「生米を見せてください」
「私はお米ライターです。生米を見せてください」
レストランでパエリアやメロッソを食べる際は、このメッセージをノートにスペイン語で書いて見せました。
すると、すべてのレストランが快く生米を見せてくれたうえ、品種名も教えてくれました(なんとお米をプレゼントしてくれたレストランも!)。
バレンシアとバルセロナで回ったレストラン計6軒のうち、4軒がボンバ。ジョセップさんや市場の女性店員の感想を聞いていなかったら「やはり」と思って終わりでしたが、「ボンバは好きではない」という感想を聞いた後だと少し意外な結果に感じました。
庶民はどんなお米を選ぶのだろうかとスーパーマーケットのお米売り場でお客たちの様子をしばらく眺めていると、驚くことにボンバを手に取る人には出会えませんでした。
程よく芯が残ったアルデンテ、芯がわずかに残ったアルデンテ、まったくアルデンテではないものなど、さまざまでした。ボンバ以外のお米を使っている2軒のレストランのパエリアは、1軒は程よく芯が残ったアルデンテ、もう1軒は食べ始めはまったくアルデンテではありませんでしたが、冷めてくるとアルデンテが戻ってきました。
今回食べたかぎりでは、品種の違いは調理のしやすさの違いに過ぎず、仕上がりの食感は調理方法によって左右されるようです。
庶民の味方「ボンバに似たお米」
バレンシアでは「ボンバは好きではない」という声を聞きましたが、こんなにもレストランでボンバが使われているのだから、きっと「ボンバが好き」という人もいるはず。でも、ボンバは他のお米に比べてちょっぴりお高め。ボンバが好きではないのではなく、「ボンバが好きだけど高いから買わない」という人もいるかもしれません。
バレンシア市内で入ったあるレストランのパエリアは、程よいアルデンテ。ボンバかな……と思いましたが、店員に尋ねると「ボンバではないが、ボンバに似ている品種」と教えてくれました。ところが、業務用の米袋には品種の記載が見当たりません。
その後、バレンシア市内のスーパーマーケットのお米売り場の前であれこれお米を物色していると、中年の女性客が声をかけてきました。
そして、米袋を指して「このお米がおすすめ。ボンバに似ているけど、ボンバよりも価格が安いのよ」と教えてくれました。お米を買うつもりはなかったのですが、「どのお米を買ったらいいのかわからず困っている外国人」と思われたようです。おすすめしてもらったお米の品種は「レドンド」。もしかしたら、レストランで食べた「ボンバに似ている品種」はこのお米のことかもしれません。
レストランでカビ米に遭遇
お米売り場で他のお米を手に取ると、袋の中にカビがついたお米を発見しました。レストランでも「生米を見せてください」と出してもらったお米の中にカビが見られた店が2軒ありました。ところが、店員にはカビをまったく気にする様子がありません。生米をかじると、やはりカビ臭い。このお米を炊飯して白ごはんとして食べるのは厳しそうですが、パエリアで食べると味付けが濃いためカビにまったく気づきませんでした(完食しました)。
白ごはんで食べるからこその日本人のお米に対する感覚と、パエリアで食べるからこそのスペイン人のお米に対する感覚。品種の使い分けや保存状態などに対する意識の向け方は、食べ方によって変わるようです。
聞き込みを続けていると、どうやらパエリアは食卓の定番とまでは言えそうもなく、特にボンバを使ったパエリアはハレの食卓向き。次回の「スペイン米は『パエリア』だけじゃない!お米ライターが自腹レポート」では、スペインで出会ったパエリア以外のお米料理とそのお米を紹介します。
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