京都府の概要と主な取り組み
京都府は、歴史ある古都として知られています。794年の平安京の遷都以来、政治と文化の中心として栄え、日本各地から宮廷や神社に献上品として優れた野菜が集まりました。献上品として集められた野菜たちは、京都府の気候に適するよう品種改良が進められ、現在まで大切に伝えられてきたのです。
前述したように、平安京の時代から大切に守り育てられてきた京野菜のうち、
・明治以前に導入されたもの
・京都府内全域が対象のもの
・タケノコを含む
・キノコ、シダを除く
・栽培・保存されているもの及び絶滅しているものを含む
という上記の基準を満たしたものが「京の伝統野菜」と定義され、現在37品目が指定されています。
京のブランド産品
京都府は、従来の伝統を守りつつ、新しい食べ方を次々に広めています。京都府では、1989年にミズナ・賀茂なす・伏見とうがらし・万願寺とうがらし・エビイモ・アズキ・黒大豆の7品目を「京のブランド産品」として認証、PRを開始しました。その後現在までに、京野菜では24品目、水産物1品目、加工品1品目の計26品目まで品目数が増えています。
それまでミズナは大株で、煮物や漬物に利用される野菜でしたが、需要を拡大するため、間引き菜として利用していた小さな株の束を小袋化し、サラダなどで食べる新たな食べ方を提案したところ大ヒット。
現在ではミズナは、全国的にサラダに欠かせない野菜となりました。そのほかにも九条ねぎは多くのラーメン屋で薬味として利用されています。
京都府の主要農産物
京都府の主要農産物は、タケノコ・ミズナ・アズキ・茶・カブなどです。
万願寺とうがらし
京都府舞鶴市、綾部市、福知山市などで生産され、全国的に知られている京野菜が万願寺とうがらしです。ビタミンCやカロテンなどを多く含み、伏見とうがらしに比べると大型で、長さ15センチ、重さ15グラム程度になります。
特有の風味があり、大きく育っても硬くならず、果肉が柔らかいのが特徴です。唐辛子という名前ではありますが、辛味がほとんど出ないように改良されています。「京のブランド野菜」にも認定されています。
聖護院かぶ
京都府亀岡市で生産される聖護院かぶは、京のブランド産品に認定されている京野菜です。球型でどっしりとした、きめ細やかで緻密な肉質と、歯切れの良い食感が特徴です。ビタミンCを豊富に含んでいて、冬の時期にぜひ食べたい野菜です。
旬は11月から翌年2月頃です。サラダなどで生食するほか、京漬物の「千枚漬」に使用されるほか、かぶら蒸しなどでもおいしく食べることができます。享保年間に、愛宕郡(おたぎぐん)聖護院の農家が、近江かぶから作り出したことから「聖護院かぶ」という名前で呼ばれるようになりました。
宇治茶
宇治茶の特徴
京都府南部山城地域を中心として、ほぼ京都府全域で生産されているのが宇治茶です。煎茶・かぶせ茶・玉露・甜茶(てんちゃ)と多種多様な茶が生産されています。
中でも煎茶は黄金色に輝き、適度な渋さと爽やかな香味が特徴です。また、覆い下栽培(※)と呼ばれる独特の栽培方法によって生産される玉露、甜茶はそれぞれ特有の香りと濃厚な甘みが評判です。
※覆い下栽培 新芽の生育中、茶園を遮光資材でかぶせて包み、一定期間光を遮って育てる方法。光を遮ることで、露天栽培の煎茶にはない、鮮やかな緑色や独特の芳香、旨味や甘味がある茶に育つ。
名前の由来
宇治茶の始まりは、鎌倉時代。宋から戻った僧侶の栄西が、茶の種と抹茶の喫茶法(※)を日本に伝えたのが始まりとされています。その後、明恵上人(みょうえしょうにん)が栄西から分けられた種子を京都宇治などに植えたことから「宇治茶」と呼ばれるようになりました。
※喫茶法 お茶を嗜む際の手順
京都肉(きょうとにく)
京都肉の特徴
京都の特産品は、伝統野菜だけではありません。「京都肉」とは黒毛和種で京都府内でもっとも長く肥育されたもののうち、日本食肉格付協会によって「A-5、B-5、A-4、B-4」のものをさします。
すき焼き、ステーキはもちろん、オイル焼きなどオールマイティーにおいしくいただけるのが京都肉の特徴です。
名前の由来
京都府の牛は14世紀初頭頃に描かれた『国牛十図』に「丹波牛」として紹介されるほど伝統がありますが、日本三代和牛である「神戸・近江・松阪」に挟まれているので今まであまり有名ではありませんでした。
そこで昭和61年に京都府と京都肉牛流通協議会は京都府内で飼育・生産される牛肉の中で特に品質の高いものを「京都肉」と名付け、伝統と文化の味としてPRしています。
京都は他の県に比べて伝統野菜の認知度が非常に高く、万願寺とうがらしや宇治抹茶の知名度は全国レベルです。また聖護院かぶなどの京野菜は漬物としてそのままお土産としても人気となっており、ブランド化が成功している好例です。いつもの食材を京野菜にするだけで、食卓がワンランクアップするので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
※ 各品目の内容は、本調査時点(2014年9月~2015年)のものをベースに作成しています。一つの目安としてご理解下さい。
参考:『日本の地域食材2015年版』(NPO法人 良い食材を伝える会)