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【第7回】リスク評価と教育:環境保全リスクを自覚するために(2/2)

連載企画:JGAP・HACCPの基礎知識

【第7回】リスク評価と教育:環境保全リスクを自覚するために

GAPとはGood Agricultural Practiceの頭文字をとったもので、日本語で「良い農業の取組み」という意味になります。昨今、GAPは産地や農家の生産工程の管理・改善を体系的に扱う優れた仕組み(標準)として、東京オリンピック・パラリンピックや海外輸出の調達基準になってきています。既に一部の農家ではこのGAP認証取得を、続いてこの農家から原材料の調達を受けた食品加工メーカーでは、まもなく法令に基づいて義務化される食品衛生管理基準HACCP(ハサップ)の資格取得を求める動きが活発化しています。
この特集は、GAP、HACCPの基礎知識から認証取得までのポイント、そして日本農業の再生までを展望した全12回のシリーズで皆さまにお届けしています。

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3.リスク評価による作業者への教育

中部産業連盟
作業者は、日々の作業の中で「あっ!危ない」とヒヤっとしたことは何度もあるでしょう。ほとんどの場合、怪我をせずに済んだりしていますが。しかし、トラクターから落下して、大怪我した作業者もいるかもしれません。
そこで、リスク評価は、作業者が集まって、収穫から取り扱いの工程について、「危ない」原因となっている作業をリストアップすることから始めます。実際、営農指導者がGAP導入の手始めに、このリスク評価の話し合いの会を開くと、作業員はGAPの重要性を体感できます。ヒヤっとした経験や実際大怪我をした経験をお互い共有し、事故を防ぐ策を提案するようになります。
GAP実施により安心・安全が保証されるだけでなく、農林水産省によると、「生産者や従業員の自主性の向上」が、「GAP導入後に改善した」項目のトップになっています(「GAP導入による経営改善効果に関するアンケート調査結果」(H25.1(独)農業・食品産業技術総合研究機構)。

4.作業者が気がつかない環境保全リスク

こうした労働リスクとは対照的に、上記の「施肥基準を超えた肥料投入」による環境保全リスクは、作業者にとっては、日常的に自覚するようなリスクではありません。しかし、作物の生長に必要な窒素肥料を、施肥計画もせずに基準以上に施したら、その余剰分は近くの川に流出して、人体に有害な硝酸性窒素となります。欧州ではこの成分が多く含まれ、飲用に適さない河川が多いようです。実際、我が国でも河川には国が定めた基準値を超える硝酸性窒素が含まれていて、その由来は、農業の化成肥料や堆肥であることがわかっています。このリスク評価により、作業者は、適正な施肥作業をすると、河川の汚染を防いでいるという自覚を持つという教育効果があります。

5.作業者目線のGAP

一般的に、GGAPもASIAGAP (JGAP Advanceから改定・改名)も、作物を調達する小売業の目線で作った基準で、作業者には一読して理解できる表現が使われていません。しかし、埼玉県が策定したS-GAPは、「埼玉県農業生産安全確認運動」(農林水産省公表の「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドラインに準拠」農業として、作業者目線で作られたGAPの一つです。作業者が手軽に農場に持ち込めるようにポケット版サイズでカラーが使われ、内容も理解しやすいチェックリストになっています。GAPは認証を取ることも大事ですが、GAPは実践することが基本です。

一般社団法人中部産業連盟 主席コンサルタント
JGAP指導員、ISO14001主任審査員 梶川達也(文責)

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