歴史のある野菜 進化し続けるダイコン
古事記にも登場し、春の七草の「すずしろ」としても知られているダイコンは、日本の野菜というイメージがあるかもしれませんが、実は海外からやってきたもの。原産地については諸説ありますが、コーカサス、地中海、中央アジアだと言われています。
ダイコンの栽培の歴史は古く、なんと古代エジプトのピラミッド建設の現場で食用とされていた記録が残っているのだとか。日本に渡ってきたのは奈良時代で、江戸時代から日本中に広まったと言われています。
日本のダイコンの品種は大きく2つに分けられます。根っこの上の方が青みがかっている「青首ダイコン」と、首が白い「白首ダイコン」です。青首ダイコンは栽培しやすく、甘みがあって辛みが少ないため人気が高く、流通の主流となっています。反対に辛みが強い白首系のダイコンは地方品種に多く、最近ではあえて辛みを強く改良した品種や、赤や黒、しま模様など様々な品種が生まれ注目を集めています。
鮮度の良いダイコンの見分け方
鮮度が良いダイコンは、葉っぱが違います。葉っぱがついている時は、しんなりしていないものを選びましょう。葉っぱが切り落とされているものは、切り口がみずみずしいか確認します。皮にツヤがあってハリがあり、ずっしりと重みを感じるものがおすすめです。青首ダイコンの場合は、葉の近くは青く、白い部分はしっかりと白色になっているものは鮮度が高い印です。
中心部分に細かい穴があいてスカスカになっているような状態を「スが入っている」と言いますが、カットされているダイコンを買う時は、スが入ってないものがおすすめです。
ダイコンの栄養
ダイコンに含まれる栄養素には、葉酸、ビタミンC、カリウムなどがあります。さらに、デンプンを分解するジアスターゼや抗酸化カタラーゼなど、唾液や肝臓に多く含まれる消化酵素をダイコンは含有しています。
つまりダイコンは消化を助け、胃もたれを防いでくれることが期待できます。ただし、これらの酵素は熱に弱いので、加熱調理だけでなく、サラダやダイコンおろしなど生で食べることが大切です。焼き魚や天ぷらにダイコンおろしが添えられているのには、消化を助ける役割もあるためです。
ダイコンの保存方法
ダイコンの保存で大切なのは、葉と根を切り離すことです。根の部分は、夏場は新聞紙に包んで野菜室で、冬場は直射日光と風の当たらないベランダで保存することができます。
切ったダイコンはラップに包んで冷蔵庫に保存し、早めに食べ切るようにしましょう。葉はすぐにしなびてしまうので、根と切り離したらすぐに茹でて、冷蔵か冷凍で保存します。
ダイコンの旬の時期
ダイコンの旬の時期は地方によって異なります。千葉県や神奈川県、四国や九州などでは、11月頃から5月頃までが出荷のピークを迎えます。反対に、茨城県や青森県、北海道などは6月から10月がピーク。温暖な地域と寒い地域で収穫時期が異なるため、一年を通しておいしいダイコンを楽しむことができます。
ダイコンの部位による賢い使い分け
首に近い上部は甘いため、生でサラダやダイコンおろしに向いています。下の部分は辛みが強いため、煮物や漬物などに最適です。真ん中の部分は用途が広く、幅広い料理に利用できます。
ダイコンの葉っぱは緑黄色野菜です。豊富に含まれるカロテンは、油と一緒に摂取することで吸収されやすくなるため、油でさっと炒めて食べるのがおすすめです。
ビタミンCを効率よく摂取したい場合は、浅漬けにしたり、さっと茹でたものを細かく刻み、吸い物や味噌汁に入れてもよいでしょう。ビタミン類は皮の部分にも豊富に含まれているため、捨てずにきんぴらや漬物などに利用しましょう。
ダイコンの下ごしらえ
ダイコンを煮物に使う場合は、下茹でが大切です。皮をむいて、煮崩れないように面取りをします。おでんのように厚めの輪切りにする時は、十文字に浅く隠し包丁を入れると火が通りやすく、味も染み込みやすくなります。鍋にダイコンがかぶる程度に水を入れて加熱。竹串を刺して茹で具合を確かめましょう。全体が透き通ったら下ごしらえが完了です。
ダイコンの種類
たくさんの地方品種があるのもダイコンの大きな特徴の一つです。ダイコンの品種の数は、日本が世界で一番多いと言われています。
大蔵大根
東京都世田谷大蔵で栽培されていた、江戸東京野菜のひとつ。煮崩れしにくいので、おでんなどの煮物料理に最適な品種です。
練馬大根
東京都練馬区で栽培されている江戸東京野菜。80センチにもなる大型の品種で、主に漬物に使われています。
紅化粧
ラディッシュのように赤い見た目のダイコン。20センチ前後の中型で、切ると中は白く、歯ごたえが良いのでサラダなどに使用されます。
青味大根
絶滅した「群(こおり)大根」の変種。直径1センチ、長さ12センチほどの小型ダイコンです。京都では葉っぱも食べられています。
紅芯大根
緑色の丸い小さなダイコンですが、切ると中は赤いのが特徴。甘みもあり生で食べられるため、料理の飾りなどに重宝されています。中国原産。
三浦大根
神奈川県三浦半島で栽培されているもので、中太りのダイコン。年末の一時期しか流通しない珍しい品種です。
桜島大根
鹿児島県で作られているダイコンで、6キロ前後にもなる大型のダイコン。10キロを超えるものも多くあります。
からす大根(黒大根)
皮が黒く、中は真っ白なのが特徴。加熱するとホクホクとした食感になります。原産地はヨーロッパです。
紅しぐれ
きれいな紫色の見た目と、太く短めの形が特徴のダイコン。紫色はポリフェノールによるもので、酢に漬けると赤色に変化します。
ねずみ大根
根がねずみの尻尾のように長く伸びていることから、名づけられたダイコン。おろしても水分がでにくいため、そばなどの薬味としてよく使われます。
日本の食卓になじみの深いダイコンですが、味も見た目も様々な種類があります。ダイコン料理を作るときは、日本ならではの珍しい品種も探してみてはいかがでしょうか。
参考:「野菜と果物の品目ガイド~野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)