隠元禅師によって日本に広まったインゲン
インゲンは、マメ科インゲンマメ属の野菜です。マメ科の植物ではありますが、若採りで、中のマメが生育する前に食します。サヤの形には、丸サヤと平サヤがあり、最も一般的なインゲンは、丸サヤで長さが20センチほどのドジョウインゲンです。
下処理としてスジをとる手間が必要な野菜ですが、近年ではスジを取らずに食べられるストリングレス品種が開発されて注目を集めています。そのほかにも、カラフルな黄色や紫色のカラーインゲンなど新種が多く誕生している野菜でもあります。
原産は中央アメリカ付近、メキシコ南部だと言われていて、以前は今のような食べ方ではなく穀物として利用されていました。17世紀にヨーロッパに伝わり、江戸時代に中国僧の隠元(いんげん)禅師が日本に持ち込んだため、この名前がついたという説が広く知られています。日本で青果として広まったのは明治時代以降です。
鮮度の良いおいしいインゲンの見分け方
鮮度の良いおいしいインゲンは、マメの形がはっきり出ておらず、皮にハリがあって、サヤの先までピンと伸びています。一般的なドジョウインゲンは、太すぎるとスジが多くて硬いものが多いので、やや細めのものを選ぶようにしましょう。
インゲンの旬の時期
インゲンの旬は6月から9月頃の夏が中心ですが、鹿児島県、沖縄県など暖かい地方では冬の時期にも出荷されるなど、一年を通して市場に出ている野菜です。
インゲンの栄養
インゲンには多くの栄養が含まれていますが、中でも特質すべきなのはビタミンKです。ビタミンKは骨を丈夫に保ったり、血液を凝固させるために非常に重要な働きをする栄養素です。
また、カロテンは皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあると言われています。食物繊維も多く含むため、便通を促してコレステロールを低下させる働きが期待できます。
さらに、疲労回復作用を持つビタミンB1、血を作る働きをして貧血を予防する鉄、体内のナトリウムの濃度を調節し、高血圧防止の効果があるとされるカリウムなども含んでいます。
インゲンの保存方法
インゲンを家庭で保存するときには、空気に触れないように、ラップかポリ袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。見た目には劣化がわかりにくい野菜ですが、半日ほどの時間の経過でも、味の良さや栄養分が半減しますので早めに食べきるようにしましょう。
冷凍保存するときには、硬めに茹でてから保存するのがおすすめです。調理するときは解凍せずに凍ったまま茹でたり炒めたり、スープに加えることができるので便利です。
インゲンの下ごしらえ
インゲンにはスジがあるので、調理前に一つずつ取り除く必要があります。まずはヘタを取り、スジを引いて取り除きます。塩をまぶしてまな板の上でコロコロと転がして塩をなじませてから茹でると、鮮やかな緑色に仕上がります。ゆであがったあとはザルにあげて、うちわなどを使って手早く冷ますのがおいしく仕上げるコツです。
煮物にする場合や、バターソテーなどに使う場合も茹でてから調理すると青臭さが残らないのでおすすめです。
インゲンをおいしくするワンポイント
インゲンを煮物に入れるとき鮮やかな緑色に仕上げたいときは、油で素揚げしてから煮物に加えると効果的です。油を使って調理すると、皮膚や粘膜を再生させる効果があるカロテンの吸収率がアップします。天ぷらはもちろん、炒め煮にする調理もおすすめです。
インゲン特有のキシキシする歯ごたえが苦手な場合は、縦に切ったり、天ぷらなどにすることで、食感が気にならなくなります。
インゲンは地方によって名前が違う
インゲンは地方によって他の豆と混同される場合があります。関西では、隠元禅僧が持ち込んだとされる「フジマメ」を「インゲンマメ」と呼び、インゲンのことを年に3度収穫できることから「三度豆」と呼ぶこともあります。
サーベルインゲン
細く柔らかい丸サヤが特徴で、13~15センチ前後で出荷されます。
モロッコインゲン
平らな形をしており、中の豆が大きめ。20センチほどと大きく育ちます。肉厚で柔らかい食感が魅力です。
紫、黄色のカラーインゲン
長さ15センチほどのカラーインゲンで、茹でると色が変わります。紫は濃い緑色に、黄色は薄黄色になります。
ささげ
インゲンに似ていますが、細長く40センチから50センチにまで成長します。
食感がよく、素揚げして調理すれば煮物の彩りにぴったりのインゲン。栄養もたっぷりで、様々な健康効果が期待できる野菜です。スジを取るのが面倒という方は、ストリングレス品種をぜひ試してみてはいかがでしょうか。
「野菜と果物の品目ガイド~野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)