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スペイン米は「パエリア」だけじゃない! お米ライターが自腹レポート

柏木 智帆

ライター:

連載企画:お米ライターが行く!

スペイン米は「パエリア」だけじゃない! お米ライターが自腹レポート

スペインといえば、パエリア。ということで、「スペインで『パエリア』米を探る!お米ライターが自腹レポート」では、パエリア発祥の地と言われスペイン米の一大産地でもあるバレンシアへ向かい、「ボンバ」をはじめとしたさまざまな品種について見たり聞いたり食べたりしてきました。ところが、そこで知ったのは、どうやらスペイン人はパエリアばかりを食べているわけではない…ということ。そこで、パエリア以外のお米料理も探ってみました。

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スペインのお米料理はパエリアだけじゃない!

スペインでお米料理といえばパエリアが定番で、スペイン人は頻繁にパエリアを食べているに違いない。そう思っていたのですが、稲作が盛んなバレンシアのエル・パルマール村でお米農家のジョセップ・ロストール・フエンテスさんの食生活を聞いて、それまでのイメージが覆りました。

たっぷりのスープでお米や野菜や豆などを煮込む雑炊のようなお米料理

ジョセップさんは「パエリアを食べるのは日曜日だけ」だそうで、平日は「カルドソ」か「アロス・アル・オルノ」を食べているそうです。

ジョセップさん愛用の陶器の茶色い鍋「カスエラ」

カルドソは、汁気の多い“スペイン風雑炊”。アロス・アル・オルノは、カスエラという陶器の茶色い鍋を使ってオーブンで炊き上げる“スペイン風炊き込みごはん”。パエリアよりも手軽に作れる家庭料理で、ジョセップさんの場合は牛肉や鴨肉のほか、ジャガイモなどの野菜も入れるそうです。

雑炊のようなお米料理は、ほっとさせる味わい

ちなみに、「メロッソ」という料理もカルドソに似ていますが、カルドソよりも少ないスープで調理するためリゾットのような見た目に仕上がります。バレンシアのアロセリア(お米料理専門店)で食べたメロッソは、スープたっぷりでカルドソに近い仕上がりでした。いずれにしてもスペイン風とは言え、“雑炊”に親しみを感じるのは日本人だからでしょうか。

海外では「日本のお米料理といえばSUSHI」というイメージが定着していますが、多くの日本人は毎日寿司を食べているわけではありません。同様にパエリアも日本の寿司に近い存在なのかもしれません。

長粒種のお米を使ったライスサラダ

長粒種の「ラルゴ」

パエリア、アロス・アル・オルノ、カルドソ、メロッソは、いずれも短粒種のお米で調理します。ところが、スーパーマーケットのお米売り場に行くと、短粒種の玄米や長粒種も並んでいました。そして、長粒種を購入していくお客が多いことにも気づきました。どんな料理で食べるのでしょうか。

市場の惣菜店で売っているライスサラダのような料理

その答えは、市場の惣菜店にありました。長粒種は豆や野菜やツナなどと一緒にライスサラダになっていました。その脇には、茹でただけの長粒種も量り売りされていました。これがあればお米を茹でる手間なく自宅でも手軽にライスサラダが作れるというわけです。日本で言う缶詰のスイートコーンや、茹で大豆のような存在なのかもしれません。惣菜店の店員によると、この長粒種は「ラルゴ」という品種。ラルゴはスペイン語で「長い」という意味ですからなんともわかりやすい品種名です。日本ではうるち米ともち米を料理によって使い分けているように、スペインでも短粒種と長粒種を使い分けているのです。

ちなみにオーガニックスーパーマーケットの店員によると、短粒種の玄米は「パエリアには向かない」とのことで、これもライスサラダ向けだそうです。

ちなみに、ライスサラダに日常からなじんでいるスペイン人だからこそ意外と受け入れられやすいのかもしれない…と思わせられるハワイ生まれのお米料理にも出会いました。

ごはんの上に野菜や豆腐や魚などを乗せた「ポケボウル」

バルセロナにある「THE HIP FISH」という飲食店では、「ポケボウル」という丼ものが食べられます。ポケボウルとは、ハワイ版海鮮丼。この店で使っているお米はイタリア産の短粒種。その上に野菜や豆や魚などを乗せて調味料をかけています。

