加工用として一般的だった西洋梨の歴史
日本の梨といえば、みずみずしくシャキシャキとした食感が特徴的ですが、西洋梨は、とろけるような果肉と芳醇な香りがあるフルーツです。欧米から日本に渡ってきた時期は、明治初期の頃と言われています。ただ、渡来後すぐに日本中に広まったというわけではなく、栽培の知識が足りなかったため普及は一部の県に留まりました。
西洋梨にとって、おいしさを左右する追熟(果物を収穫後一定期間おくことで甘さを増したり果肉をやわらかくすること)の知識が乏しかったのです。しばらくは加工を前提としたフルーツとして栽培されていた西洋梨ですが、1970年代に加工需要が低迷したため、生食用への取り組みが本格化しました。現在の主流品種であり、西洋梨の代名詞とも言える「ラ・フランス」の導入により、秋の味覚として徐々に定着していきました。
鮮度の良いおいしい西洋梨の見分け方
鮮度が良い西洋梨は、果皮に傷がなく、持ったときにずっしりと重さを感じます。西洋梨の命でもある、香りが良いものを選びましょう。西洋梨は食べ頃を見極めるのが難しいフルーツとされており、産地で一定期間低温のもとで追熟を行ってから出荷されることが多くあります。食べごろの西洋梨は、果皮がしっとりとしていて、持った時に手になじむものです。ただ、食べごろになると果皮や果肉が傷みやすくなるため注意が必要です。
西洋梨の栄養
西洋梨は腸の働きを助け、便通を良くする食物繊維を日本梨よりも多く含んでいます。さらに、ヘモグロビンの合成を助け、鉄分の吸収率を高め、貧血防止の効果が期待できる銅も多く含まれています。
西洋梨の保存方法
家庭で保存する場合は、食べる分だけを常温に置いて追熟を進めます。すぐに食べない場合や、しばらく保存しておきたい場合は、紙袋や新聞紙で包んで冷蔵庫の野菜室に保管しましょう。その後、食べる前にしばらく常温に置き、追熟させます。
西洋梨の旬の時期
生食用の西洋梨は、秋の終わりから冬にかけて食べ頃になる品種が多く、生食用の主流であるラ・フランスも10月半ば頃から市場に流通します。品種によって時期は多少ずれ、全体としては8月から4月という、比較的長期にわたって市場に出回ります。また、西洋梨の生産量のうち半分以上を山形県が占めています。
西洋梨の賢い使い分け
芳醇な香りと独特の食感がある西洋梨は、カットしてそのまま食べるだけでなく、料理やスイーツのアレンジにも利用できます。西洋梨はカットした後に褐色に変わりやすいため、食べる直前に切るようにしましょう。
サラダ
切ってみて果肉が硬かった時は、サラダに利用するのがおすすめです。ベビーリーフなどと一緒に和えると、おしゃれなサラダのできあがり。味付けはシンプルにオリーブオイルとレモン汁、コショウのみで十分です。
煮込む
硬い西洋梨は、ワインで煮込んでもおいしく食べられます。砂糖で煮てシロップ漬けやジャムにすることで、長期保存も可能になります。シロップ煮にする時は、密封容器に入れて冷蔵庫で保存するようにしましょう。
おつまみ
ワインのおつまみとして、ブルーチーズと一緒にどうぞ。西洋梨の芳醇な香りと甘さが、ブルーチーズの塩味とマッチします。
ピザのトッピング
西洋梨はピザのトッピングに好相性なフルーツです。生ハムやチーズなど塩分の効いたものと合わせることで、西洋梨の甘さが引き立ちおいしくいただけます。
西洋梨の種類
ラ・フランス
日本における西洋梨の普及に一役買った主力品種。旬は10月半ば頃からとなります。
ゴールド・ラ・フランス
皮がゴールド色をしており、味はラ・フランスに似ています。旬は11月上旬から12月上旬です。
ル・レクチェ
濃厚な甘みと芳香が楽しめる梨。鮮やかな黄色の果皮が特徴です。出回り時期は12月中旬です。
シルバーベル
甘味と酸味が両方楽しめる品種で、追熟によって果皮が緑色から黄色に変化します。旬は10月下旬からです。
ウィンターネリス
果肉のなめらかさと糖度のバランスがいい品種で、やや渋みもあります。秋田県、山形県、長野県で少量のみ栽培されており、12月から3月頃まで出荷されます。
コミス
クリーミーな口当たりで芳醇な香りがあります。旬は10月上旬頃からです。
リーガルレッドコミス
西洋梨の中でも珍しい、果皮が赤くなるタイプの品種です。コミスと同じように味が濃厚で香り高いのも特徴です。
西洋梨はなめらかな食感が特長で、サラダやピザのトッピング、ブルーチーズなど、おつまみとしてもおいしく食べられます。週末の夕食や、ちょっと贅沢したいディナーに一品添えるだけで華やかにしてくれる果物です。
参考:「野菜と果物の品目ガイド〜野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)