柿には1000種類も品種がある
「柿は日本の果物」という印象をお持ちの方が多いかもしれませんが、原産国は中国です。歴史は古く、10世紀頃にはすでに栽培をしていたという記録が残っています。柿は食用としてだけでなく、防腐剤や防虫剤として染め物や塗り物にも使われ、日本人の生活には欠かせない果物の一つです。
柿には歯ごたえがやわらかいものと、硬いものがありますが、現在は硬いものが好まれる傾向にあるようです。江戸時代に多くの品種が生まれたとされ、その数は1,000種類にも及ぶのだそうです。現在は栽培地域の名前がつけられた地方品種も数多く存在します。
品種は大きく分けて3つに分類することができ、受粉に関係なく渋が抜ける「完全甘柿」と、受粉で種ができることにより渋が抜ける「不完全甘柿」、受粉しなくても結実する渋抜きが必要な「渋柿」があります。
鮮度の良いおいしい柿の見分け方
鮮度が良い柿は、果頂部(おしりの部分)や全体に褐変がありません。ヘタが乾燥しておらず、変色もしていないヘタが緑色のものが新鮮です。また、見た目以上にずっしりと重さを感じる柿を選びましょう。独特の暖かな色が鮮やかに発色しているものが新鮮な証です。
柿の栄養
柿の渋み成分であるタンニンは、アルコールを分解する働きを持っています。また、カロテンやビタミンC、体内の塩分濃度を整えるカリウムに加え、抗酸化作用を持つβクリプトキサンチンを多く含んでいます。
柿の保存方法
家庭で保存する際には、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に入れるようにします。市場出荷される渋柿の多くは、アルコールや炭酸ガスを使って脱渋加工されています。この場合の保存期間は15℃~20℃の室温で1週間から10日です。
柿はヘタで呼吸を繰り返しているため、水でぬらしたティッシュをヘタに被せることで、熟度の進行を抑えることができます。ヘタが傷んでいると、渋が抜けにくくなるので保存の際にはヘタをとったり、傷つけないように注意しましょう。
柿の旬と時期
柿の旬は晩秋から初冬にかけてで、冬の始まりを告げる果物として私たちにも非常に馴染み深い存在です。市場に出回るのは9月~12月頃で、生産地は和歌山県、奈良県が多く、この2県で生産量のおよそ半分を占めています。
柿の賢い使い分け
柿が柔らかくなりすぎていたらそのまま冷凍してシャーベットにしても楽しめます。その他、ヨーグルトソースでフルーツサラダにするのはもちろん、塩気のある生ハムなどと組み合わせて、オリーブオイルと塩でオードブルとしていただくのもおすすめです。
和風で調理するのであれば、硬めの柿を使って、ダイコンなますに加えたり、酢の物、サラダに加えてもよいでしょう。
柿の渋抜き方法
自宅で柿の渋を抜くときは、25度以上の焼酎をヘタに塗りつけてから、厚めのポリ袋に入れて常温で保存します。およそ1週間で渋みが抜けておいしく食べられるようになります。
おいしい干し柿
天日干しや火力乾燥などによって作られたのが干し柿。白い粉がまわりについていることがありますが、これは柿の糖分が乾燥して結晶化したもの。そのため白い粉がついている干し柿は、乾燥が進み甘くなっている証拠です。トースターなどで少しあぶるとやわらかくなります。
柿の種類
富有
数ある品種の中でも人気の高い甘柿の代表。果重は200グラムほどでふっくらとしています。果皮は橙紅色で光沢が美しく、果粉(ブルーム)があります。肉質が緻密でやわらかい食感です。
富有を選ぶときは、表面の4つの溝がはっきりくぼんでいるものが、タネが少なく甘い印です。果肉に斑点が見られることがありますが、これは病気ではなく、甘い証拠。加熱しても渋が残らない品種なのでジャムにもオススメです。旬は10月~11月頃。
平核無(ひらたねなし)
種無し品種の王道で、渋柿の代表品種です。四角い箱型で果重は180から200グラムほど。種がなくて食べやすく、渋抜きされたものだと糖度が14度〜16度前後になります。果肉は緻密で柔らかく、果汁もたっぷり。山形県の「庄内柿」、新潟県の「八珍柿」、佐渡島の「おけさ柿」、和歌山県の「紀の川柿」など、地方によって異なる呼び名を持っています。旬は10月~11月頃。
刀根(とね)
奈良県で発見された、平核無の枝変わり(※)です。平核無とよく似ていますが、刀根の方が少し大きく、熟期が2週間ほど早いという特徴があります。7月〜11月上旬まで出回り、柿の中では早生の主力品種です。
※一部の枝のみが他と異なる遺伝形質を示すこと
次郎
甘柿の代表的品種。種がほとんどなく、歯ごたえのある食感が特長。旬の時期は11月頃。
早秋
四角い形で、8月頃から収穫できる完全甘柿の一種。強い甘みがあり、日持ちもしやすい品種です。
シャロンフルーツ
イスラエル産の柿の総称を「シャロンフルーツ」と呼びます。小型で皮がやわらかい柿です。旬は2月中旬です。
柿は秋や冬の果物と思われがちですが、夏に出回る品種もあります。夏に食べるときは冷凍してシャーベットにして食べると格別です。秋、冬に食べるときも、サラダやお料理に加えて楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考:「野菜と果物の品目ガイド〜野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)