親子3代のハンター人生
―狩猟をはじめたきっかけは?
父がクレー射撃の選手で、祖父も父も狩猟をしていました。だから、いつか自分もやるのが当たり前という感覚です。うちは祖父の代から銃砲火薬店を営んでいますので、その関係もあります。
―銃砲火薬店って何ですか?
クレー射撃や狩猟に使用するための銃と火薬を販売しています。狩猟に必要なハンティングベストやナイフなどのグッズも置いています。
―どんなお客さんが来るのですか?
半分は射撃をやっている人です。射撃をやっている人は、狩猟もしている人が多いですよ。都市部から来るお客さんは射撃だけの人もいます。
ほとんどの猟師が日曜ハンター
―橋本さんはいつ狩猟に出るのですか?
平日はお店の仕事がありますので、出猟するのはだいだい日曜日です。猟師って大部分が日曜ハンターなんです。仕事ではなく趣味としてやっている方が多いですね。
鹿やイノシシの駆除はいちばんツライ仕事
―害獣駆除もするのですか?
私は猟友会の会員でもありますので、行政から害獣駆除を依頼されます。最近は、鹿による農作物被害が増えていますね。多い時は1日1件のペースで捕獲の依頼があります。街の道路にイノシシが出てしまった際に、行政から連絡が来ることもあります。
―鹿が増えていると感じますか?
私が狩猟に行く兵庫県西部の山では増えていると思います。それ以上に、やはり農村地での増加が気になります。鹿は繁殖力が強く、1年に1回しか出産しないはずなんですが、最近は1年に2回産むケースもあるようです。おそらく、温暖化で気温が上がっているからではないかと。
畑の防護柵も、以前は1.5mぐらいだったのが、今は2mもあります。それでも飛び越えてくる鹿がいて。動物の身体能力も上がっているのではないでしょうか。
畑の防獣ネットに鹿の角が引っかかってしまう
―畑の鹿はどうやって捕獲するのですか?
鹿は角が大きいので、防獣ネットによく引っかかってしまいます。からまると取れないんですね。野生動物は身に危険を感じると狂暴化するから、非常に危ないですよ。逃げ回るのを追いかけて、怪我したこともあります。住宅地周辺だと銃が使えないからロープなどを使いますが、かなり苦戦します。
―森林でも鹿の獣害がありますか?
山に入ったらよくわかります。全然、下草が生えていません。植林したところもガレキの石ばっかりです。鹿のせいなのか、山が自然にそうなったのか、はっきり分からないですけどね。
橋本さんの猟スタイル「相棒は猟犬」
―狩猟では何をとるのですか?
私は鳥猟が専門でカモが多いですね。あとはキジです。猟犬を2匹飼っていて、いつも猟犬を連れていきます。鉄砲で獲物を捕ろうと思ったら、昔から「1犬・2足・3鉄砲」と言われていて、それぐらい猟犬は大事なんですよ。
解体や調理も自分で「ジビエ」の楽しみ
―カモやキジは食べるのですか?
基本的には食べるために捕っています。ハンターの中には食べない人もいますけどね。命をありがたくいただくというのも、大切な狩猟の要素だと思っています。かわいそうと言われてしまうこともありますが、スーパーのお肉も動物です。私たちは命を食べて生きているという当たり前のことを、すべて自分の手で行うのが狩猟でもあります。奥深い文化としての狩猟の側面ですね。
―解体の仕方はどうやって覚えるのですか?
初心者は先輩ハンターに教えてもらいます。今でこそ解体処理施設もありますが、本来は獲物を自分たちで解体して、皆で分けて持って帰るのが狩猟の基本。家族で食べたり、ドッグフードにしたり。
―子供の頃から家庭でジビエを食べていたのですか?
父も猟師でしたから、子供の頃からジビエを食べる習慣がありました。だから、抵抗はないです。鳥類は焼き鳥や鍋物に。鹿肉はカレーやカツにして食べます。そうやって、色んな料理法を考えるのも楽しみのひとつですね。
―ジビエのブームが来ていると感じますか?
媒体でのブームは感じていますが、実際には食肉として浸透していないと思います。家庭の食卓に取り入れられれば、もっと流通するかもしれません。まずは口にしてもらわないと、臭みがありそうとかかわいそうというイメージが先行してしまいますね。
農業と狩猟の関わり
―農家が狩猟をはじめるのは、どう思いますか?
農作物の被害も深刻になっていますし、農家の方は狩猟できる現場が近くにあるので、非常に良いと思います。取り掛かりやすいのではないでしょうか。山間部では、狩猟をしている農家は昔からいます。平野部や都市近郊では馴染みがないかもしれませんが、ぜひおすすめしたいです。ハンティングの楽しさも色々な人に知って欲しいし、同志が増えたらモチベーションも上がります。農業界にも狩猟文化が広がったらうれしいですね。
写真提供/都銃砲火薬店