和歌山県の概要と主な取り組み
紀伊半島にある和歌山県は、温暖な気候に恵まれているので、古くからたくさんの野菜が作られてきました。長い歴史の中で独特の品種が育まれたものや、品種を選抜することで現在まで大切に伝わってきた野菜も数多く存在します。
代表的な伝統野菜は「和歌山だいこん」「紀州ししとう」などがあります。また、江戸時代から栽培が続く、「湯浅なす」や「源五兵衛すいか」などは、栽培面積が少なく流通が限られていますが、伝統文化を見直し、希少な野菜の生産を拡大しようとする取り組みも始まっています。
和歌山県産品のブランド化
和歌山県では農林水産物のブランド化と販売促進のため、エンドウ類、イチゴ、トウガラシ類などのオリジナル品種の育成や優良な系統の選抜に力を入れています。
また、全国1位の生産量(※)を誇る和歌山県産のウメ(南高、古城)、カキ(富有、松本早生富有、西村早生、平核無、刀根早生、四ツ溝、太秋、早秋、新秋)、ミカン(ゆら早生、宮川早生、など)などは、アンテナショップや百貨店の物産展などを通して和歌山ブランドの確立を図っています。
サヤエンドウ「きしゅううすい」
きしゅううすいの特徴
「きしゅううすい」は、日高郡みなべ町、印南町、日高川町など日高地域で生産されているサヤエンドウです。長さは6~8センチほどのサヤの中に4〜7粒の緑色のマメが入っています。
糖質が中心のグリーンピースとは異なり、デンプン質のためホクホクとした食感を楽しむことができます。独特の風味が特徴で、マメご飯が特に美味で、関西地方では定番の野菜です。ハウス栽培と露地栽培、平坦部と山間部での栽培を組み合わせることで、10月から翌6月頃までの長期にわたって出荷が可能となっています。
名前の由来
和歌山県日高地域でサヤエンドウの栽培は、大正時代に大阪府などから持ち込まれたことから始まりました。昭和40年代に、県の農業試験場で優れた品種を選抜し、和歌山県の特産品として「きしゅううすい」と名前がつけられました。
紀州しみず ぶどう山椒
紀州しみずの特徴
和歌山県は日本一の生産量(※)を誇るぶどう山椒の生産地でもあります。生の実をそのまま出荷するものと、乾燥させて出荷するものの2種類があります。
そもそも山椒はミカン科の落葉低木で、実は緑色をしています。「山椒は小粒でもピリリと辛い」という言葉の通り、小さくても舌を痺れさせる刺激が強く、ちりめん山椒などに使われたり、うなぎの蒲焼には欠かせない調味料として愛されてきました。
収穫時期は生のサンショウが5月中旬から下旬、乾(ひ)と呼ばれる乾燥サンショウが、7月初旬から8月下旬に出荷されます。
名前の由来
一粒一粒がまるでブドウの房のような形に実ることから「ぶどう山椒」と呼ばれるようになりました。また、他の山椒に比べて大粒なのも特徴です。
南高梅(なんこううめ)
南高梅の特徴
高級ウメの代名詞といっても過言ではないのが、和歌山県が誇る「南高梅」です。田辺市、日高郡みなべ町とその周辺地域で栽培されています。一粒一粒が大粒で、肉厚、果皮がうすいのが特徴です。
ウメ干しに加工することで最高級のウメ干しとなります。生果としての収穫時期は6月、この時期出荷される青ウメは、ウメジュースやウメ酒に適しています。和歌山県内には梅干し加工業者も多く、「紀州梅干し」として全国的に販売されています。
名前の由来
南高梅の南高の由来は、品種の選定に関わった南部高校の「南」と、原木の発見者である高田氏の「高」をとってつけられたと言われています。
ハッサク
紀ノ川市、有田地域、日高郡は言わずと知れたミカンの産地でもありますが、他の柑橘類の品質も非常に高いと評判で、中でもハッサクは人気が高いフルーツです。
そのまま生食して十分においしいですが、サラダなどに加えるとお店のような味わいを楽しめます。生果が全国に出荷されているほか、ハッサクジュースなどとしても広まっています。
和歌山県は、京阪神に隣接している地理的条件や冬も暖かい気候を活かして、各地でいろいろな野菜が生産されています。和歌山を訪ねた際はぜひ伝統野菜も試してみてはいかがでしょうか。
※ 各品目の内容は、本調査時点(2014年9月~2015年)のものをベースに作成しています。一つの目安としてご理解下さい。
※画像はイメージとなります。
参考:『日本の地域食材2015年版』(NPO法人 良い食材を伝える会)