部にある程度光が入るようにする
・毎年剪定をしやすいような骨格枝を考える
・枝の強弱を理解して、可能な限り樹高を低くする
・品種特性を考慮して、目指す樹形にこだわりすぎない
・毎年果実を成らせながら、切っていく

 

剪定作業は樹形を作る上で必要なことであるが、筆者が思うに、樹形に関してはこだわりすぎるのも良くない。次の章からは樹形を解説し、目指すところを示していくが、前提として木々は一本一本姿勢が異なる。そういった個体差をある程度許容して、木を作ると気持ちが楽だ。また、地形的なばらつきにより、根の張りやすさや、風通し、日当たりも変わってくるであろう。ゆえに、その植え付けた環境で満足いくように考えながら柔軟に作っていくと良い。

樹形は大きく分けて2つで良い

図5 主軸を残した主軸型樹形(「A」)と,主軸を止めて横に広がる開心型樹形(「B」)

図5 主軸を残した主軸型樹形(「A」)と、主軸を止めて横に広がる開心型樹形(「B」)

さて、果樹栽培をする上で重要な樹形について考えていきたいと思う。樹形に関する多くの書では、多くの樹形が説明されるが、種類も多く、定義もややこしくなる。ここでは、主軸を残す主軸型か、どこかで主軸を止めて横に広がる開心型の2タイプで樹形を考える。

つまり、樹形に関しては、下記の表で示すように大きく分けて2種類ある。主軸型か、芯をどこかで止めた開心型だ。ちなみに、開心自然形、変則主幹形、盃状形などは、主軸型樹形の芯をどこで止めるかの違いにより、派生するものであると考える。

主軸型樹形の特徴 開心型樹形の特徴
・クリスマスツリーのように樹冠が縦に伸びる。
・樹の間隔が狭い時に有効。
・主枝をもたず、直接成り枝がくることも多い。
・高さがある分、収量は高いが作業性が悪いことも。
・樹冠が横方向に広がる。
・主枝が太くなる必要がある。
・骨格枝を作れば、側枝の更新作業が容易。
・千差万別の樹形で面白みがある。

 

前提として、木は毎年それなりに大きくなっていく。ゆえに樹形も、木のサイズによって、変化してもよいはずだ。つまり、はじめの数年は主軸型で木を作り、どこかのタイミングで芯を止め、緩やかに開心型へと変化しても良い。また、開心型樹形も、幼木から手を入れていくちょっとした違いで、将来的な樹形に大きな違いが生まれる。この木の性質があるために、目指す樹形にこだわりすぎないということも必要である。その個体のその地形にあった理想的な枝の生かし方を探していくことが、樹形作りであるといえる。

次章では、筆者が果樹栽培において考えるおすすめ樹形について紹介したい。

おすすめ樹形その1:やや密植に植える場合は、主軸型樹形

図6 やや密植気味に植える場合は,主軸を残す樹形が良い

図6 やや密植気味に植える場合は、主軸を残す樹形が良い

やや密植ぎみに植える場合は、主軸を残した樹形がおすすめだ。

例えば、筆者が多く育てているアボカドの場合、直立傾向の強いベーコン、エッティンガーなどの品種と、横に広がりやすいフェルテ、ピンカートンなどの品種がある。園地のスペースなどの都合上、やや密植気味になる場合、おすすめしたいのは、直立傾向の強いベーコンなどを中心とした木々をやや密植気味に、主軸型樹形を生かした植え付けを勧める。図6には、樹間隔4m程度と書いたが、園地の広さを考慮して多少狭くしても広げても良い。

このやり方の場合、樹冠の広がりを抑えることができ、主軸を生かして高さをある程度活用することができる。ただ、注意するべきポイントとして、側枝が上下に重なりやすく、下枝へ日当たりが悪くなりがちになる。そうならないように、上部の枝を短めに剪定しておく。下枝をある程度大事にしながら、円錐形を目指す。また、隣の木々の枝とクロスさせてはいけない。果実収穫後は、下垂した枝を間引き剪定を行い、その付近にある新梢に更新していく方が無難である。切り返し剪定をやりすぎると、日当たりが悪くなりやすく作業性が落ちるため、注意が必要である。

また、毎年果実を育てながら、木を育てていくということも大切だ。若木だからといってある程度のサイズの木も毎年全摘果をし続けると、逆に樹勢のコントロールが難しくなる。それよりは、多少でも果実をつけながら、生殖成長と栄養成長の塩梅をうまく理解しつつ、木を作っていくとよい。直立型のベーコンなどは、適度に果実をならせると、極端に木が大きくならないし、主軸型樹形を維持しながら木を作りやすい

おすすめ樹形その2:それでも木が大きくなったら下枝を上に

図7 上部を強めに剪定し,下枝に十分光が当たるように木を作る

図7 上部を強めに剪定し、下枝に十分光が当たるように木を作る

図8 実際の樹形

図8 実際の樹形

それでも木は大きくなるし、それに伴って柔軟に樹形も考えていかなければいけない。そこで提案するのは、図7、図8のように、主軸型樹形のなるべく上部の枝をある程度剪定し、下部から出る枝を斜め上に育てていく方法である。こうして広げていく場合には、隣の木との間隔に余裕がないと困難なため、余裕がなければ間伐を行う必要もある。また横枝は図9のように、隣の木に対して、45°の方向に仕立てておくと、長く作れるし、かつ作業者も歩きやすい。

