イチゴの苗の増やし方
家庭菜園で人気のトマトやナスなどの野菜は、「種」を使って苗を作ります。しかし、イチゴの場合は種ではなく、「ランナー」を使って苗を作ります。ホームセンターでイチゴの苗を購入したら、その苗を親株にしてランナーを発生させれば、苗をたくさん増やせます。

イチゴから伸びたランナー
苗作りに種を使わない理由
なぜイチゴの苗作りに種を使わないかというと、種をまいても1株ずつ違う性質の苗になってしまうためです。これはほとんどのイチゴがF1化(性質の異なる品種をかけあわせて、優れた形質を持つ植物を作ること)されていないことが原因です。
ただし、F1化されたイチゴもわずかに存在しており、種子繁殖型品種と呼ばれています。種子繁殖型品種は「よつぼし」や「初姫(ういひめ)」、「ベリーポップあまいろは」があり、そのうち、よつぼしは種も販売されているので、家庭菜園で種から育てることができます。
しかし、種子繁殖型品種を育ててその実から採取した種をまいても、その品種にはなりません。種子繁殖型品種には特別な種子親と花粉親が存在しており、その特定の組み合わせで作った種だけが苗作りに使えるからです。種子繁殖型品種もランナーを発生させるので、ランナーを使用すれば苗を増やせます。

種子繁殖型品種のよつぼしの種
イチゴのランナーとは
ランナーとは匍匐茎(ほふくけい)のことで、長く伸びたわき芽のようなものだと考えてください。このランナーの先に子苗ができ、その子苗からさらにランナーが伸びていきます。ランナーにできる子苗と、そのランナーを発生させた親株のDNAは完全に同じで、クローンです。そのため、ランナーにできる子苗を使用することで、親株と同じ特徴を持つ苗を増やせます。ミニトマトのわき芽を使ってわき芽苗を作ることと理屈は同じですね。

イチゴから発生したランナー
子苗の呼び方
ランナーにできた子苗の中で、最初にできて最も親株に近い子苗を太郎苗、2番目を次郎苗、3番目を三郎苗と呼ぶことがあります。中には、子苗、孫苗、ひ孫苗と呼ぶ人もいます。ランナーは途中で枝分かれし、1本のランナーに3〜10個ほどの子苗が付きます。

ランナーでつながった子苗たち
ランナーの発生時期
ランナーはイチゴが休眠から覚めて、覚醒状態になった時期に発生します。関東の気候では3月頃からランナーの発生が始まり、9月頃まで発生します。一季成り性イチゴの収穫時期は3月から5月頃なので、3月から5月に発生するランナーは根元で切断して除去しましょう。ランナーを残すと子苗に栄養が送られ、収穫量が減ったり実の甘さが弱くなったりするためです。
6月上旬からランナーを伸ばし始めると、6月中旬には太郎苗が苗作りに使える大きさになります。6月中旬に苗作りを始めると、7月中旬にはランナーを切断して切り離せるようになります。

ランナーでつながった親株と子苗
種苗法について理解しよう
家庭菜園で苗を増やすときには、種苗法についても理解する必要があります。
種苗法で保護されている登録品種のイチゴの苗を育成者の許可なく増やし、他人に無償で譲渡したり、販売したりすると種苗法違反になるので行わないようにしてください。
品種登録されていない一般品種であれば、種苗法の制限は受けないので、自由に苗を増やすことや、譲渡・販売もできます。苗を購入するときに登録品種か一般品種かを確認するようにしましょう。登録品種かどうかは、農林水産省の品種登録データベースで確認できます。

市販のイチゴ苗
家庭菜園におすすめのイチゴの苗の増やし方
イチゴの苗の増やし方にはいろんな種類がありますが、大きく分けると「受け苗」と「挿し苗」があります。受け苗とは、親株と子苗をランナーでつなげたまま苗作りを行う方法です。挿し苗とは、親株と子苗をつなげるランナーを切断してから苗作りを行う方法です。受け苗の方が失敗しにくく初心者向けなので、今回は受け苗のポイントを説明します。

イチゴの受け苗による苗作り

挿し苗による苗作りで使う子苗
準備するもの
・ポリポット(9センチロングポットスリット入りがおすすめ)
・培養土(捨てられる土がおすすめ)
・ランナーピンなどの固定器具

