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絶滅から野生復帰へ 兵庫県豊岡市の「コウノトリ育む農法」とは(2/3)

絶滅から野生復帰へ 兵庫県豊岡市の「コウノトリ育む農法」とは

環境破壊などにより絶滅した、日本のコウノトリを野生復帰させた兵庫県豊岡市。嬉しいニュースの裏では、地元農家や行政、住民などが力を合わせ、「コウノトリ育む農法」などを導入し、コウノトリが暮らせる環境の保全に尽力していました。今回はその取り組みについて、豊岡市役所農林水産課、環境農業推進係長の山本大紀(やまもとだいき)さんに、話をうかがいました。

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農薬や化学肥料を最小限に抑える「コウノトリ育む農法」

豊岡市では2003年より、農家や農協、行政、学識者などが連携し、農薬や化学肥料に頼らない米作りを開始。この米作りで始まった農法は「コウノトリ育む農法」と名付けられました。

「コウノトリ育む農法」では、雑草の繁茂を抑えるために田んぼの水深を深くしたり、微生物の生育や、カエルの産卵場所を確保するために、稲刈りの終わった冬の田んぼに水を張る「冬期湛水」を行ったりしています。

また、田植え後に田んぼを乾かす「中干し」を、オタマジャクシがカエルに変態するのを確認してから行うなど、随所で生物多様性に配慮しています。

「その結果、増えたカエルが害虫を食べてくれるなど、本来の食物連鎖が正常に機能するようになりました」と山本さんは語ります。

市を挙げて「コウノトリ育む農法」を奨励

「コウノトリ育む農法」には労力がかかるため、当初は農家になかなか受け入れられませんでした。しかし、豊岡市から農家へ地道な働きかけを行い、農協でも販売網の拡大に尽力。

「コウノトリの野生復帰に役立つ」という思いや、「苦労の多い農法だけど、その分慣行栽培よりも高値で売れる」ということが理解されたためか、コウノトリ育む農法を導入する農家は徐々に増えていったといいます。

さらに、2005年にコウノトリが放鳥されると、農業における環境意識もいっそう高まり、取り組み面積も一気に拡大しました。

農業者で組織された生産者部会では、「コウノトリ育む農法」の技術の研究や改良が行われていて米の安定した生産を実現させています。収穫した米は農協に出荷し、農協の流通経路を辿って全国へ届けられます。販売網が広がることで「コウノトリ育む農法」の知名度も上がり、農法に対する共感者も増えたそうです。

「生物多様性の観点に共感して、新たに入部する方も出てきました。農業者による生産部会があることも、取り組み拡大の理由の一つであると考えられます」。

2003年に0.7ヘクタールで始まった同農法は、2017年には407.1ヘクタールまでに広がっているといいます。

「コウノトリ育む農法」がもたらした豊岡市の変化

「コウノトリ育む農法」を始めたことで、豊岡市にはどのような効果があったのでしょうか。

「農法の取り組み面積が増えたことで、生物多様性保全への住民の理解が広まりました」と山本さん。住民自らコウノトリが暮らすビオトープや湿地を作って管理したり、自然保護活動や環境学習も盛んに行われています。

また、コウノトリ育む農法の取り組みに魅力を感じて、都市部から豊岡市に移住し、「豊岡農業スクール」の研修を受けて新規就農した方もいます。

「豊岡市では2013年より、新規就農者や農業後継者を育てるため、『豊岡農業スクール』を開校しています。提携する農家で1年から3年研修を行い、就農に必要な技術や経営管理能力を習得します。現在、移住してきた方は独立して、コウノトリ育む農法などにも取り組まれています」。

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