山形県の概要と主な取り組み
山形県は、村山、最上、置賜(おきたま)、庄内の4地域に分かれており、それぞれの地域において特色のある気候・風土と、それを背景とした個性的な農産物や地域の食文化が育まれてきました。なんと、山形県の農産物のうち在来作物の品種は150を超えるともいわれており、その中には地域の人々が古くから守り受け継いできた伝統野菜が数多く残っているといいます。
この背景には、焼畑農業などの固有の栽培技術や、先人たちの努力の歴史など、さまざまな物語があります。
近年は地域に根付いたストーリーのある食文化への注目が高まっており、山形県としても、伝統野菜だけでなく、山形県の地域全体をもっと認知してもらうための取り組みを進めています。
山形県の主要農産物
山形県の主要農産物は、言わずと知れた「さくらんぼ(オウトウ)」と「西洋なし」。この二つは全国1位の生産量を誇ります。そのほかには、スイカ、ブドウ、未成熟の枝豆などがいずれも全国順位は上位に入ります。
オウトウ「佐藤錦」
「佐藤錦」の特徴
山形といえば、さくらんぼ。中でも全国的に有名なブランドが「佐藤錦」です。佐藤錦は、オウトウの主力品種であり、全体の約7割の栽培面積となっています。外観もよく、食味も良好で、贈答品にも人気です。収穫時期は、6月中旬頃と梅雨の時期に差し掛かることから、雨による実割れを防ぐために雨よけ施設で丁寧に栽培されています。
名前の由来
佐藤錦の名前の由来は、育成者の佐藤栄助氏の名前に由来していて、育ての親である岡田東作氏によって名前が付けられたと言われています。
生産状況
佐藤錦は、大半が生食用として生産・販売されています。山形県の特産品として銘柄が確率されて、新植・改植が増えており、栽培面積・生産量共に年々増加の一途をたどっています。2013年度の生産量は1万1000トンです。
エダマメ「だだちゃ豆」
「だだちゃ豆」の特徴
だだちゃ豆は、山形県鶴岡市周辺の限られた地域で、江戸時代から農家が大切に守り育ててきたエダマメの「在来種」です。サヤが茶毛でおおわれており、くびれも深いため、見た目は良いとはいえません。ですが、ほかのエダマメにはない、なんともいえない甘みと風味があり、地元を中心に愛され続けています。
だだちゃ豆を名乗れるのは、鶴岡だだちゃ豆生産者組織連絡協議会が認定した10品種のみ。JA鶴岡では、「枝豆専門部会」が組織され、生産者の自主的活動を通して種子の確保や栽培技術の向上、検査まで行ってブランドの確立と継承に努めています。
名前の由来
「だだちゃ」とは、山形は庄内地方の方言で「お父さん」「オヤジ」という意味を持っています。江戸時代、鶴岡が庄内藩だったころ、殿様が大変なエダマメ好きで、毎日枝豆を持ち寄らせては「今日はどこのだだちゃの豆か?」と聞いたことから、だだちゃ豆になったという言い伝えが残っています。
また、枝豆のお父さん、枝豆の王様という意味も含まれており、「噛めば噛むほど旨味が生まれる」と食通からも絶賛されている特産品です。
生産状況
だだちゃ豆の産地であるJA鶴岡では、「枝豆専門部会」を組織し、各種補助事業などを導入しています。その甲斐あって、作付面積の拡大と機械化が進み、生産量は年々増加中です。2012年度の生産量は938トンです。
山形牛
「山形牛」の特徴
四季がはっきりとしていて、夏は暑く、冬は寒く、昼夜の寒暖差も大きな山形県。野菜だけではなく、肉牛の産地でもあります。日本有数の高級ブランド牛として知られる山形牛のおいしさは脂にあるといわれており、これは山形の恵まれた気候によって育まれています。
名前の由来
山形牛の歴史は古く、農耕・運搬などの目的で飼育のかたわら肥育し始めたところ、風土に恵まれ思いがけずおいしい肉牛が産出されたのが始まりでした。
明治維新の頃、米沢学館に招請された英国人が、山形の肉を横浜に送ったところ、その肉質が素晴らしかったため、多くの人に知られ、県内全域で肥育が浸透し、各地で銘柄牛が誕生したといわれています。
その後、1962年頃に県内銘柄牛の品質の規格を統一するために、当時の山形県知事を中心として、「総称・山形牛」として命名されました。
生産状況
近年、山形牛は北村山地方を中心に後継者育成や肥育の拡大が進み、生産頭数は増加しています。また肥育技術については全国でもトップクラスを維持しており、年々向上しています。山形牛の生産者は、日々、各種共進会などを盛んに執り行い、技術を磨き続けています。2013年度の山形牛産地証明書発行頭数は1万2800頭です。
※ 各品目の内容は、本調査時点(2014年9月~2015年)のものをベースに作成しています。一つの目安としてご理解下さい。
参考:『日本の地域食材2015年版』(NPO法人 良い食材を伝える会)