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200種類の西洋野菜を無農薬栽培!土磨自然農園の野菜が選ばれる理由

200種類の西洋野菜を無農薬栽培!土磨自然農園の野菜が選ばれる理由

新規就農を志す方のなかには、有機栽培に挑戦してみたいと考えている方も少なくないでしょう。愛知県春日井市にある土磨自然農園の代表 横島 龍磨(よこしま たつま)さんも、同じ想いを抱いて農業を始めた一人です。2004年から西洋野菜を中心に、無農薬・無除草剤・無化学肥料の自然栽培を徹底してきました。今では200種類以上にのぼる西洋野菜を供給しています。横島さんに無農薬栽培へのこだわりを聞いてきました。

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選ばれる野菜の秘訣とは? 土磨自然農園の西洋野菜

西洋野菜

無農薬栽培というだけでも、日本ではまだまだ少数派の農家です。しかし、横島さんは「選ばれるためにはこれだけではまだ足りない」と言います。

「いくら無農薬で育てても、慣行栽培の野菜と一緒に並べられると、違いが分かりません。同じ見た目なら、安い方を手に取るのが自然でしょう。もっと分かりやすく、かつ誰もやっていないことがやりたかった。だから、ターゲットをシェフや料理教室に絞り、その人たちが使いたくなるような野菜に決めました」。

土磨自然農園で取れた野菜の出荷先は、9割が地元のレストランです。2004年から本業の外食産業と並行してスタートし、横島さんは3年間の準備期間で目標の年間売上100万円を達成しました。はじめは小さな圃場で400種類を超える西洋野菜を試験栽培し、現在では12のレストランを主な取引先として、7つの圃場で200種類の西洋野菜を育てています。具体的な目標設定と、営業戦略に紐づいた作付けが目標を達成した要因となっているのでしょう。

栽培のポイントは、野菜自らが育ちたくなるような環境を作ること

「お皿に乗せたときに、見栄えのする野菜はとても欲しがられます」。横島さんはそう教えてくれます。人気があるのはレタスや大根、ナス類の西洋野菜。レタス品目には、ワイン色の葉が美しいキャトルセゾン。大根品目には、外皮の黒いブラックスパニッシュロング。ナス品目には、白みがかったブライドなどがあります。

「西洋野菜であっても、品目ごとの特徴をしっかり理解していれば、育て方に大きな違いはありません。しいて言うなら、原産地の環境を畑で再現してあげること。例えば、ナスであれば、原産地は湿地帯であるインドです。そのため、畝(うね)を低くして湿度が保たれるように工夫します。野菜自らが育ちたくなるような環境を作ってやることが大切です」。

自然農法は特別じゃない?無農薬にこだわる理由

横島さん(写真左)は、子どもにも農業の楽しさを伝える活動をしています

現在JA青年部会の部会長(取材時)を務めている横島さん。就農当初からのこだわりは、農薬や肥料、除草剤などを一切使わない自然農法です。外食産業に勤めていた横島さんは、有機野菜を求める消費者を日々目の当たりにしていました。多くの人が有機野菜を欲しがっているのに、どうしてもっと手に入らないのか。横島さんは、疑問に思っていました。

「有機農業をやる人がいないなら、自分でやろう。そういう想いから農業を始めました」。

横島さんは、特に誰かに農業を教わったわけでもなく、本やウェブで情報を集めて自然栽培を始めました。調べた通りに作付けしてみると、野菜は問題なく育ったのだと言います。「自然の中で育つ植物は、肥料を与えなくても育ちます。それなのに、どうして野菜には肥料や薬が必要なのかと、ずっと違和感を覚えていました。自分は当たり前のことをやっているだけです」。自然農法を実践するうえでは周囲の農家からの反応も気になるところですが、特に何を言われることもなく続けられていると言います。

根本の問題に目を向けることが、無農薬栽培を成功させるカギになる

「慣行栽培では効率を重視して、肥料を与えた野菜を緊密に詰めるため、野菜は根を張らなくなり、上だけ伸びていきます。これでは地上部と地下部の生長バランスが崩れて病気や虫害を招いてしまいます」と、横島さん。取り込みすぎた肥料分(主に窒素分)は葉から吐き出されますが、それによって虫が寄り付くのだそうです。

「自然界の考え方でいくと、必要のないものは淘汰されていきます。虫食いが起こる野菜も、必要がないから虫が食べると考えるのが自然です。慣行栽培では、虫食いを抑えようと農薬を撒き、元気を失い始めた野菜を元気づけるため、また肥料を与える。根本的な部分に目を向けず、必要以上に手を加えようとするから無理が生じるのだと思います」。

土磨自然農園では、作付け量全体の8割を安定して収穫できていると言います。多少の虫食いがあっても、1日で全ての野菜がダメになったことは一度もありません。無農薬栽培で営農していくには、収穫できなかった1~2割を我慢できるかどうかが重要なのだと言います。

農業のイメージを変えるために。今後、実現していきたいこととは?

西洋野菜
土磨自然農園では、農業を始めたいという就農希望者を研修生として受け入れ、独立まで支援していると言います。「きっかけは、自分が就農しようとしたときに困ったことでした。就農したいという人の障害をできるだけ取り払ってあげたい。独立後も軌道に乗るまでは買い付けし、仲介販売を行うこともあります」。

横島さんの根底には、「農業は儲からない」というイメージを変え、農業を始める人を増やしたいという想いがあります。

「農業は儲からない」というイメージを変え、農業を始める人を増やしたい。その想いから、横島さんは2017年にはクラウドファンディングで資金を募り、子どもたちが野菜の作付けから収穫・販売、そして売り上げたお金で食事をするという、mirai kids programを成功させました。反響は大きく、2018年からは大人向けにも同プログラムを提供します。

「mirai kids programの表向きの狙いは子どもたちに楽しんでもらうことですが、裏には親の意識を変える目的があります。mirai kids programを通して、子どもたちは野菜がお金に換わるということを何となく理解してくれます。そして、子どもたちが農業に取り組む姿を見て、親は農業に対して良いイメージを持ちます。そうなれば、親は子どもが就農したいと言った時にサポートしてくれるでしょうし、農業も就職する際の立派な選択肢の一つとなります。私の周りで自然栽培を実践する農家が増えれば、今後、満たしきれていない有機野菜のニーズにさらに応えていくことができるでしょう」。

 
土磨自然農園

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