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「雑草を商品にする魔法」無から有を生む逆転の経営

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「雑草を商品にする魔法」無から有を生む逆転の経営

「雑草」という言葉を聞いて、ほとんどの農家はあまりいいイメージを思い浮かべないだろう。とくに農薬を使わない有機農家にとって、雑草との戦いは、病害虫対策と並んでもっとも大変な作業の一つだ。だが多くの農家には厄介者でしかない雑草を、商品にして成長してきた農業法人がある。杜若(とじゃく)園芸(京都府城陽市)だ。

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流通の仕組みを調べることから出発

杜若園芸は約300種類の水生植物の栽培や販売を手がけている農業法人。主な作物はスイレンやカキツバタのほか、白い小さな花を咲かせるナガバオモダカや、縦に細長く伸びるヒメホタルイ、丸い葉っぱが特徴のウォーターコインなど。水槽の中で小さな草原のように見えるコブラグラスも人気だ。
売上高は約4億円。社長の岩見悦明(いわみ・えつあき)さんは1990年に銀行を辞め、実家で就農した。もともと生け花用のカキツバタなどを栽培していたが、岩見さんが就農してからバリエーションを大幅に増やし、事業を拡大させた。現在、栽培している品種には海外から取り入れたものもたくさんある。

コブラグラス

経営を飛躍させるきっかけは、農産物の値段について就農直後に抱いた疑問にあった。父親が花の品質を高めた成果で、関西ではそれなりに高い値段で売れていた。だが関東にも販路を広げようと、岩見さんが営業に行くと、市場で提示された値段は関西のおよそ半値。同じ品質のものが地域によって相場が大きく違う点と、買い手主導で値段が決まることを知った。
ほかの農家なら「もっと品質を高めよう」と思うかもしれない。だが岩見さんは違った。「まず流通の仕組みを知るべきだ」と考えたのだ。そこで、高速道路の緑化事業で壁面に植えるツタなどを売買している企業の担当者を何度も訪ね、どんな値段で取引しているのかをたずねてみた。緑化用の植物を選んだのは、食用の作物よりも自社の商品に近いと考えたからだ。

ウォーターコイン

この企業は栽培を委託した農家からツタを仕入れ、道路への移植を手がける会社に販売していた。値段を調べてわかったのは、農家と比べて企業の利幅がずっと大きいという点だ。だが、この企業の担当者によると「農家はすごく喜んでいる」。他の農産物と比べ、農家の手取りが多かったからだ。

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