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販売価格が高い9月から11月に出荷 トマトのハウス栽培「ヒートポンプ技術」活用例

販売価格が高い9月から11月に出荷 トマトのハウス栽培「ヒートポンプ技術」活用例

2017年09月12日

空気中の熱をとり入れて、少ない電力で多くのエネルギーを生み出すヒートポンプ技術。エアコンや冷蔵庫など、身近な家電製品にも多く採用されています。
そればかりではなく、ヒートポンプ技術はトマトのハウス栽培にも有効活用でき、生産性と収益性の向上を実現しています。
ヒートポンプ技術を活用したトマトのハウス栽培についての研究成果を発表した、東北電力のご担当者にお話をうかがいました。

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被災地の利活用でトマトのハウス栽培が増加

野菜の作付面積は緩やかな減少傾向にあり、生産量は近年横ばいで推移している中(※)、トマトは健康面で注目されたり、様々な食べ方が提案されたりと、生産、消費ともに拡大傾向にある人気品目です。ハウスなどの施設で栽培される野菜の中でも、キュウリやピーマンなどに比べて栽培面積が大きく、今後も生産が拡大していくと考えられています。

トマトのハウス栽培は、熊本県、愛知県、千葉県、栃木県などが生産上位県ですが、これらに比べて規模は小さいものの、東北でも福島県や宮城県などの太平洋沿岸部で盛んに行われています。

「当社は、地域に資する研究として、以前より農業分野における電気の利用について取り組んできました。東北では、もともとトマト栽培が行われていましたが、2011年の東日本大震災以降、宮城県や福島県の太平洋沿岸部を中心に、被災地の利活用としてハウス栽培の導入が進みました。特に宮城県では、大規模なハウス栽培が増えており、トマトの生産量は震災前を上回る実績となっています。

このような状況を受け、当社はトマトのハウス栽培にヒートポンプ技術を活用できないか研究を行うことにしました」(東北電力担当者)。

「9月から11月に出荷したい」生産者の声をヒートポンプの活用で実現

東北電力では、当初、冬季の暖房用としてヒートポンプの導入を推奨していたそうです。しかし、ヒートポンプを暖房利用しようとすると、寒冷な東北ではデフロスト(霜取り)運転などにより暖房効率が低下してしまい、西日本のような暖地に比べて、熱源転換のメリットが小さくなってしまうという欠点が課題としてあげられていました。

そんな状況の中、実際にヒートポンプを導入したハウスで実態調査を行っていた時に、生産者と意見交換を行っていると、9月から11月に出荷したいという話が出たそうです。9月から11月はトマトの夏秋ものと冬春ものが入れ替わる時期で、全国的にトマトの出荷量が減少して販売単価が高くなる時期です。だから、この時期に出荷できると収益性が向上するそうです。

9月から11月の出荷を実現するためには、夏前に苗を植え、ハウス内が高温になる盛夏を乗り越えなければなりません。しかし、ハウス栽培のトマトは高温になると根付きが悪くなるなど生育が難しく、湿度が上がると病害が起こりやすくなります。そのため、この時期に出荷するのは非常に難しいことなのです。

そこで、東北電力は、ヒートポンプを「暖房」ではなく、「冷房・除湿」に活用しようと考えるようになりました。

東北の冷涼な気候を活かし冷房・除湿により生産性、収益性がアップ

夏のトマトのハウス栽培において、ヒートポンプを活用した夜間の冷房・除湿が有効であることは、試験研究レベルでは知られていました。トマトは夜間に生育が進み、生育には昼夜の温度差、湿度差がポイントとなるためです。しかし、実際の生産規模で収益性が確保できるか未知数だったこともあり、一般的には普及していませんでした。

そこで、東北電力では「東北地区の気候なら、ヒートポンプのノウハウを上手に活かすことで実用化できるのではないか」という仮説のもと、トマト農家の方の協力を得て実証実験を始めました。

「東北は盛夏の期間が短く、昼間暑くても夜間は比較的涼しくなるという特長があります。つまり、東北なら夜間の冷房や除湿の効果を効率よく得られるのです。その特性を活かせば、他の地域と出荷時期で差別化できると考えたのです」。

「寒いからヒートポンプは不向き」という既成概念から、「寒いからこそヒートポンプが有用」という逆転の発想でした。

ヒートポンプ活用で収穫量が4割アップ トマトの供給がほぼ通年可能に

実証実験の結果、ヒートポンプを利用して冷房、除湿を行い栽培した場合、使用しない場合と比較すると、収穫量が約40%も向上したといいます。さらに収穫したトマトの大きさや形、色付きなどの品質も良くなったそうです。

実証試験に協力してくれた農家の方は、試験結果を受けて、夜間の冷房・除湿の本格的な導入に踏み切りました。「売り上げが増えただけでなく、2つのハウスで作期をずらすことで、ほぼ周年でトマトを供給できるようになった。それに伴い、作業の分散ができ人員計画が立てやすくなった」という喜びの声も寄せられたといいます。

今回ご紹介したのは東北ならではの実験結果ですが、このノウハウは他の地域でも活用できるのでしょうか。

「当社では、地域に密着した企業として、東北6県と新潟県内のお客様に対して、今回の研究成果を踏まえた提案活動を行っていきたいと考えております。研究成果については、関東以西でも山間部など、東北と似た気象条件のところであれば適用できると思います」。

今後、東北電力では、今回の研究で得られたノウハウをもとに、ヒートポンプのさらなる有効利用法を構築し、東北に適した、より付加価値の高い栽培技術の開発を目指していくそうです。

トマトだけにとどまらず、生産性・収益性がアップする農作物が他にも出てくることが期待できます。

東北電力

http://www.tohoku-epco.co.jp

※主要農畜産物の生産等の動向 – 農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h27/pdf/1-2-3.pdf

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