秋田県出身の作者が描く東北地方の古き狩猟文化

(c)山と溪谷社
「マタギ」矢口高雄
代表作「釣りキチ三平」で知られる漫画家の矢口高雄さん。昭和48~50年に週刊誌で連載していた本作品が2017年に文庫本となって復刻し、異例のベストセラーとなっています。
「マタギ」とは、東北地方の奥羽山脈で伝統的な方法を用いて狩猟を行う猟師集団のことを指します。特に秋田県の阿仁マタギは有名なので、聞いたことがある人も多いのでは?
文庫本は短編集で、全部で9つの物語を収録。第1章の「野いちご落し」は若いマタギの三四郎が主人公で、熊との駆け引きが迫力満点に描かれます。イタズ(熊)、ブッパ(射場)、シロビレ(鉄砲)といった独特のマタギ言葉も次々と登場し、ぐっと異世界に引き込まれます。
村の女性を襲った熊を仕留めるために、阿仁から派遣させられた三四郎。はたして、どうやって熊を仕留めたのでしょうか? 大自然の中、生死と隣り合わせで戦うマタギたちの伝説のドラマです。
マタギ
著者:矢口 高雄
発行:山と溪谷社
鳥獣害対策の“今”をリアルに可愛く伝える話題作

(c)Nobuhiro Midoriyama 2017
「罠ガール」緑山のぶひろ
作者の緑山のぶひろさんは、福岡県の農家出身。現在も、福岡で米や野菜を育てながらマンガを描いています。鳥獣被害対策のため、自身もわな猟免許を持っているというから、その描写は実にリアル。今、日本の農家で起こっている獣害の実態を伝えます。
物語の主人公は、田舎の高校に通う朝比奈千代丸(あさひな・ちよまる)。わな猟専門の女子高生ハンターです。くくり罠を自分で作って、クラスメイトの畑でイノシシを捕まえたり、校内を荒らすタヌキを捕まえたり、いたるところで大活躍!自分の家のビワ畑を荒らした鹿も捕まえます。
はじめて自分の手で鹿を解体して鹿肉料理を食べる場面では、山の命をいただくことの尊さをじんわりと感じさせてくれます。
農家の獣害について何も知らなかった人が、被害に目を向けずにはいられなくなる本作品。女性や若い人が有害鳥獣の駆除に興味を持つきっかけにもなっている、貴重な話題作です。
罠ガール(1)
著者:緑山 のぶひろ
発行:電撃コミックスNEXT(株式会社KADOKAWA刊)
現役ハンターが岡山県の山奥でアレもコレも狩って食べる!

(c) 岡本健太郎/講談社
「山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記」岡本健太郎
東京・池袋のバーで彼女とデートするような生活を送っていた岡本健太郎さんが、故郷の岡山県に帰って狩猟をはじめる実録日誌。第一種銃猟免許とわな猟免許を取得した作者が、あらゆる野生鳥獣を狩っては食べまくる、前代未聞の狩猟マンガとして人気を集めています。
作中で岡本さんが食べるのは、鹿やイノシシはもちろんのこと、ヒヨドリ、カモ、キジバト、ウサギ、マムシetc。なんと、カラスまでも食べてしまうとは…!驚きのジビエエピソードが満載です。
農家のおじさんに頼まれてカラスを駆除する場面もあり、農家と猟師の関わり方を垣間見ることもできます。
射止めた鳥獣を何でも食べるという非日常的な体験談がオモシロイのはもちろんですが、初心者ハンターが狩猟をはじめるまでの過程が分かりやすく描写されている序盤も見逃せません。
獣害に悩む農家の方、狩猟に興味のある方、ジビエを知りたい方…、入門書として是非一読をオススメします!
山賊ダイアリー 全7巻
著者:岡本 健太郎
発行:講談社
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