ごはんと具材を混ぜると…

ハワイではマグロだけを乗せたりするそうですが、この店は野菜がたっぷり。この丼ものが果たしてスペイン人に受けるだろうか…といぶかしがりながらごはんと具材を混ぜ混ぜ。気づくと、それはもはやライスサラダでした。

「ゆめにしき」という名前で売っているイタリア産コシヒカリ

この店には同じくイタリア産のお米を使った「フィッシュブリトー」と名付けられた巻き寿司もありました。スペインの“SUSHI米”はイタリア米が人気のようで、バレンシアにある寿司店「MOMIJI」でもイタリア産コシヒカリで寿司を握っていました。寿司は日本の代表的料理ではありますが、残念ながら日本のお米には出会えませんでした。

日本の6分の1のお米消費量でも多彩なお米の食べ方

市場の惣菜店に並ぶ、茹でただけのラルゴ

スペインのお米料理はこれだけではありません。バルセロナの市場の惣菜店で茹でただけのお米「ラルゴ」を購入していた女性にどんなライスサラダを作るのかと尋ねてみました。すると、「肉、トマト、スパイス、揚げた卵を入れるのよ」とのこと。揚げた卵…。どうやらライスサラダとは違う料理のよう。調べてみると「アロス・ア・ラ・クバーナ(キューバ風ライス)」というお米料理を知りました。茹でたごはんの上に揚げた卵、トマトソース、揚げた青いバナナか焼いたソーセージ(もしくはチョリソー)を乗せて食べるスペイン人の日常食だそう。キューバ風という名前はついているものの、れっきとしたスペイン料理です。あまりにも家庭料理すぎて、現地のレストランではなかなかお目にかかれないのが残念。やはりケ(日常)の食卓ではパエリアのように手間がかかるものよりも、アロス・アル・オルノ(日本で言う炊き込みごはん)やアロス・アラ・クバーナ(日本で言う“のっけ丼”)のように手軽に調理できるものが食べられているようです。

日本酒や米焼酎とはまったく違った味わいのライスクリームリキュール

日本には大福やおはぎなどお米を使ったスイーツがあるように、スペインにもお米を使ったスイーツがあるかもしれないと探してみると、ありました。「アロス・コン・レチェ」。お米を牛乳と砂糖で煮込み、レモンの皮とシナモンで香り付けした冷たいデザートです。さらに、日本酒や米焼酎のようにお米を使ったお酒はあるだろうかと探してみると、ありました。「クリーマ・デ・アロス」。ライスクリームリキュールです。牛乳のような真っ白な液体で、香りはなぜかヨーグルト。ラベルに「乳製品を含む」と表示されているのを発見して納得です。そのまま飲んでみると、某大手菓子会社のオリゴ糖入り乳酸菌飲料のような味。炭酸水で割ってみると、某大手飲料会社の乳性炭酸飲料のような味がしました。もともとはアロス・コン・レチェにヒントを得て生まれたリキュールだそうですが、牛乳入りだったりシナモン入りだったりとさまざまなバリエーションがあるようです。

料理、お酒、スイーツと、スペインにはこんなにもさまざまなお米の楽しみ方がありますが、公益社団法人「米穀安定供給確保支援機構」によると、1人1日当たりのお米消費量は日本は149グラムで、スペインは23グラム。スペイン人が食べるお米の量は、日本人の6分の1でした。
しかし、「スペインで『パエリア』米を探る!お米ライターが自腹レポート」で紹介したように、スペイン人、特にバレンシア市民のお米へのこだわりの強さは、もしかすると日本人以上。日本でもお米の品種特性と料理との相性を意識してみたり、料理によってお米の品種を使い分けてみたりすることで、日本米の楽しみの幅はもっと広げられそうです。

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