女性がよりビールを楽しむためのウェブサイト「ビール女子」編集部の酒井由実(さかい・ゆみ)が、最近増えつつある農業女子とビール片手に本音を語り合おうというこの企画。
記念すべき第一回としておうかがいしたのは、千葉県松戸市で有機無農薬野菜を栽培する「綾善」(あやぜん)。農林水産省の農業女子プロジェクトにも参加している花島綾乃(はなしま・あやの)さんを中心とした、家族4人で営むアットホームな農園です。
タマネギ、ニンジン、スイスチャービル、枝豆、白菜、ジャガイモ、ホウレン草など季節の野菜を少量多品目で栽培されています。収穫した野菜類は、自宅脇の直売所で販売したり、都内レストランへ卸したりしています。
今回は、綾善の「あや」こと花島綾乃さんに話を聞きました。
同級生の子どもたちにも安心して食べてもらえる野菜を作りたかった
――:綾乃さんが農業をはじめたのはいつのことですか。
花島綾乃さん(以下、綾乃):父が残してくれた農園を継いで、「綾善」として起業したのは、2017年2月になってからです。
――:きっかけは、お父さまが亡くなられたから?
綾乃:全然ちがいます。父が亡くなったのは高校生の頃でしたから。そのときは農園を継ぐとか考えていなくて、普通に家政科の高校を卒業して、理学療法の学校に進学しました。
すでに2、3人の子どもがいるような女子校時代の友だちが「子どもにはできるだけ無農薬野菜を食べさせたい」って口々に言っていたのを聞いたことがきっかけです。みんな栄養士や管理栄養士の資格を持っているから敏感なんですよね。
でも、いざお店に行くと、農薬を使った完璧できれいな野菜ばかりが並んでる。
無農薬で子どもたちにも安心して食べさせられる野菜ってどこに行けばあるんだろう? って考えたときに「あれ、うち、畑あるじゃん」と気づいて。「わたしにできるんだったらやろう」っていうことではじめたんです。
母から初めての反対――「成功している人もいるんだから、それを参考にしたい」
――:就農することに抵抗はありませんでしたか?
綾乃:小さいときから弟と一緒に泥遊びをしながら手伝ったり、畑にいる虫を取ったりしていましたからね。それにどんな仕事でもプライドをもってしているわけですから、農業を含め、仕事に対する偏見もないですし。
花島家は代々農家ですが、両親とも、「継いでほしい」とは言わず、わたしたち兄弟には好きなことをやらせてくれていました。特に母は、わたしが「やりたい」と言うことに対してはいつもエールを送ってくれる人です。
だから、家に戻って母に「農業をやりたい」と話したとき「絶対無理だから」ってはじめて突き放されたのは驚きました。生まれてはじめて反対されて、むしろ「やってやろうじゃないか」って。
日本の農業があんまり奮わない、と周りから聞いてはいたんですけど、成功している農家さんもある。だったら、そういう成功事例を参考にすればいいんじゃないか、って思ったんです。
Instagramやブログを駆使するイマドキPR術を駆使――リアルでは人情味あふれる接客
――:農業についての知識はどこで学ばれたんですか。
綾乃:新規就農者向けに研修もあるようですが、せっかく近所に農家さんが多いんだから、周りの人たちに聞こう、って隣の畑をやっている90代のおじいちゃんやご近所さんたちからいろいろと学ばせてもらっています。
もちろん、検索したりYouTubeを見たりするなどネットの情報も活用していますし、婚約者の彼もいろいろな本を探しては勉強してくれています。
PRに活用しているInstagramのライブ機能での配信中に「こうするといいよ」と入れていただくコメントも、ものすごく勉強になります。現役の方からの情報ですからね。
わたしはどちらかというと宣伝PRを担当しているので、まだまだ畑についての知識は少ない。だから、2年目、3年目にはもっといろんなことができるように、学べるものはどんどん学んでいこうってしているところです。
――:Instagram以外で、どんなPR活動をされているんですか。
綾乃:綾善の公式ページ内にあるブログ、Facebookページ、Twitter、それと若い世代に向けたブログもやっています。
「綾善ブログ」の読者は、主婦層が多いのでレシピや変わった野菜の活用法を、若い世代向けのブログではネイルや流行している話題、飼っている犬のことなどを中心に発信しています。読者に合わせて内容や文体を変えるなど工夫しています。
コメントへも、適当に返したくないから、なるべく質問に対しては「1」ではなく「10」返したいと思って対応しています。また、メッセージをいただいたら、それにもきちんと返信したいので、夜の事務作業には結構時間がかかりますね。
――:ご自宅の敷地内で直売所もやっていらっしゃいますよね。
綾乃:そうですね。こちらにはInstagramを見た人、ポスティングチラシを見た人などが来てくださいます。少し遠くから来てくださったり、2回目、3回目と、ときにはお子さんも連れてきてくださったりすると本当にうれしくて、泣きそうになっちゃいます。だから、来てくださったお客様は、姿が見えなくなるまで心を込めてお見送りしています。
ただ、普段のキャラクターのせいか、声がうわずるほど感動していても、なんだか嘘っぽく見えるようで残念なんですが。
普段は早起き、アルコールは休みの前日に
――:今日はビールを飲んでいただきましたが、普段飲まれることは?
綾乃:農業をはじめる前は友だちとよく飲みに行っていました。今は朝起きられなくなるのでほとんど飲んでいませんね。久しぶりに飲むと、やっぱりおいしい。
――:良かったです(笑)。朝は早いのですか。
綾乃:3時35分には起きて朝食を取り、それから畑へ。直売所で販売するための「朝採り野菜」の準備があるので。直売所は母も含めた家族4人で交代しながら店番をします。正午前後には昼食を摂ったりお昼寝したり。畑、家事、犬の世話、直売所っていう感じで行ったり来たりですね。学校が近くにあるので、そのチャイムを目安に行動できるのがありがたいなぁって思います。
夜は、夕食後にブログの更新などの事務作業がありますが、夜12時前には寝るようにしています。
野菜を中心とした憩いの場を作りたい
――:最後になりますが、これから綾善でやっていきたいと思っていることがあれば、教えていただけますか。
綾乃:自分に子どもが生まれたときのために、無農薬野菜の離乳食やオーガニックの石けんを作れたらいいなって思いますね。
それから、ここまで買いに来てくださる方のために、もっとくつろげる場所を作りたい。野菜を買わなくても、散歩ついでに休憩できるスペースがあるといいなと。母は小料理屋をやりたいといいますし、わたしも料理が好きなので、持ち込みOKな“百姓カフェ”みたいなのをやりたいです。
皆さんからもっと色んな話を聞いたり、わたしからは野菜の情報を伝えたりできたら最高ですよね。
――
PRにInstagramやブログを活用し、マツエク、マスカラ、ジェルネイルなど、パッと見はいかにも“イマドキ”風な綾乃さん。ビール片手に話を聞いてみると、人情に厚く、礼を尽くし、食べる人たちのことをひたむきに考える姿勢が見えてきました。そして、周りの人たちからとても愛されていることがわかる素敵な農業女子でした。
編集:ビール女子編集部
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