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「日本生まれのイタリア野菜」で市場を創る 種苗ビジネスの今

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「日本生まれのイタリア野菜」で市場を創る 種苗ビジネスの今

農産物の競争力を左右するのは、生産者の腕だけではない。栽培技術がどれだけ高くても、品種が気候に合っていなければ、おいしい作物に育てるのは難しい。日本では珍しいイタリア野菜などで注目を集めるさいたまヨーロッパ野菜研究会も、栽培しているのは日本の気候に合うように改良された品種だ。その点で貢献したのが、種苗会社のトキタ種苗(さいたま市)だ。

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さいたまヨーロッパ野菜研究会、誕生前史

海外に行くと、国内では見たことのない野菜や果物がたくさんあることに気づく。なじみのない農産物のおいしさに驚きながら、「この食材を日本で使えれば、ビジネスになるのではないか」と思ったりする。だがことはそう単純ではない。気候条件が違うと、作物は思うように育ってくれないからだ。
その難題を突破したのが、さいたまヨーロッパ野菜研究会(以下「ヨロ研」)だ。ヨロ研は農家とレストラン、食品卸、種苗会社がチームを組み、2013年に発足した。欧州の野菜を農家が作り、レストランがメニューに取り入れて売り上げを増やす。その活動にはじつは「前史」がある。
ヨロ研の発足から6年前。トキタ種苗がイタリアに現地法人を設立した。目的の一つは、日本特有の甘いミニトマトのタネをイタリアで販売することだった。ビジネスは期待通り軌道に乗ったが、同社のスタッフはそこで別のビジネスの芽をつかんだ。日本に無いさまざまな野菜と出会ったのだ。

イタリアの野菜売り場(写真提供:トキタ種苗)

ヨーロッパ野菜の栽培指導などを担当している福寿拓哉(ふくじゅ・たくや)さんは、そのときの驚きを「イタリア料理と言えば、ピザとパスタ。そんな事前のイメージが覆りました」と表現する。
「地元の野菜をふんだんに鍋に入れ、食感がなくなるくらい軟らかくなるまでじっくりゆでる。そのあと、地元で取れるオリーブオイルやニンニクを入れて炒め、塩でシンプルに味付け。家庭ではそんな調理の仕方で野菜が食べられています」
日本にない野菜をたっぷり使う現地料理を知ったことは、福寿さんたちにとって大きな刺激になった。人口も農家の数も減る日本で、ふつうのタネを売り続けることに限界を感じていたからだ。イタリアと日本の試験農場で、イタリアの品種を日本の気候と土壌に合うように改良する挑戦が始まった。
品種改良にメドがつき、日本でタネの販売が始まったのが2010年。レタスに似ていて赤紫色の「ラディッキオ」(一般名はチコリ)や、タマネギのような見た目で薄緑色の「フィノッキオ」(同フェンネル)など6種類を売り始めた。

トキタ種苗の福寿拓哉さん

最初は既存のルートで売ってみた。農家にタネを売る小売店や農協向けの販売だ。イタリア野菜の可能性を一部の小売店などが評価し、タネを農家に売ってくれた。では、農家が育てた野菜にどんな値段が付いたか。

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