培養土が入ったポリポット

ランナーを固定する器具
手順
- 実の収穫が終わる5月から6月頃に発生したランナーを取らずに残す
- 1〜2週間でランナーに太郎苗や次郎苗ができる
- ポリポットに培養土を入れて、水をかけて湿らせる
- 子苗に葉が2枚ほど発生し、Vの字の根元がボツボツとしてきたら根が生え始めているので、苗作りに使える
- 培養土の上に子苗を置き、ランナーピンを挿して固定する
- 1週間に1回程度、培養土に水をかけて湿り気を保つ
- 固定から3日ほどでVの字の根元から根が生え始める
- 次郎苗や三郎苗、四郎苗も順次、固定していく
- 固定から1カ月ほどでポットの底まで根が到達する
- すべての苗の根がポットの底に到達したら、親株と繋がっているランナーを切断する
- 子苗同士をつなげるランナーも切断する
- ランナーを切断するときは親株側のランナーを5センチほど残して切ると、クラウン(株元)が傾く向きの目印になる
- ランナーを切断した後は、毎日の水やりと1カ月に1回の追肥を行う

子苗を固定し発根した様子

根が十分に発生したイチゴの苗
上手に増やすためのポイント
イチゴの苗作りのポイントを説明します。
Vの字の底にある小葉は取る
ランナーの子苗には芽があるので、8日に1枚ほどのペースで葉が出てきます。その葉とは別にVの字の根元に小葉が付いています。この小葉が付いたままだと発根を妨げることがあるので、取りましょう。

子苗の小葉を取り除いた
夏の猛暑対策
気候変動により夏の暑さが厳しくなり、関東でも最高気温が40℃程度になりました。イチゴの生育適温は18〜23℃程度なので、生育適温から15℃も外れており、イチゴが元気に育ちにくくなっています。プランター栽培ならプランターを日陰に移動し、日陰で苗作りを行いましょう。苗が完成した後は苗を日陰に置いて夏越しをさせましょう。畑栽培なら畝の上に遮光シートを設置して、日差しを和らげてください。
気温が高いと葉からの蒸散量が増え、水切れが起きやすくなります。苗作りに使うポリポットは直径9センチで深さがあるポリポットがおすすめです。スリットという切り込みが入っているものだと根巻きや根腐れを防げます。

ロングポットに根が伸びた苗
ランナー切断後は水やりと追肥が必要
親株と子苗がランナーで繋がっている間は、水や栄養を親株が子苗に供給します。そのため、水やりは土が乾いてからでよく、肥料を与える必要はありません。しかし、親株と子苗をつなげているランナーを切断した後は、水や栄養の供給がなくなるので、水やりの頻度を増やし、追肥をする必要があります。追肥は7月から9月まで、子苗1個につきIB化成肥料1〜2粒を1カ月ごとに与えてください。

IB化成肥料

ロングポットで根が増えた様子
太郎苗は使える
「太郎苗は苗作りには使えない」という説がありますが、実は太郎苗も問題なく使えます。太郎苗も次郎苗もDNAは同じです。太郎苗の欠点は四郎苗との苗のサイズ差が大きいこと、Vの字がきれいにできない場合があることです。「太郎苗は親株が持つ病気に感染しやすい」という説もありますが、もし太郎苗が病気に感染している場合は次郎苗も感染しています。

ランナーの先端にできる太郎苗
親株は育てるか捨てる
苗作りに使用した親株はそのまま翌年まで育て続けても良いですし、廃棄しても良いです。イチゴは多年草なので何年も育て続けられます。ただし、収穫量は1〜2年目が多く、3年目以降は減ることが多いです。長く育てて愛着が湧いた場合は、3年以上育てても問題ありません。また、栽培期間が長くなるとクラウンが長く伸び、クラウンからの一次根の発根が減ります。クラウンに土寄せをして発根を促しましょう。

収穫時期のイチゴ

伸びたクラウンに土寄せ
病気の症状が現れたら廃棄
イチゴで甚大な被害を起こす炭疽病(たんそびょう)や疫病(えきびょう)、萎黄病(いおうびょう)は気温が高い5月から9月に発症します。葉に黒い斑点が現れランナーに楕円形の腐りが発生したら炭疽病の可能性が高いです。土が湿っているのに葉が萎れたら疫病の可能性が高いです。新葉が左右非対称になったら萎黄病の可能性が高いです。これらの病気は治療ができず周辺の株に感染を広げるので、見つけ次第、処分してください。病気が発生したら土は太陽熱消毒をしてください。プランター栽培で太陽熱消毒が面倒な人は、あらかじめ「捨てられる土」を使うことで病気が発生したときに培養土をごみとして廃棄できます。病気の株は葉やランナーから菌が飛散するので、ポリ袋で密封してごみとして廃棄してください。

炭疽病が疑われるイチゴの葉

疫病が疑われるイチゴの葉

萎黄病が疑われるイチゴの葉
まとめ
イチゴはランナーを使うことで、苗をたくさん増やせます。初夏から秋に苗を増やせば翌年の春にイチゴをたくさん収穫でき、おうちでいちご狩りが楽しめますよ。ぜひイチゴの苗作りに挑戦してみてください!

















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