図9 横枝は隣の木に対して45°だと作業もしやすいし,枝を長く作れる

図9 横枝は隣の木に対して45°だと作業もしやすいし、枝を長く作れる

おすすめ樹形その3:50cm~1mの高さで主軸を止めた開心型樹形

主軸型樹形は木の高さが大きくなるため、なるべく高くしたくないという場合には、1m以下で主軸を止める方法もおすすめだ。図5「B」のようなイメージである。盃状形にすると、木を曲げて低く広げてスペースを広く使うため、単位面積あたりの収量に換算するとそこまで多くないが作業性はよい。ハウスの中で栽培されるマンゴーでは普通の樹形であるし、最近ではアボカドやレイシなどにも応用されている。

図10 マンゴーの盃状型樹形

図10 マンゴーの盃状型樹形

図11 アボカドの盃状型樹形

図11 アボカドの盃状型樹形

図12 レイシも主軸を止めて低く仕立ててる

図12 レイシも主軸を止めて低く仕立ててる

注意点:開心型樹形は側枝が重くなりすぎないようにする

図13 開心型樹形の実際の例

図13 開心型樹形の実際の例

沖縄県の露地栽培だと、図13のような開心型樹形が多い。こちらもかなり魅力的な樹形だと思うが、注意点もいくつかある。それは、主幹から分枝する主枝に荷重負担がかかりすぎて、折れてしまうことと、主軸を若いうちから止めて、主枝をはじめ多くの枝が出るために、骨格枝を作る作業が少々難しいこと、また意外と繁茂しやすく風通しが悪くなり、樹冠内部に枯れ枝が出やすいことなどだ。アボカドの場合、西インド諸島系のカビラ種や、フェルテ、マラマなどは、枝も広がりやすく、この開心型樹形が作りやすいが、直立性のベーコンなどはこういった樹形との相性が良くはないため、主軸型をすすめている。

開心型樹形の場合、筆者が心がけているのは、徹底した下垂枝の間引き剪定だ。切り返し剪定はなるべく行わず、無理やり枝数を増やそうとせずに、今の枝数を維持する。下方向に向く下垂枝は、ある程度落としたとしても、木が暴れにくい。上向きの枝は、剪定後にまた強い枝が出やすい傾向にあり、逆に樹冠が広がってしまうこともあるが、下垂枝の場合、その心配は少ない。また、下垂枝を除去することにより、側枝にかかる重さが軽くなり、枝先が上を向くようになる。全体の下垂枝を剪定すると、ある程度樹冠内部に光も入るようになり、枯れ枝の発生も減ってくる。

個人的には、木を横から観察したときに、個々の葉の裏面が見えると、上向きの枝が残っていると判断している。図13のように、葉裏が見える割合がそこそこ多くなってきたら良しとしている。

【よくある失敗例】枝が重くて折れてしまったケース

図14 台風で枝が折れてしまった様子

図14 台風で枝が折れてしまった様子

アボカドの木は意外と折れやすい。開心型樹形の場合、主枝や亜主枝の分枝部分に負担がかかりすぎると枝元から折れてしまうことがある。図14は、2023年8月の台風6号による被害の様子である。今回の台風はかなり大型で、沖縄県に長く停滞したために被害も大きく、極端な例ではあると思うが、大きな枝ほど分枝部から裂けたり折れたりする。このことを考えると、沖縄だけではなく本土でも、例えば、積雪により、枝を折ってしまうことも発生するかもしれない。そのため、開心型樹形の場合はなるべく下垂枝を除去しておき、ある程度枝にかかる負担を除去しておくことも必要だろう。

また、開心自然形の主枝や亜主枝は大きく、たくさんの葉を持っている。そのため、一度枝が折れてしまうと、木の上から一時的に葉っぱがなくなる量が多い。葉がなくなると、強い日光を吸収できず(本来は葉が吸収してくれている)幹が焼けてしまう。幹が焼けると、新芽が出なくなり、やがて衰弱して枯れていく。開心自然形は、低く広がり管理はしやすいというメリットがある一方で、枝折れの弱点があるため、このあたりはより注意して樹形を作る必要がある。

まとめ

樹形には、ケースによって最適なものはあるかもしれないが、完全な正解はないと思っている。また、樹形はさまざまあって良い。木の形というのは、栽培者がその木を扱ってきたこれまでを映す鏡のようなものであり、樹形を観察するのは、栽培者のこれまでをのぞかせていただいているようで、とても楽しいものだ。

もちろん、生産性や管理性をとことん追求した商業用の木は素晴らしいが、僕にとっての果樹栽培は趣味の延長という感覚もあり、木々らそれぞれの自由さを生かしたヘンテコな樹形の方がなぜか愛着が湧く。果樹栽培は、ある種の生き様みたいなもので、多売を目指しても良いし、自分にとって心地の良い空間や状態をデザインしてもよいと思う。
皆さんの果樹栽培がもっと素敵なものになりますように。

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